表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第二章 殺されるべき娘
7/30

森の民2


 セオはそれから時間を見て、何度かレイアに会いに行った。

 長老から託された任務は、レイアを殺して、その遺体を利用させないように燃やすことにあった。

 だから、まず彼女を連れ出し、どこかで殺す。


 セオは、任務を念頭に置きながらも、ただ彼女と他愛のない話をする。

 ある日お菓子の話題になり、彼女が食べたことがない揚げドーナツの話になった。

 美味しそうだなあと言われてセオは、明日持ってくると言って、別れた。


「セオ。嬉しそうだな」

 

 店で揚げドーナツを購入して、意気揚々と城に向かって歩いていると、声を掛けられた。

 それはアーロンで、小さな革製の水筒を飲みながら、こちらにやってきた。酒臭い息を吐き、顔はほんのり赤い。だけど、酔ってないことをセオは知っている。


「ああ、これ、俺の大好物なんだよ」


 セオは村では食べられないから、と小声で続けて笑う。


「そうか。ならいい。俺は十九年前のことを後悔している。だから今回は任務に参加した。セオ、よく考えろ」


 アーロンは肩を叩いて笑いながら、近くの酒屋に消えていった。


「……任務関係なく、酒飲んでるだけじゃ?」


 その後ろ姿を見ながらセオをぼやく。

 けれども考えていることはレイアのことだった。

 彼女のことを皆に話して、誘拐する算段を立てなければならない。

 あの様子ではアーロンはセオがレイアと会っていることに感づいていた。

 となると他の仲間も知っている可能性があった。


(みんな、殺したくないって思っているかもしれない。だから攫って、森に連れて帰ればいいんだ)


 彼は安易に考え、皆にレイアの居場所、接触方法を伝えることにした。


 ★


「セオは純粋すぎるなあ」

「惚れたかもしれませんね」


 赤毛に染めた髪をくしゃくしゃと触りながらリアムはぼやく。それに対して栗色の髪のテイラーは眼鏡を拭きながら答える。

 部屋に残っているのは、アーロン、リアム、テイラーだけだ。この場にいないセオはレイアのことを話すと城に戻り、エディは明日の人足の仕事が早いと、港近くのねぐらに戻った。


「あいつも単におしゃべりをしていたわけではないらしい。これが娘の一週間の動きだ。血を採取するのは一週間に一度。採取した血も奪いたいところだが、そこまで欲張ると失敗する。採取した血を加工するためか、その後マルクは降りてこない。だが、夜に王が彼女に会いにくるらしい」


 アーロンはセオが書き留めたものを二人に見せる。


「一応父としての愛情はあるのかな」


 リアムは腕を組んでうなり、テイラーは綺麗になった眼鏡を装着して、二人に向き合う。


「どうでしょうか。愛情あるなら娘の血など採取しないでしょう。カルシア王国は強大になりすぎた。もう攻める国はありません。だけど、統治がうまくいっていないところがあるらしく、その鎮圧のために不死身の兵士を使っているみたいですね」


 テイラーは集めた情報を分析する役を担っており、ずっと森の中で紙を睨みあっこしていた。

 この機会に実際の目で見たいと、この任務に志願している。


「採血の日の真夜中に決行するのはどうだ?王もずっといるわけではないだろう。リアムの調べからも採血の夜、マルクは毒薬を作るのに忙しいらしいからな」

 

 アーロンが提案する。

 リアムはマルクの動きを調べていた。

 けれどもそれだけで、具体的に彼が森の民の血をどのように加工して、毒薬にしているかは知らなかった。

 長老も側近もその情報を求めないし、密偵の誰もが浅ましいと調べることもなかった。リアムも同じだ。’

 テイラーは気になっていたが、それを一度口にして皆にゴミを見るような目で見られたため、探究心は胸の奥にしまっている。


「そうだね。そうしよう」

「明日リアムからセオに連絡。セオに娘を懐柔させましょう」

「懐柔……。セオにはそんな真似はできないと思うけど」

「抵抗しないように関係を作るだけだ。まあ、今の状態で十分だろうな。今日はセオの奴、娘のために菓子を買っていたぞ」

「あ、あれ。やっぱりその子のためなんだ」

「懐柔、されているのはセオですか」

「いいじゃない。まあ、余計なことしそうだから。セオには娘を殺す計画は話したらだめだよ」

「そうだな。あいつは俺らが娘を助けると思って、娘の居場所を話したはずだから」

「胸が痛みますね」

「……テイラーってたまに白々しいよね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ