149話 ツインドライブ
「どのくらい保つと思う?」
攻撃をすれば、武器も体力も消耗する。
こちらの攻撃に限界が来るのと、神兵が倒れるのと、どちらが早いかと言われれば分が悪いと言わざるを得ない。
「儀式魔術があまり効いていないのが辛いところですね」
あれが一番大きな攻撃だったからなあ。
主攻だったんだろう、おそらくは。
「他に、隠し玉とか無い?」
おそらく各国の上層部に顔が利く面々に問いかけるが、ダメそう。
反応兵器とか無理か。
「よし、タケル君、手を貸してくれ。二人でやろう」
「お、おう判った。何すればいい?」
「ブラックボルダー、ビークルフォーム召喚」
自分の乗るブラックボルダーとは別に、もう一体のブラックボルダーを召喚する。
「お。こっちに乗ればいいのか?」
「いや、君が乗っても動かせないよ?」
石長比売の神通力で動かしてるんだから。
そう告げると、タケル君とついでにユウタ君が肩を落とした。……乗りたかったのかな?
「タケル君の力で、そっちのブラックボルダーを大きくして欲しいんだよ」
「はあ? どうやって?」
神通力は応用力だって言ってるのに、もう。
「打出の小槌で大きくできるはずなんだよ。一寸法師くらい知ってるでしょ。話の最後で一寸法師を大きくしたのが打出の小槌だから」
「お、おう。そうなのか」
そうなんです。
俺の言葉を聞いて、タケル君はブラックボルダーにハンマーを向ける。
「お、大きくなあれ?」
さっきから、おが多いぞ、タケル君。
タケル君が打出の小槌を振るったことで、ブラックボルダーは一回り大きくなる。
「もっと繰り返してっ」
「大きくなーれっ!」
やけくそのように何度も打出の小槌を振るうタケル君。
台詞が緊張感がなくて、ちょっと笑える。自粛、自粛。
小槌を振るう度にブラックボルダーは大きさを増して行く。
「ストップ。それで十分だよ、ありがとう」
そして目の前には巨大なブラックボルダー。
「セットオーンッ」
巨大ブラックボルダーのコックピットへと、俺の乗ったブラックボルダーごと入り込む。
「いくぞぉ。フォームチェーンジッ」
ブラックボルダーはその姿を組み換える。
さて、もちろん石長比売の神通力だけでも、大きなブラックボルダーを作ることは可能だ。
作るだけならね。
でも、動力になるモーターっていうのは、面積で力が増加する。それに対して重量は体積で増加する。
力が寸法の二乗で増えるのに対して、重量は三乗で増加するわけだ。単に大きくするだけでは力負けすることになる。さらには、神石といえど強度の限界というものが当然ある。
しかし、今回は石長比売と大黒天、二人の神様の合わせ技だ。
……多分いけるんじゃないだろうか。……きっと。
「グレートブラックボルダーッ」
立ち上がった巨体は神兵のそれを上回る。
「アースブレードッ」
大地から抜刀する巨大な剣。そこにもまた大黒天のもつ力を感じる。
大黒天のもう一つの側面。ヒンドゥー教におけるシヴァ神の持つ破壊の力。
「バーニングチャージ」
大剣はさらに石長比売の力で赤く変わる。
「バーニングブレード、疾風迅雷突きぃぃぃっ」
グレートブラックボルダーは剣を前に構え、そのまま突貫による攻撃。切っ先の一点に破壊の力を集め、その重量で押し込む。
それは神兵の胸に刺さり、突き抜け、剣の根本まで埋め込んだ。
くおぁぉぉぉぁ。
雄叫びを上げる神兵。その声は……断末摩でも苦痛の叫びでも無い。
そこには意志も感情も感じられない。あるのはただシステムとしての目的だけ。
今そこにある目的は、すなわち敵である俺の排除。
「ヤバい。……脱出ぅぅ」
グレートブラックボルダーのコックピットから通常サイズのブラックボルダーごと緊急脱出。
空に打ち上げられた後、ジェットフォームへと変わる。
その無人になったグレートブラックボルダーへ向けられる神兵の口。そこから迸る光の衝撃。
グレートブラックボルダーは胸から頭にかけてを吹き飛ばされる。
「し、死ぬところだった……」
いやあ、なんか死の予感っていうのに覚えがあって助かったよ。背骨が凍る感じ。




