表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第三章 クルスナラハ
15/30

いざ、潜入。

「動かないで。不死身の兵士になりたい?」


 リアムは自分たちを捜索していた兵士の一人を捕まえると、そう囁く。

 兵士の顔は直ぐに真っ青になった。

 毒矢を受けて、不死身の兵士になる話は今では誰でも知っている話だ。

 その毒はマルクによって製造されているが、城内で起きた事を知っているものは、その毒が誰かによって盗まれ利用されたと噂していた。

 レイアの存在を隠しているため、森の民の血が不死身の兵士を作ることを、チャーリーとマルクは誰にも伝えていなかった。

 マルクは公表してもよいと思っているのだが、チャーリーはひた隠しにしていた。


「た、助けてくれ」

「助けてあげるよ。ただし、王にこれを渡してほしい。開けたらわかるようになってるから、絶対に開けないように」


 蝋で封をした手紙をリアムは兵士に渡した。

 それから彼を解放して屋根に飛び乗る。


「さあ、行って。じゃないと射ちゃうよ」


 頭上から矢を向けながら、リアムがそう言うと、兵士は慌てて城の方へ走っていった。


「軽いなあ。もうちょっと脅したほうがよかったんじゃないか?」

「十分じゃない。あの慌て方、ちゃんと届けてくれると思うよ。まあ、ダメならまた別の兵士を捕まえるよ」


 何を考えているのか、兵士たちは個々に分かれて、リアムたちを捜索していた。

 おかげで捕獲するのは簡単だった。


 ★


「陛下。お目通りを願う者がいます。街から戻ってきた兵士で、賊から書簡を預かってきたと言っております」


 捕らえることができず、書簡だけを預かったきた。

 その事実は恥ずべきものであり、門番から話を聞いた騎士副団長は、まず手紙の中身を確かめようとした。しかし書簡を預かってきた兵士が半狂乱になって止めるので、実行しなかった。

 兵士曰く、毒矢で脅されたとか。

 現在、毒矢と聞けば兵士たちは恐れおののく。

 それは不死身の兵士にさせられる毒を塗ったものを指しているからだ。

 副団長が緊張しながら、チャーリーに伺いを立てるとすぐに許可が下りた。

 彼は逃げてきた兵士を伴い王室に入った。

 挨拶を終えた後、請われるまま、書簡をチャーリーに渡す。


「これを渡した男の目の色は黒色だったか?」

「はい!」


 兵士は平伏しながら答えた。


「下がってよい。ご苦労だった」


 チャーリーからの質問はそれだけで、副団長と兵士は退室を促がされた。

 彼らは一礼するとすぐに王室を立ち去る。


 王室には、チャーリーと壁際に立つ護衛騎士の三人だけだった。


「お前たちも退室してくれ。用事が済んだらまた呼ぶ」


 チャーリーにそう言われ、護衛騎士は一礼すると部屋を出て行った。

 扉が完全に締まってから、彼は封筒を破き、紙を取り出す。


『チャーリー。

 お前の娘は預かっている。

 返してほしくば、マルクと共に東の旧ベルモト邸宅に明日の夜にくるべし。

 もし他に誰かを連れてくるならば、娘は殺す』


 手紙にはそれだけが書かれていた。


 本当に娘がこの書簡の主に攫われたのか、確証はない。

 城で不死身の兵士を生み出した男が、差し出し人であるかも不明だ。

 だが、チャーリーはこの誘いに乗ることにした。


「マルク。そこにいるか」

「はい。陛下」


 王座の後ろから、マルクがのっそり現れる。


「明日の夜、出かけるぞ。森の民との対面だ」

「はい」


 マルクは罠であるとか、行く必要はないなど反対することもなく、ただ承諾した。


 ★


「ふう、やっと着いた」

「ああ、やっと揺れない足元です」


 よれよれの女装テイラーはエディに支えてもらいながら、船から降りる。その後にレイア、セオが続いた。


「まずは宿で休みましょう」


 テイラーは船酔いのため、船の上でゆっくり寝ることができなかった。

 このままではまともな情報収集、計画を練ることはできないと一晩休むことを提案する。

 セオは喜び、レイアはどう反応していいかわからず、困った表情を浮かべる。


「さあ、宿探そうぜ!」


 セオは嬉しそうにレイアの手を繋ぎ、歩き出した。

 港街であるはずのクルスナラハは、賑わいがほとんどなかった。

 日中に関わらず、開いていない店が多い。

 気分よく歩いていたセオだが、徐々に元気がなくなっていく。


「大丈夫?」

「大丈夫だって」

 

 レイアにそう聞かれるくらい、セオは元気をなくしていて、空元気で答える。


「母さん、この街なんで、こんなに暗いんだ」

「暗いだけじゃないですよ。『バート』」


 テイラーはあくまでも母親役を演じながら、セオを諭す。

 セオだけでなく、レイアも周りを見渡し、人々に生気がないことに気が付く。

 皆どこか怯えて様子で足早に歩いていく。

 

「俺たち、目立ってる?」

「そうですね。そうそう宿を決めてしまいましょう」


 宿という看板があるところを、一軒づつ廻り、やっと営業している宿屋を見つけた。


「ようこそいらっしゃいました。素泊まりで構いませんか?」

「いいですよ」


 その条件で四人は一つの部屋を確保することができた。

 

「私は宿で休みますね。まだ少し気分が悪いので。『バート』たちは『オイゲン』と一緒に町を見て回ってくださいね。何か面白いことがあれば教えてください」


 部屋に備え付けているベッドは四つ。

 テイラーは直ぐにその一つに横になって、セオたちに指示を出す。

 それは先に街に出て情報収集をしてくれ、という少し横暴な指示なのだが、テイラーが本当に気分が悪そうだったので、三人は素直に従うことにした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ