死闘はてなく④
リュウの<スペースコンドル>は補給を受けていた。
インパルスではなくバリアーを張った補給艦より弾薬とエネルギーを補給中。
そのコクピットでリュウはまどろむ。数秒で目覚める。瞬間疲労回復薬を使った。商品名は確かポー〇ョンだったかユ〇ケルだったか忘れた。ヘルメットのバイザーを開けてチューブ食を摂る、自分も補給だ。意外と美味い。
そこに<ネーガー>が迫る。バリアーを突破。
ロミの<スペースコンドル>が撃墜する。キーク機がつづく。
コクピットでリュウは「サンキュー」とつぶやき、食事を続ける。
遠くに<スペースインパルス>が見える。
接舷した敵艦は排除されたが、方々で爆発や炎があがる。
「頼むぜ。俺たちの帰る処を無くさないでくれよ」
『補給完了しました』ドッキング解除。
「ありがとう」リュウはスロットルを開く。
<スペースコンドル>は再び戦場へ。
行く手には銀河連合艦隊に迫る無人機<ネーガー>の大編隊。
数え切れぬ対空砲火。
<ネーガー>数機が爆発。残りは砲火を掻い潜り、ビーム発射!
集中砲火を受けて駆逐艦が粉々に飛散する。
空母も被弾する。
通路で爆発。吹き飛ぶ乗員。コントロールを失った空母は小惑星に衝突する。
一撃離脱する<ネーガー>を味方機が撃ち落とす。
その複座式の戦闘機にはキキイ星人ハットとラーが乗っていた。
彼らも疲労の色が濃い。
<スペースインパルス>メインブリッジ。
被弾に船体が震動する。
サライが頭の汗を拭きながら「あのすばしっこい奴にまた味方がやられた。レーダーが使えないこの宙域でもESPコントロールは使える。完全に裏目に出たな」
クリスが「艦内エスパーの協力でESPのコントロール艦を発見!」
ロイの席に情報が表示される。
「主砲、狙え!・・撃て!」
主砲一斉発射。
光の束が白色矮星をかすめカーブして進んでいく。
ステルス化していた大型戦艦<ガルバス>に命中。爆発。
主を失い動きの止まった<ネーガー>群へ銀河連合艦隊は集中砲火をかける。
その大半を撃墜する。
機関室。
対峙するボッケンとサムソン。
「間に合わなかった」ボッケンは後悔を怒りに変えてサムソンを睨みつける。
両者は睨みあう。動かない。
到着したヨキと陸戦隊が攻撃するが、敵の数はまだまだ多い。
サムソンの部下が機関室の奥へと向かう。
敵兵がエンジンルームのドアノブに手をかける。次の瞬間、吹っ飛ぶ。
中からマーチンがゆらりと出て来る。
指先からバチ・バチ・と火花が散る。怒りに震えている。
「うおおおおお・・・・・」電流火花が走る。
電撃で敵兵が次々倒れる。
マーチンは一目散に倒れているニコライに駆け寄る。他の機関室員も続く。
「機関長!!」
ニコライはマーチンの手を握る。弱々しく血まみれの手で。
「・・マー・チン・・ふ・ねを・た・の・む・・・」
腕が床に落ちる。
「機関長!機関ちょおー!!!」絶叫。
機関長を失った機関室員は失意と悲しみと怒りの中、言葉も発せられない。
再び敵兵が攻撃を開始する。
ヨキがバリアーを張る。
マーチンはそれを一瞥し、仲間と敵兵の間に入る。
「離れてろ・・・わああああああ・・・・」
いくつもの稲妻が敵を貫いていく。
敵兵が次々倒れる。パワードスーツもショートし機能停止する。
「はあはあはあ・・」
マーチンの背後の敵が倒れる。ヨキの脳波誘導ブーメランが宙を舞う。
マーチンとヨキ。ふたり背中合わせ。
「背中は任せろ」
「小さいけどな」
「ほっとけ」
一斉攻撃。
その最中でもボッケンとサムソンは動かない。
「・・・(出来る)」
「わかるぞ。お前は強い。こんな所で強敵に会えるとはな。嬉しい」
「(戦いを楽しんでいるのか?)」
サムソンは周囲を見回し、「狭いな。これではつまらん」
サムソンは大剣を床に突き刺し、拘束具を取る。
「はあああああ・・・・」
ボッケンは飛び退く。
サムソンの身体からパーソナルバリアーが伸びる。
機械などがそれに触れると消滅する。インパルスのバリアーアタックと違い、破壊力がある。何もない空間は半径10mにおよぶ。床がほとんど掘れていないのは不思議だ。
「はあああああ・・・・」サムソンの気合入れは止まらない。
その身体がみるみる巨大化する。身長は4mを越す。
「巨人?お前は・・トスーゴじゃないのか?」
「俺はトスーゴ配下のディテロヌス人だ。俺達が戦わないと同胞が殺される」
「・・・」
後頭部に第三の目が開く。背中から三番目の腕が生える。巨人種だがラカンやジグとは別の種族である。
背中の手に大剣を取り、両腕にビームマシンガンを構える。
ガガガガガガガガガ・・・・ サムソンはビームマシンガンを連射する。
ボッケンは避ける。逆に斬り込む。
サムソンはそれを背中の大剣で受け止め、振り回す。
ボッケンは飛ばされる。数メートル先で着地。
そこへ銃撃。
ボッケンは弾を避け、再び間合いを詰めるべく近づく。
明とガルムら陸戦隊はメインブリッジに向かっていた。
だがジグ率いる敵兵との戦闘で思うように進めない。中央作戦室前の階段で敵の猛攻を受けて動けずにいた。
「くそお」悔しがるガルム。
近くの部屋から装甲兵が現れる。明が銃を向ける。
「撃つな!」ガルムが制する。「味方だ」
見たことのない装甲兵だ。敵と勘違いしても仕方ない。
『弓月明、本当にリカバーしたのだな、よかった』
「誰?」
『アランだ。君たちが知らせてくれた移動物体の調査に来た』
「副長?」
メインブリッジからの遠隔操縦だ。
アランの装甲兵は通路の壁をスキャンしたあと、特殊ドリルで穴を開ける。
移動物体の通った穴に通じる。中に超小型の反重力ドローンを投入。
アランはその映像を解析する。
『やはりミサイルのようです。内部で爆発すれば艦の1/26が破壊されます。以後ドリルミサイルと仮称します。ドリルと言っても・・・』
「めっちゃやばい奴やん」
「敵の目的は望君と美理嬢を拉致することではないのか?」ガルムが訊く。
『交渉に使うつもりかもしれません。弓月明、君ならこいつを艦外へ移動できるだろう』
「・・・すみません。今はESPが使えない」
『了解した。善処する・・ここ(ブリッジ)には流美理がいる。何か伝えることはあるか?』
「!・・待ってて・と伝えてください」
『了解した』
地球人の影響で人情味が出てきたアランだが通信を代わってやる所までは気が利かない。
アランは遠隔操縦を一旦解除、装甲兵は機能を停止した。
明は壁に耳を当てる。「やっぱ透視能力欲しいよな」
ガルムに部下から通信が入る。
「え?機関長が?・・わかった」通信を切る。
辛そうな声で周りに知らせる。「ニコライ機関長兼整備長が亡くなられた」
「え?」
メインブリッジ。
美理が「艦内レーダーで捉えました。下方に熱源反応!」
「本当に装甲板の中を進んでいるのか」
「ブリッジ到達まで30分!」
「ええっ」その通信を聞いたショーンが驚く。
ここにもニコライの死が伝えられる。
「そんな・・」
「嘘だろ?」
「さっきまで・ここにいらしたのに」
美理の目からぽろぽろと涙があふれる。
「・・・・」
重い空気がブリッジを包む。その死を悲しんでいる時ではないのは分かっている。
流は苦渋の決断をする。
「メインブリッジの乗員は第1サブブリッジへ移れ!そこで指揮をとる!第2サブブリッジとメインコンピューターにも連絡しろ!・急げ!」
乗員が避難移動のため立ち上がる。
その時、扉が開きレオンが飛び込んで来る。防衛線が破られた。
床に置かれた粘着シートに捕まる。味方の靴底には反応しないようになっている。
Gのように動けなくなったレオンをブリッジ内に駐留していた陸戦隊が仕留める。
次々とレオンが現れる。
ついにメインブリッジでも白兵戦が始まる。今は避難出来ない。




