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その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第一章 始まり。
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不死身の兵士

「ひいい!悪魔だ。悪魔がいる!」

「ジョン!どうして!」


 毒矢を放ち、狂った不死身の兵士が生み出される。

 友であった者が急に襲い掛かってくる。

 隣国の兵士たちは混乱に陥っていた。


「どうだ。我々が作り出した不死身の兵士は。これ以上戦うというなら、更に不死身の兵士を増やすぞ」


 チャーリーは皆に反対されたが、戦線に参加した。

 もちろん後方のほうだが、腹に力を入れ、怒声をあげ、兵士を鼓舞して、隣国の兵士を恐怖に陥れる。

 不死身の兵士は、隣国の兵士にとっては仲間の兵、友であったものが変わり果てた姿だ。

 涎をたらし、白目をむいて、狂ったように襲い掛かってくる。

 首を落したり、頭を破壊しない限り、それは動き続けた。


「引くぞ!」


 司令官は惨状を理解して、これ以上の被害が出ないように判断を下した。

 しかし狂った兵士は動きを止めない。

 なので、兵士たちは泣きながら友であった者を殺すしかなかった。

 そうして、隣国の侵略は一週間という短い期間で終わりを迎えた。

 隣国は進軍する際に食料を奪うだけでなく、女を浚い、歯向かった者は凄惨な死を与えて進み続けた。

 わずか一週間でも、チャーリーが治めるザッハルト領の失ったものは大きかった。


「よかった。戦いは終わったんだね」


 屋敷で出迎えた者達は、皆笑顔で、イザベルも笑顔でチャーリーを出迎える。

 チャーリーは彼女を抱きしめながら、その温かさに癒されていた。

 例え彼女の血が恐ろしいものであって、チャーリーは彼女を愛していた。もしかして、すでに愛を越えて執着に代わっていたかもしれない。

 彼女の血は戦場を有利に導く。


「イザベルはまるで勝利の女神だな」


 チャーリーの言葉にイザベルは微笑んだまま。

 彼女は森に帰れると信じていたのだ。


 ★


「イザベル。僕と結婚してくれ」

「結婚?!」


 戦いから一週間後、森に戻る算段を相談しようとしていた彼女にとって、驚きしかなかった。


「それは、無理でしょう?私はお貴族ではないもの。森に戻るつもりだし」


 イザベルはチャーリーのことを愛していた。

 だからこそ、今までずっと一緒にいた。

 けれども己の血の効果を知り、森に帰らなければと強く思うようになっていた。


「貴族ではなくても、君は戦いの女神だ。僕と結婚するのは問題ない」

「……森に返してくれるって約束したよね?」

「イザベル。僕には君が必要だ。頼む。一緒にいてくれ。もうあんなことさせないし。僕は君の血を浴びても何も変わらない。僕は大丈夫だから」

「ごめんなさい。私は森に帰るわ。チャーリーにはもっと相応しい人が沢山いるじゃない」


 愛人という意味をイザベラは知っていて、そう言われることは好きではなかった。

 チャーリーの親戚である令嬢に嫌味を言われることもあった。

 だから思わず感情的に返す。


「余計なことを言った奴がいるのか。どいつだ」

「言わない。私もそう思うもの」


 チャーリーの声質が代わり、少し怖くなって慌ててイザベルはそう言う。

 彼女は仕返しなどは求めていない。

 嫌な気分だったが、それだけだ。


「ねぇ。チャーリー。今が大変なことはわかっている。だから、落ち着いたら森に返して」


 今は何を言っても無駄だと、イザベラは少し妥協した。


「イザベラ。僕は君を愛している。もう身長だってずっと君より高いよ。僕の申し込みを受けいれて。結婚して」

「だめだから」

「イザベラ」


 イザベラの唇をチャーリーは己の唇で塞いだ。

 彼女は森から出て大陸に渡り、色々学んだといえ、男女のことはよくわかっていなかった。

 繰り返される口づけに翻弄されて、おかしな気分になる。

 そうして、その日、イザベラはチャーリーを受け入れた。

 

 前伯爵の喪が明け、チャーリーはイザベラとの結婚を発表した。

 彼女のことは、戦いを終わらせることに貢献した戦いの女神と紹介した。

 それから一年たち、二人の間に娘が誕生する。

 黒髪に黒い瞳のイザベラによく似た女の子だった。


 


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