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その血は人を狂わせる。  作者: ありま氷炎
第二章 殺されるべき娘
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新たなる目的


「私のお母様があなたたちと同じ森の民?それでその血が人を狂わせる?」


 話を聞き終わり、レイアは呆然と呟いた。

 

「お母様も、私の血も戦いのために使われ、多くの人が亡くなったのね。あんな風に心も体を壊す、私の血……」


 レイアはぽろぽろと涙を流し始めた。


「私は知るべきだったのね。もっと早く」

「レイア、自分を責めるなよ。だってずっと閉じ込められていたら、わからないじゃないか」

「……私は疑問を持とうとしなかったの。持ち始めると、全部聞きたくなるから。私の世界はあの場所だけだった。遠い昔の記憶で日の光を浴びた記憶はある。ぼんやりだけど。でも思い出そうとすると涙が出てくるの。だから考えるのをやめたの」


 レイアはぽつり、ぽつりと語りだす。

 森の中は静けさに包まれており、彼女の声以外、鳥の声が遠くから聞こえるだけだった。


「なぜ、あなたが達が私を殺そうとしたのか、理解できる。だけど、その前に、私の血で作られたすべての不死身の兵士を眠りにつかせたいの。その願いを叶えてもいい?」


 レイアはアーロン、リアム、テイラー、エディ一人一人を見つめ、最後セオに笑いかける。


「セオ、私を外に出してくれてありがとう。もうこれ以上不幸な人たちを出さなくてすむから」

「レイア……」


 セオは泣きたくなる自身を心の中で叱咤し、声を押し殺してレイアを見つめる。


「いいじゃない?俺は賛成だけど」

「私もです。どっちにしても不死身の兵士は放置できないですからね」


 リアムが最初に口を開き、その後にテイラーが続く。


「その条件、いや願いを叶えてやる。ただし俺たちの監視下で動いてもらう。もう一度、チャーリー達に捕まってもらうのは困るからな」

「ありがとう。あの、あなたも賛成してくれる?」


 レイアは恐る恐るエディにも同意を求める。

 すると彼は静かに頷いた。


「俺は半分だけ賛成だ。レイアは殺させない」

「セオ……」


 レイアはセオの優しさに泣きそうになった。けれども口をきゅっと結んで、セオを見つめ直す。


「私はお父様やマルクに言われるまま血を提供してきたの。その罪は免れないわ。私は死をもって償いたいの」

「レイア。君は知らなかったんだ。だから償う必要なんてない」


 セオはそう言うが、誰一人彼に同調する者はいなかった。


「とりあえず場所を移動しよう。方針は決まったけど、作戦を練る必要があるからね」

「そうだな」


 リアムがパンと拍手をして、話を纏める。

 アーロンが頷き、セオが反対のまま、一行は動き出すことにした。


 ★


「現在、不死身の兵士が目撃されている場所は、アステライゼ、クルスナラハですね。この二つをチャーリーは支配下にかろうじて置いてますが、反対が多い。アステライゼに関しては元王太子が行方不明で、兵を募っているのではないかと噂されてます」


 情報収集のため、森の民の精鋭はいくつか拠点を設けている。

 ここから一番近くの拠点、廃墟の一角の地下で、テイラーは地図を広げながら説明をした。


「それではまずアステライゼに向かおうぜ」


 セオはアスライゼがここから近い場所にあるので、素直にそう提案した。


「だめだよ。それじゃあ、すぐにこの子がいるってバレるから、遠くから攻めていったほうがいい」

「だろうな。そうなるとクルスナラハだな」


 リアムの言葉にアーロンが賛同し、別の提案をする。

 セオは素直なので、リアムの言葉を受け止め、アーロンが指を差したクルスナラハを見る。

 

「遠い、の?」


 レイアは地図を見たことがなかった。

 なので、普通にそんな疑問を口にした。だけど、いけないことだというように口を押えた。城の地下にいたレイアはずっと何にも疑問を持たないようにして生活してきた。けれども、こうして外に出ると気分が代わり、なんでも知りたくなってしまったのだ。


「遠いよ。船で行った方が早いんじゃないか?」

「そうだね。それいい考え」

「だな、船の方が早い」

「船ですか。私は遠慮したいですね。船は」


 船酔いを経験済のテイラーが顔を顰める。だけどそれは単なる軽口だ。レイア不在に気が付いたチャーリーの追手を考えると最短の距離で移動したほうがいいのは理解していた。


「それじゃあ、設定を決めよう。このままぞろぞろみんなで動いたら、すぐに怪しまれてしまうからね」


 リアムが茶目っ気たっぷりにそう言って、五人の偽りの設定、移動の仕方などが話し合われることになった。


 

 

 

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