154 神の姿
「帰りたいっ。帰りたいよ。うわぁぁあぁ」
叫んだのはレンカちゃん。
これで、無理ですとか言ったら、俺って鬼畜だな。
どこかの転生管理神様みたい。
「そりゃ、帰れるなら帰りたいけどな」
「僕も、うん。みんなで帰れるならそれがいいかな」
コウキ君とユウタ君も良い、と。
「俺も帰れるんだったら帰りたいぜ。ユイも良いだろ」
「当たり前でしょ。なんで私だけ残らないといけないのよ」
うん。まあ、彼らは俺と違って完全に転移してきた感じだし、まだ学生だしな。
「じゃ、プランを説明するぞ」
プランはこうだ。
タケル君には日本の品物を打出の小槌で取り寄せてもらう。
取り寄せる直前でフリーズ。
取り寄せる対象と全員の位置を入れ替え。入れ替える対象は大きさの違いが少ない方が良いらしい。全員を入れ替えるなら対象は大きい方が良さそう。
ここまではさっき試したことの焼き直しだな。
そして、移動した後に打出の小槌の取り寄せ能力をイレイズで打ち消す。
そうすれば、みんなで日本に移動できるという寸法だ。
「多分だけど、日本に行ったら君たちの能力は使えなくなるんじゃないかと思う。特にタケル君のは神様が援助してくれたようなもんだし」
「構わねえよ、そんなの。日本なら普通になんでも買えるからな」
力に執着したりはしないか。
「あの……」
小さく手を上げるユイちゃん。
「最後のイレイズは、こちら側で使わないといけないんじゃないですか? そうしないと、日本からまた戻って来ませんか?」
そうだね。さっきの感じだとそうなりそう。
「私は……帰れないんですね」
「おい、そんな訳に行くかよっ。ユイが残るんなら、俺だって残るぜっ」
「タケル君……。ありがとう。でも駄目だよ、ちゃんと帰らないと。私なら……大丈夫だから」
「駄目だっ。俺は……ユイがいないと……」
そろそろ、止めた方がいいかなあ?
いや、最後まで言っちゃった方がいい気もするけど。でも、みんな見てるしなあ。
「ちゃんと皆で帰れるから、心配しないで。ユウタ君、能力の共有に俺も混ぜてくれる? イレイズは俺が使うから」
「「あう……」」
赤くなって俯くタケル君とユイちゃん。
黒歴史確定だな。まあ、異世界の恥はかき捨てだよ。
「で、でもよ。おっさんはいいのかよ。日本に帰れなくてもよ」
今まで俺が日本に帰るかどうかなんて全く考えてなかったくせにね。
照れ隠し以外の何物でもないな。
まあ、なんかシンディ達も聞き咎めたみたいだし、ちゃんと言っておくか。
「日本の俺って。もう死んでるらしいんだよね。急性心不全だか何かで。さすがにもう発見されて、火葬とかされてると思うから、戻っても居場所がないんだよ」
行方不明扱いになっているであろう、君たちとは違うわけだ。
日本で戸籍がないとか、生きて行ける自信が無い。
それに、石長比売様の神通力も正直言って失くすのは惜しいしな。
生活の不便さも大分解消できてきたわけだし。
法律に縛られない分、好きに物が作れる、まである。
「まあ、なんなら、何日かこっちで遊んでから帰ってもいいし。とはいえ、行方不明っていうんじゃ、できるだけ早く帰った方がいいかもだけど」
そうして、タケル君達は皆で日本へと帰還した。
その後、どうなったかについて詳しいことはこちらからは判らない。
でもまあ、無事ではいるんだと思う。
なぜなら、能力共有したフリーズ、スイッチ、イレイズの三つが、まだ俺の中に残っているからだ。
どうせなら、打出の小槌が欲しかった。……いや、そんな贅沢は望むまい。
タケル君達と会うことも二度と無いだろう。
それでも、短い時間ではあったが、それなりに濃密な関係を築けたのではないかと思っていた。
が、やっぱり若い連中の考えることは良く判らないな、いや本当に。
日本に帰るために五人と入れ替えた日本の物、選んだのは打出の小槌を振ったタケル君だ。
いやそりゃあ、ある程度大きな物の方が良いとは言ったよ?
間違いなく日本にあると言える物を選べとも言ったよ?
なんで奈良の大仏様を持ってくるかなぁ?
今ごろ、日本で大騒ぎだろ、これ。国宝だぞ。
十五メートル近くの巨大像とはいえ、野ざらしにするわけにもいかず、ちゃんと社を建てました。
マッターホルンに名物がまた増えたなあ。
毎日投稿を続けておりましたが、しばらく週一投稿に切り替えさせていただきます。
ストックが貯まりましたら、また毎日投稿に切り替える予定です。




