第4話 俺の異能は恐怖の対象
よろしくお願いしま〜す
「はい、それじゃあ異能を鑑定するから、右手を機械の中に入れてください」
「あぁ、このセリフをこんなお婆ちゃんじゃなて、可愛い人に言われたかった…」
と誠は愚痴をこぼしながらも、血圧測定器の様なものの中に自分の右手を入れる。
「はい。計測は終わり。じゃああなたの異能を発表します。あなたの異能は…」
因みに俺の望む最高の展開は、ほかに類のない、特殊で最強の異能を手に入れて尊敬される。
これなら、この学園でもハーレムが作れるかもしれない!
と、誠は本気で自分の異能が、特殊かつ最強の異能であることを願う。その刹那、
「貴方…こ、この異能は…もしかして…」
と言うこの人の顔は相当困惑している。
「あ、あのもしかして俺の異能は特殊ですか!」
対して誠の顔は、異世界に来て1番口角が上がっている顔だ。
「え、えぇ。こ、これは…」
「これは⁈」
遂に俺のハーレム人生の幕開けか!さよならぼっちの俺!ようこそクラスの人気者の俺!
「これは…魔王系統の異能です…実際に今までに魔王系統を所持した一般人はいないのですが…」
「あの…それってさっき言ってた最強の方の異能ですか?」
「いえ…違います。弱い方の異能です」
な、なんてことだ…俺の特殊最強異能でハーレム作りという夢が…まさか俺の異能が、ただ珍しいだけなんて…
と誠が考えていた時、保健の先生がいきなり言った。
「ちょっとこれはまずいね。完全にクラスで浮いてしまうと覚悟してください」
…え?いきなりなんですか?俺が第2の学校生活を頑張ろうというムードに、やっとなりかけて来たのにいきなりなんですか?浮くんですか?ボッチですか?あの忌々しい過去が繰り返されるんですか?
「………………………」
そんな困惑する誠に保健の先生は話を続ける。
「魔王系統を所持するということは、たとえ冤罪でもみんなから魔王関係者と思われる可能性。
そうは思われなくてもちょっと引かれたり、恐怖の目で見られたり…」
え?なにそれ?
なんですかその異能。強くもないのに無駄に珍しくて、そのくせ恐怖の対象として見られる異能?
俺が1番欲さない異能だ!
「……………………」
「い、一応貴方の異能が何なのか教えとくよ…貴方の異能は時間停止だ」
なにそれ!早く言ってよそれ!時間停止ってそれすごいじゃん!強いじゃん!
アニメのキャラは時間停止使う人結構多くて、そしてみんな強いんだよ!
「良かったです!まだ救いようのある異能でした!結構強いじゃないですか!」
「…あの…誤解を生まないうちに言っとくけど、この異能は15分に一回しか発動できないんだ…だから戦いでは不利かな…」
マジカッ!インターバルがあるのか!
誠の腹にアッパーが突き刺さる。
「あと…この異能、一回で止められる時間は…5秒だからね…」
なにそれ!使い物にもならないたったの5秒!
誠の腹にストレートが突き刺さり、誠KO。
「でも、一応世界全体の時間を止めれるんだし、指名した物や人をその5秒間自由にさせられるから。諦めないでね」
ひとつ言っていいか。
その慰めの言葉、お婆ちゃんに言われても全然嬉しくないし、俺は今自分の異能に絶望しているんだ。そっとしておいてくれ。
「じゃあ一応、今日の放課後に保健室に来て。魔王系統について詳しく教えるから」
そう言い残して保健の先生は、次の出席番号の人を呼んだ。
誠は魂の抜けたような顔で列に戻って行った。
☆☆☆☆☆☆☆
全員の異能鑑定が終わり、大多数の人間は笑顔で、誠を含む少数は死んだ魚のような目をして教室に戻った。
そして席に着いた俺たちに、十文字先生がいきなりびっくりすることを告げた。
「おいお前ら!特に発動系統だったやつらはそんなニコニコしてていいのか?
その系統は、使う人間のセンスによって、火力が1にも1000にもなる。センスがなきゃ、強化系統のやつらより弱いからな!」
そう言った途端、教室の一部が凍りついた。
「次に召喚系統のやつら!召喚獣に頼ってばかりだと愛想をつかされたりするから、自分でもしっかり戦えるようにしろ!」
また、教室の一部が凍りついた。
「最後に強化系統のやつら!お前らは元の異能は他より劣るが、1番努力が結果に出る異能だ。
何故だかわかるか?それはな。自分のステータスを伸ばせば、その身体能力が倍増するから、鍛えればそのぶん強くなれるからだ。だから諦めるな!」
「はい!十文字先生!頑張ります!」
教室の一部が、燃え上がった瞬間だった。
「じゃあ次は大事な知らせがある」
「はい!何ですか、ボス!」
もはや、強化系統の人たちは、十文字教の信者となっていた。
「いや、そのノリはやめろ…まぁ、これはともかく、みんな聞いてくれ。唐突だが、お前たちには3人1組のチームを作ってもらう。チームってのは、これから先一緒に戦っていく仲間だ。
要するに、ゲームでいうパーティーを組んでもらう。そのチームが、この先常に共に戦っていくことになる仲間だから、しっかり考えて決めろよ。期限は明日までだ。
これはアラスト学園の恒例行事だ!」
十文字先生がそう言うと、誰が質問した。
「そのチームで戦うのはいつですか?」
「それは、チーム結成から1週間後だ。クラス内チーム戦を行う!いわゆる模擬戦だ!自分の異能と、仲間の異能を駆使して、1位目指して頑張れ!」
そう十文字が言うと、
「ウォッシャー!やってやろうじゃねぇか!」
「俺発動系統だけどチーム組むやつ挙手!」
「私たちもがんばろ!」
クラス全体が一気に熱くなった。
一方、誠はと言うと…
俺の異能でやって来てくれる人いるのかよおい!ぼっち生活シーズン2の始まりか。引きこもりまでの道のりは近いな。
異世界まで来て?あぁー
と、心の中で嘆き続けていた。
「チーム制とかぼっちの敵だろ!」
そして遂に、誠の心の嘆きは声となった。
次もお楽しみに〜