■第33話 〜総合病院で〜
総合病院に到着したミコトは、セイラの到着を待つために待合室に腰を掛けた。(病院か、あんまり落ち着かないな。きれいにしてあるけど、やはりどこか暗い感じがする。)ミコトは待合室に設置してあるテレビを見ながらしばらく待っていた。
ふと周りを見渡すと、そこには栗色の髪が肩にかかっている涼しげな顔をした少女がこちらを見ている。
「やあ。」
「こんにちは。」
「昨日はありがとう。」
「ええ。こちらこそ。ミコトには助けられたし。」
「それはお互いだ。…いきなり呼び出してごめんよ。」
「いいわ。逆に虚無羅が見つかって嬉しいくらい。」
(へえ、自分は虚無羅なんて見つけたくないんだけどな…。)
「うまくできるといいけど。」
「そうね。ここでは、あんまり私の力は使えそうに無いわね。」
「確かに。自分も室内だとやばいかな。相手を屋外に誘わないと。」
「そうね。」
二人は簡単な作戦を立てた後、シンジが寝ている4階の南病棟へと向かった。
「403と、あそこか。」
403号室まで後数メートルというところで、ミコトはその体に感じる気配に足を止めた。
「これは、…やばいね。」
「ええ。私も感じるわ。」
「昨日のトカゲとは格が違うな。できるか?」
「ええ。大丈夫よ。」
ミコトは心を落ち着かせて目の色を黒くした。自分の体から出る光のオーラの量を抑えることで虚無羅に気付かれないようにしたのだ。マナの力に覚醒したミコトやセイラは虚無羅に見つかると襲われる可能性があるからだ。
そして、2本の太い角を持つ虚無羅を強制的に威嚇し、自分へとひきつける役割を、セイラは担っていた。闘牛士の持つ赤いマントの役割に似ている。
セイラは403号室の入り口に立ち、静かに口を動かした。
「オン コロコロ マカリシエイ ソワカ オン コロコロ マカリシエイ ソワカ ・・・」
セイラの口からその言葉が繰り返されるたびに2本の角を持つ牛のような虚無羅から発せられる黒い気が強まっていくのを感じた。
<うるさいやつだ>
その低くしわがれた体の奥に重く圧し掛かるような声を聞いたのは、セイラだけではない。
「虚無羅が喋った?」
その恐ろしさを肌で感じるミコト。(セイラがやばい。)
<ぐをうわああ>
恐ろしい声を上げて、牛のような虚無羅はその背中から生えている両翼をばたつかせ、勢いよくセイラに向かって襲い掛かった。その声はまるで近くでジェット機の音を聞くかのようにびりびりと体に堪えた。虚無羅の両翼は病室の入り口の幅を悠に超えている。その体はまるで牛くらいあり、黒茶の毛で覆われ、足はミコトの体ほどある馬のような足であった。(でかい!)トカゲのときと同じように虚無羅とシンジは黒い縄のようなものでつながれていた。
いよいよシンジに取り付いていた虚無羅との戦いが始まります。牛のような虚無羅という表現しかないのですが、今後は敵さんにも名前をつけようかなと思います。できるだけ名前をつけるのは少なくしたいと考える筆者であります^^;
★筆者コーナー★
魔法使いっていいですね。でも、魔法と霊、どちらを信じるかといえば、霊ですね。魔法はかなり胡散臭いです。ハリーポッターは嫌いじゃないです。でも、突っ込みどころ満載ですよね。どうしてここであの魔法を使わないの?とか。まあ、そんなことを言ったら、たいていのものは落ち着いてみていられませんが^^;




