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その17、作戦を立てましょう。Part2

 「一晩男に見える呪いだぁ?嬢ちゃん何する気だ?」

 「ア、アリシアちゃん!?」

 「まぁまぁ、ちょっと話聞いて。」 


 密猟者曰く、奴は行きつけの酒場によく昼間からいるらしい。職業は漁師ということになってるらしいが、隠れた本職は密猟。密猟後は羽振りが良くなる。周りには良い値の魚が釣れたと言いながら飲んでいるから本職を知っている同業者にはバレバレだとか。


 「それで?どうすんだ。」

 「え?飲み比べして潰そうかと。」

 「アリシアちゃん!!!」

 耳がキーンとするほどレイラに怒鳴られた。


 「だって、1番手っ取り早いじゃない。」

 「あなた女の子なのよ!?」

 「だから男に見える呪いを…どうせ一度顔合わせてて身バレしちゃってるから変装しないと近付けもしないのよ。自分で捕まえるのは譲れないから。」

 「でも…。」


 「それで、潰してからどうすんだよ?」

 「家まで親切に送ってあげようかなぁと。」

 2人が呆れているのが顔を見なくても分かる。


 「それ、意味あんのか?」

 「酔い潰して捕まえるんじゃないの?」

 私もそれは考えた。でも密猟者を捕まえるには現行犯、もしくは目撃とそれに合う証拠品が無いと駄目なのだ。


 「私がそいつの顔を覚えてるって言っても軽い罪で終わるかもしれないじゃない。1、2年で戻ってくるなんて許せないの。だから証拠品ごと捕まえるか懐に入って密猟に着いて行くか…それなら家を知ってた方が良いと思って。証拠品があればその場で捕まえられるしね。」


 「…私は反対よ。酔い潰すのは……百歩譲って良いけど家に着いて行くなんて、危ないわ。」


 「その為の呪いなの。できたら密猟には着いて行きたくないわね。長期になったらエドモンドに呪い沢山頼まなきゃいけないし…一体いくらになることやら。」

 考えるだけでゾッとする。


 「おいおい、呪いも完璧じゃねぇんだぞ?俺は許せて3回までだね。」

 「え、そうなの?それじゃ密猟に着いて行くのは無理じゃない。」


 部屋に沈黙が流れる。




 「だぁー!!!キリねぇな!分かったよ!手伝ってやる!でも呪いは3回までだ、嬢ちゃんの命優先だからな。俺はこんな図体だぜ?他に使う手もあるだろ?」

 頭をガシガシ掻き乱すエドモンドは睨みつけるようにそう言った。


 「エドモンド、ありがとう!」



 「アリシアちゃん…私も手伝うわ。」

 「…え、レイラ!?」

 「私も何かしら使えるかもしれないじゃない。」

 「そんな!レイラは危ないから駄目よ!夜の酒場なんて貴女みたいな美人が来たら大変な騒ぎになるわ!絶対駄目!危ない!」

 私は真剣な眼差しのレイラの手を取り説得した。


 「でも、私だって何かしてあげたいわ!エドモンド様に呪いをかけて貰えば…!」

 「おい、結局俺かよ。」

 それでも彼女の真剣な眼差しは変わることなく私に向けられる。

 父さんに昔助けられたという彼女は返せなかった恩を返す為に忘形見の私に良くしてくれる。…と昔は思っていたが今では友人だ。素直にレイラの気持ちが嬉しい。でも流石にこの件で危ない目に合わせる事は出来ない。


 「レイラ…ありがとう。でもレイラには元々頼もうと思ってた凄く重要な事があって…お願い出来る?」

 「アリシアちゃん……私に出来る事なら何でも。」

 「おい、完璧無視かよ。」

 「ありがとう!!!レイラにしか頼めないの!実はね…。」

 私は鞄から出来上がった地図を出した。


 「これ、もう出来たの?凄いスピードね。最短記録だわ…。」

 「えぇ、チェイスのお陰でね。頼みたいのはこの島の事なんだけど…。」


 「……2人とも案外酷ぇな。」



********



 「という訳で、手続きがとても大変な事は知ってるんだけど、早ければ早い程有難いの。だから役人をせっついてくれない?普通に待ってたら1年じゃ足りないのが目に見えてるもの。」

 「アリシアちゃん、本気なのね。」

 「えぇ、父さん手紙で言ってたから。『自分で決めた道が開けたら迷わない事』って。…今がその時よ。」

  父さんが死んでからずっと自分で選んで決めてきた。旅に出る事も今までしてきた仕事の行き先も。もちろん沢山の人の助けはあった。でも結局自分の人生を決めるのは自分だ。だから望んだ道に行けるのなら全てをかけようと思った。


 「嬢ちゃん豪胆だなぁ。スタンリーってのは皆んなこうだったのか?」

 「少なくともお父様は優しくありながらそうでした。」


 「はぁ〜、なるほど、やっぱり親子か。…いいぜ、全面協力だ。俺はチェイスが楽しく生きていけるんならそれでいい。」


 「2人ともありがとう。とりあえず、何日かかけて綿密に計画しましょう。私も準備しなきゃ。」

 「それなら嬢ちゃん夜にここ集合な。」

 酒を飲み、もぐもぐとディナーを咀嚼しながらエドモンドは言う。


 「でもここお店じゃない。迷惑かけれないわ。」

 「はっ!そんなの俺がいる時点で皆んな諦めてっから大丈夫だよ!はっはっは!!」

 全然笑えないんだけど…。でも有難い。


 「じゃあ宿とるならここから余り近くない方が良いわね。バレたら困るし。」

 「今晩はどうするの?」

 「そうね、いつもならもう宿にいるんだけど、せっかく18になったし酒場にでも行こうかな。」

 「だ、駄目に決まってるじゃない!!!」

 またレイラに怒られた。


 「嬢ちゃんそりゃ怒られるわな!お前自分の容姿分かってねぇのか?」

 「そうよ!昔からずっとそう!貴女可愛いんだから絶対駄目よ!それこそ危ないわ!」

 2人にそんな事を言われて困惑する。


 「え、でも特に目立つような髪色でも瞳でもないし大丈夫だと思うんだけど。」


 「「はぁぁぁ〜。」」


 そして盛大なため息を吐かれた。

 この日は結局レイラの実家で一晩だけお世話になる事になった。


 翌朝、実家を後にしてレイラと共にギルドへ来た。彼女は仕事だが、私は地図作成の報酬を貰うために。

 仕事を請け負う時に知っていた事だったけど、報酬額は3ヶ月分の宿代を払える額だった。

 因みにこれでも半分しか貰っていない。理由は地図に間違いがないか役人が島に確認に行き最終的にOKが出たら残りの半分を貰える仕組みになっているから。


 「ずっと居てくれても良いって皆んな言ってくれてるのよ?」

 レイラの優しい両親は宿を決めていない事を知るとこの家に居ればいいと言ってくれた。妹だって懐いてくれて家を出る時にはまた来てと何度も言ってくれた。

 「ありがとう。でも流石にいつ迄になるか分からないし、相手は1人だけど万が一の事があったら私が嫌だから。」

 「そう…でも、いつでも助けになるから困ったらギルドでも家でもいつでも来てね。例の事は任せて、最短でやってみせるわ。」

 「レイラ、本当にいつもありがとう。よろしくお願いします。」

 頼もしい友人に頭を下げて私は街へ出た。目的は宿とショッピングだ。


 庶民の住む場所は南と西へ広範囲に広がっていて更に西へ行くと森がありそこから隣町への道が伸びている。

 目的の宿があるのは富裕層が住んでいる北西地区の手前にある。港周辺の宿よりは高いが港には私の船が堂々と停泊してあるらしい。そんなとこで暮らしたら奴と鉢合わせしかねない。

 そういう訳もあって朝食と共同風呂付きの宿を借りた。とりあえず2ヶ月、お金を払う時に明らかに怪しまれたけど、支払ったら和かになった。…そんなものよね。

 こじんまりとした部屋にはベッドとテーブルに椅子、それと鏡。荷物を置いてレイラの妹(因みに14歳、レイラのは丈が長かった…)に借りた服に着替え、軽く化粧をする。これで街で買い物しても目立たない上に冒険の時とは雰囲気が全然違うから中々気付かれないはず。

 因みに自分の服は全て船の中だった。…無事だと良いなぁ。


 とりあえず、遠目からでも船を確認しに行くことにした。商店街はどうせ港にあるから避けて通れない。さっさと買い物して戻ってくるつもりだ。

 そして港に着いて私は直ぐに自分の船を見つけた。他の船とは小さなマークがある以外特徴はないが相棒だからね、遠くからでもすぐ分かる。


 「絶対取り返すから待っててね。」

 手に力を込め気合を入れた。


 商店街では着替え数着と「弟にプレゼントする」という嘘をついて男物の服を買った。

 あと秘密道具の材料。

 今回は臭くする必要はないから目潰しを作る予定だ。他にも麻痺するのとか作りたかったけど、この国じゃ手に入らない材料が殆どで、それも全て船の中だった。

 

 買い物を終え食事も済ませてから宿に戻った私はベッドに寝転んだ。


 「疲れたー…今頃チェイス何してるかなぁ。」

 想像してみても浮かぶのは無表情の彼だった。


 「見事に全部無表情だわ、凄いわね。ふふっ。」

 でも、次に思い浮かんだのは告白したあの時の泣き顔、そして微笑み。


 「あー、会いたいなぁ。想いを伝えて直ぐに離れちゃうなんて…だから本当は戻ってからにしたかったのに!チェイスちゃんと気持ち分かってくれてるかなぁ。」

 取り留めなく独り言が溢れ出る。


 今夜からは半年ぶりの独りだ。近くに誰もいないという事に寂しさを感じる。

 「前はこれが当たり前だったのに…。」

 随分と彼との生活に馴染んでしまった。


 「大丈夫、順応力だけは高いからまた慣れるわ。……そろそろエドモンドに会いに行かなきゃ。」


 起き上がってワンピースのシワを伸ばす。

 そして比較的治安の良い富裕層の通りを歩いてバトラー商会へ向かった。

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