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その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第三章 クルスナラハ
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森の民の血が与える影響


 チャーリーがクルスナラハに到着した時、既に全てが終わった後だった。

 軍の保管庫が襲撃され、火事が起きた。

 不死身の兵士を作り出す薬剤も保管していたため、必死に消火活動したが、全焼した。

 その上、薬らしくものは全て持ち去られていた。

 襲われてすぐに何名かを不死身の兵士を作ったのだが、少年によって無力化されたとチャーリーは直接報告を受けた。


「少年は黒い瞳をしていたか?」

「さあ、帽子を深くかぶっていたので、はっきりした色までは。暗い瞳だったのは確かです」

「賊は何人だ?」

「四人。そのうち二人はガキで、どうやら家族のようです。宿にはそう説明していました」

「宿か。その宿から話しは聞けるか?」

「はい」


 チャーリーが滞在してる屋敷に呼び出された宿の亭主は、不死身の兵士を使い悪政を敷いてるカルシア王国の王の面前で、緊張していた。また機嫌を損ねたら自分も不死身の兵士にされるかもしれないと怯えてもいた。


「四人とも宿をとっていたのだな」

「はい。というか、事件が起きてから消えてしまったので、正確には一泊もしていません。普通の家族に見えましたが、そんなことをしていたとは……」


 最初事件が起きた時、三人の身元を割り出し、滞在先を調べた兵士たちが宿に乗り込んだ。

 けれども部屋のもぬけの殻でだったそうだ。

 

「情報をありがとう。帰ってもよいぞ」

「陛下?」


 拷問などをするのかと思っていた兵士は拍子抜けしたように、チャーリーに聞く。


「この者に何か聞いたところでわかるわけがないだろう。それよりも残された荷物を調べたか?」

「はい。けれども衣服と食料しかありませんでした」

「そうか」


 手がかりはなく、このまま王都に戻るしかない。

 何のためにクルスナラハまで来たのかと、不信を抱く者を多い。不死身の兵士を眠らせる者がいる。これはカルシア王国にとっては痛手だ。逆にいうと不死身の兵士に苦しめられている地域の者にとっては救いかもしれない。

 不死身の兵士を眠らせる少年、チャーリーはそれがレイアである可能性が高いと考えていた。

 イザベラの血を得て、彼女と体を重ねて、彼は自身の変化に気が付いた。

 凶暴性が増すのだ。苛立ちが募る。

 イザベラの側にいる時は気持ちが凪いだ。

 彼女は殺され、世界を壊してしまおうとも思った。

 けれども、それはせず世界を支配することを試みた。自ら戦に赴くこともあり、彼は恐れられた。

 血を見ると落ち着き、彼は戦に行くのが楽しみだった。

 イザベラを失い、レイアの元を訪れる事が彼にとっての癒しだった。

 それを奪われ、取り返せねばと気持ちが焦り、他のことが無関心になっていく。

 レイアの目的は、不死身の兵士を眠らせることかもしれない。

 彼女は優しい娘だった。

 イザベラのように。

 そうなると、不死身の兵士を置いている場所は限られる。

 クルスナラハ、あとはアステライゼだ。

 

「アステライゼに逃げた可能性がある。戻るぞ」

「陛下。恐れ入りますが、船の出航準備等があるため、今すぐ出航は難しいです。また兵士たちを休ませる必要もあります」

「わかった。そうしよう。出立は明日にはできるか」

「はい」


 戦での彼の動きも見ている兵士たちは、王への畏敬の念を持っている。

 彼の命には素直に従うだろう。 

 しかし移動の移動では兵士の体力が持たない。

 マルクが行方不明になり、宰相の発言力は増した。

 チャーリーが王都を離れている間は、宰相が代理を務めている。

 王に付きそうのは宰相の補佐官だった。

 彼は軍上がりで、他の兵同様チャーリーを尊敬している。

 しかし、言うべきことは言える宰相補佐官だった。

 彼は平伏すると部屋を出て行く。


「レイア。もう血など必要ない。ただ傍にいてくれたらいい」


 誰もいなくなった部屋でチャーリーはそう願った。


 ★


「今日はやっとゆっくり休めるなあ」

「でもすぐ移動だろ」


 船から降りたカルシア王国の兵士たちに与えられたのは、宿舎での待機であった。

 街に降りることは許されないが、揺れない床で眠れると喜ぶ兵士が多かった。


「ジョッシュ。どこにいくんだ?」

「どこかに可愛い女の子いないかみてくるんだよ」

「いるわけないだろ」


 リアムは『仲間』の兵士と軽口を叩きながら、宿舎の部屋を出て、アーロンたち商人がいる場所を目指す。

 兵士と異なり、商人たちは街に出ることが許されている。

 もちろん、自己責任で兵士は安全を保障しない。

 商人たちは何かしら商売につながることはないかと、各自で街に降りていた。


「よく、来たな」


 アーロンはリアムを見ると笑い、連れだって食堂へ歩いていく。

 端からみると商人と兵士の歓談だ。

 二人は周りの目がなくなったのがわかると、警戒しながら窓から外に出て屋根の上にでる。

 ここから誰を気にすることなく話をすることができるからだ。


「セオたちはよくやったようだな」

「やっぱりそうなんだね。待機と言われたとき、そんな感じがしたよ」

「保管庫は破壊され、保存していた薬はすべて持ち去らわれていたということだ。賊は逃走中。家族四人ずれらしい」

「チャーリーはそう思っていないだろうな」

「俺のせいかな?」

「まあ、意味深なこと言い過ぎだ。だが、おかげで森は安全だ。チャーリーは噂の少年がレイアだと気が付いているだろう。そうなると必死に追うしな。まあ、そのおかげで村には手を伸ばさないだろう」

「とりあえず俺たちは引き続き、軍に紛れておかないとね」

「そうだな。背後から援護できることはしてやろう」


 二人をお互いの手を握りしめ合い、別れた。

 

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