1.プロローグ
僕の名前は広隅 狭
広いのか狭いのかよくわからない名前だ
年齢は十六歳、身長は180センチに届かないくらい、瞳は透き通った紫色。学校の成績は平均点のやや上といったところ。
どこにでもいそうな普通の高校生である。
今日も普通に授業を受ける。
「えっと、、、次は古文か。」
古文は苦手だ。昔の物語とか読めるようになってなんになるのだ。と二、三年前の僕なら思っていたけど、もう諦めもついた。
「そういえば今日転校生が来るらしいぞ」
そういって話しかけてきたのは清水しみず 涼りょう身長は170センチくらい。性格は陽気。いつもどこかに寝癖がついている。
「え?でももう二限目だよ。こういう転校生って朝礼にくるもんじゃないのか?」
「なんか親の事情があるとか、ないとか、、らしい」
まぁそういうこともあるだろう。でもうちの学校に転校生か、、珍しいな。
「でも涼、お前すごい浮かれてるじゃないか。そんな転校生が楽しみなのか?」
「ああ、だってよ狭。なんでもとある企業の娘さんらしいぜ、チャイムがなりそうだからこの話はまた今度やろうぜ」
「ああ。」
〜〜〜〜
キーンコーンカーンコーン
「今日は先生からお知らせがあります。彼女の両親の都合で遅くなってしまいましたが、転校生を紹介します。」
先生がそういうと一人の女の子が入ってきた。
「夕火 紅葉です。よろしくお願いします。」
第一印象はおとなしそうな子だなと思った。でもそれ以上に美しかった。髪は首筋より少し長いくらい。目は透明感のある薄い茶色をしていた。
なるほど涼が浮かれるわけだ。
それほどまでに彼女は美しいと言う言葉がこの上なく似合っていた。、、でも何か違和感が、、、まあ気のせいか。
次の休み時間、予想通り質問攻めになっている彼女を一瞥し次の授業の準備を始めた。
でも彼女あれほどまで透き通った目をしているなら、、、、、
〜〜〜〜
キーンコーンカーンコーン
「やっと放課後か」
「もう疲れたぁ〜」クラスメイトたちが続々と帰る準備をしている。
ああもう放課後か。あれらを見ていたら一日が一瞬で終わるな。さて彼女、いや夕火紅葉がどちら側なのか、、
相変わらず質問攻めになっている彼女に話しかけるのはすこし億劫だが、善は急げっていうしな。
そう思い僕は立ち上がって彼女の元へ向かった。
「突然悪いんだけど、、この後二人で話せない?」
言った後で思ったがちょっとキザすぎたかもしれない。
「キャー〜告白ぅ〜?!」
「初日からあいつもやるな〜」なんて声が聞こえてきたが無視した。決して少したりとも精神的ダメージを受けたりしていない。たぶん、きっと、絶対。
「えっと、、あなたは、、?」
見ず知らずの男に突然二人だけにならないかと言われたのだ、当然の反応だろう。
「急にごめん夕火さん。僕の名前は広隅狭。ところですごく綺麗で透き通った目をしてるね。色々とよく見えそう。」
ほんの少しだけ彼女は目を見開いたがすぐに僕の目を見て納得したようだった。
「わかりました。ではこの後二人でお話をしましょう。」
よかった。伝わったみたいだ。どういうことはやはり彼女もこっち側だったのか。
〜〜〜〜
「では皆さん。今日はありがとうございました。また明日。」
律儀にも彼女は僕が誘った数分後にはクラスメイト達との話を切り上げてくれたようだ。
「この学校で人目のつかないところはありますか?話はそこでしましょう。」
「ここから右手に見える渡り廊下を渡ったところに空き教室がある。」
「わかりました。そこでしましょう。」
ガチャ、ギギ、ギ
その音はこの空き教室がしばらく使われていないことを物語っていた。
「あなたも見えるんですか?あれが。」
そう言って彼女は虚空を指さした。そう、普通の人なら何もないところに向かって唐突に指をさしたようにしかみえないだろう。
だが僕、いや僕らは違う。確かに虚空としか言い表せないそこになにかが見えるのだ。
それは真に透き通った瞳を持つもの。
「ガラスアイ」を持つものだけが見ることが出来るなにか。僕らはそれを透霊と読んでいる。
「ああ、僕も見えるんだそれが。」
「ではここら一帯が最近透霊の被害にあってないのは、あなたが調律を保っているからなのですか?」
透霊は基本的には無害だ。形も基本的にはアメーバのように定まっていない。しかし人の感情の変化に敏感に反応する。喜びや、楽しみ、正の感情に影響された透霊は無害なのだが、怒りや悲しみ、憎しみなどの負の感情に影響されたやつは異なる。それらは普通の目を持つ人にも見えるようになってしまう。つまりは実体を持ってしまう。形も影響された人、影響された感情によって定まってしまう。そうなると人に危害を与えてしまう。
だから負の感情に影響された透霊だけを調律する必要がある。
「ああ。僕はここら一帯の透霊を調律するチーム「トゥルース」のリーダーをやっている。唐突で悪いのだが君もトゥルースに入らないか?」
「私は、何者かに母親を殺されました。いえ、正確には変死体となってでてきました。透霊が見えるようになったのもその時からです。だから私は知りたい。透霊のことを。チームに入れば真実を探す手伝いをしてくださいますか?もちろんチームの手伝いなどもいたします。」
「もちろん。チームに入る以上これからは仲間だ。仲間の助けを無視するやつなんてうちのメンバーにはいないよ。」
まさかこんなすんなりいくとは。ツキが回ってきたのかもな。
「じゃあチームについての説明などを、、」
パキ、パリン、、、パリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンパリンぱりんぱりんぱりんぱりんぱりんぱりんぱりんぱりんぱりん
あれが現れた。現れてしまった。現れたのはここから数キロ離れたところだろう。それでもわかってしまう。雷が遠くで鳴っても気づくように、あのおぞましい気配からは気をそらせない。気づかずにはいられない。よりにもよって今なのか。
だからと言って逃げるわけにはいかない。被害が大きくなる前に調律しなくては。
「行かなくちゃ!夕火さんは戦える?」
「一応契約はしています。」
戦闘までできるのかと少し驚いたが今はそれどころではない。
「行こう!」
一応、僕らにも透霊に対抗するための手段はある。喜びなどの正の感情に影響された透霊と契約し、使役するのだ。毒をもって毒を制す。透霊をもって透霊を制すというやつだ。
しかし欠点もある。負の感情に影響された透霊と比べて、正の感情に影響された透霊は実体を持たない。だからそれらを見る事の出来る僕らのガラスアイを通してでしか力を発揮できない。
「透霊よ!僕らは期待する!そこへ辿り着くのを!空間転移テレポート!」
そう僕が言った瞬間、僕と彼女は光に包まれて、瞬く間に数キロ離れていたはずの透霊の近くへと転移した。
僕の契約する透霊は「期待」。「辿り着く」能力を持っている。
でもおかしい。転移の際の誤差が大き過ぎる。何かに阻まれたような。でも今はそれどころではない。
暴れているであろう透霊まではまだ少し距離がありそうだ。
「ここからは走っていこう。夕火さん、接敵する前に契約している透霊についても聞いてもいいかい?」
そういうと彼女はこくんと頷いてから口を開いた。
「私の透霊は、「嫉妬」ですよ。」
そうか嫉妬か。嫉妬、、、
「え?」
思わず僕は足を止めた。
嫉妬は紛うことなき負の感情である。それを彼女は契約していると言った。
「お前は!!霊神機関か!!じゃあ今回の透霊の被害はお前達が仕組んだのか!!!!!!!」
彼女は不適な笑みを浮かべたまま言う。
「そんなわかりきったこと聞かなくてもいいではありませんか。当たり前です!これらは全て神をこの星に産むため!さあ!あなたも神を産むための糧としてあげましょう。」
そう彼女は言うと彼女の体から二本の鎌のような突起が出てきた。いや生えてきた。ツノも頭から生えてきてそれはまるで、、負の感情に影響された透霊そのものであるかのようだった。
霊神機関、それは透霊に可能性を見出し、人工的に神を作り出そうとする機関。いわゆる邪教というやつだ。霊神機関の連中は負の透霊とも契約している。普通負の感情に影響された透霊とは契約できない。代償が必要だからだ。霊神機関はその代償を他の無関係な一般人に肩代わりさせることで透霊を一時的に従えている。
「君は何故霊神機関に?母親の死因を探すんじゃなかったのか!」
僕がそういうと彼女はひどく冷たい目をしていった。
「あ〜ぁ。母親ですか。それは私が殺しました。」
「え?、、」
「私の親は毒親だった!いつも私に酷いことをした!普通の家庭を何度羨んだことか!、、、、、でも気づいたらそれは羨望はなく嫉妬へと変わっていました。そして、その感情は私に力をくれた!」
「、、、、、、そうか。」
彼女にも様々な葛藤や思案、複雑な状況があったのだろう。だから軽々しく慰めたり、同調したりもしない。
でも、彼女が霊神機関に入った以上、人としての一線を超えた以上、僕らは決して交わらない。光と影が交わらないように、水と油が混ざらないように、言葉なんてものを使っても僕らは絶対に相容れない。
「終わらせてやる。」
「何やら覚悟が決まったようですが、無駄です!今の私は嫉妬の力を完全に引き出せている状態。故に生半可な攻撃は無意味なのですよ!!!」
そう言って彼女はその体から生えている鎌を伸ばして僕を捕捉しようとする。
「空間転移!」
それを透霊の力で躱わす。
だが彼女の攻撃は止まらない。今度は鎌の形態を変化させ飛ばしてくる。それはまるで大きな銃弾のように。
「逃げてばかりだといつまで経っても私を倒せませんよ!ねぇ!!!!」
鎌による斬撃と弾丸のような攻撃。確かに隙がない。
でも僕にだって手段がないわけじゃない。
「空間転移!」
そう言って僕は彼女の間合いに入る。彼女までの距離は1メートル未満。
鎌は大振り、弾丸状の攻撃は僅かにためが必要。
故に今彼女は無防備!
「くらえ!!」
僕の能力は期待することによって辿り着かせること。
自分の拳を相手にあたるように期待するだけでそれは必中の打撃となる。また、空間転移の容量で自分の拳を目的地へ向けて加速させることも出来る。
これらを掛け合わせると必中かつ神速の一撃を繰り出すことが出来るという寸法だ。
名付けて「必中の期待」
バンッ!!
「ぐっぅッ!」
くそっ、まだ足りない。
速度が上がったからとは言え所詮は拳。一撃程度では倒せないか。
「このッ!!」
鎌の攻撃をまたしても空間転移で躱わす。
「必中の期待!」
再び僕は空間転移で間合いを詰め攻撃を仕掛ける。
カンッ!!!
金属同士がぶつかり合ったような音が鳴った。
くそっ!もう合わせてきた。
「一度目は驚きましたが、二度目はありません。それに威力も落ちている。その技あまり連続して使えないんでしょう?拳の方が先に速度と威力に耐えきれず壊れちゃいますもんねぇ!」
もうこの技の弱点が見抜かれたか。
僕に残された手段はもうほとんど残っていない。
そう僕には。
「待たせましたね。リーダー。他のみんなは別の所で働いているのであまり物の私が来ました。」
そう僕らはチームだ。霊神機関に対抗するために結成されたチーム、トゥルース。
「見せてあげますよ。数的有利の真髄を!」
「リーダー、言ってることかっこいいように見えて微妙にダサいですよ。」
、、、、、、、、、確かに否めない。
まあ何はともあれ、反撃開始だ!




