8話 婆さんのピンチ
前回までのあらすじ
失踪した次男坊、武雪を追って異世界へ降り立った宇蔵、鈴は10年前に現れた英雄「武雪」が自分達の息子だと知る。
その時、マーケットから女の悲鳴が聞こえたのだった。
8話 婆さんのピンチ
「あっちの方じゃ!!」
俺と鈴、ルナは悲鳴が聞こえた場所に向かって走っていた。裏通りの近くまで来たところで、炎を纏った虎が現れた。
「あれはタイガーフレイム!?どうしてこんな街中に!」
「そいつは俺たちのペットだ、ククク」
タイガーフレイムの後ろから、薄汚い男たちが現れた。
「こいつを使って、俺たちを見下してきたこの国の連中どもを皆殺しにするんだよ!!いけっ!」
男が虎を蹴る。するとタイガーフレイムはこちらを目掛けて炎を吐き出した。
俺とルナはそれを交わしたが、婆さんはこれまでの疲れか足が動かず、炎を浴びてしまった。
「婆さん!!」
「ハハハハハ!婆が焼け焦げていくぜぇ!可哀想だなぁ?」
男はそう笑った。
「貴様ぁ!」
俺が男を目掛けて飛びかかる。
しかし、タイガーフレイムが俺を弾き飛ばした。
「ぐぅ!!」
なんという力だろうか。
俺は壁まで吹っ飛ばされた。
「宇蔵さん!」
ルナが駆け寄る。
そして回復呪文「ヒール」をかけてくれた。
婆さんはまだ燃えている。
そこへ聞いたことのある声が聞こえた。
「お前ら!何やってんだよ!」
わしが後ろを振り向いた時、そこにいたのはワニーノだった。
「ワニーノ…見たら分かるだろ?復讐だよ」
「そこのご老人が何したってんだ…何もしてねぇだろ!」
ワニーノが燃える婆さんを指差し激昂する。
「チッ、うるせぇなあ。お前も燃えちまえ!」
男はタイガーフレイムを蹴ろうとした。その時
「入れ歯キャノン!!」
燃えていた婆さんから、男を目掛けて入れ歯が飛んでいった。入れ歯は男に命中し、男は悶えて苦しんだ。
「せんねん灸で鍛えたわしに、炎は効かんと思え!」
婆さんは農作業の疲れを癒すために、せんねん灸を愛用していた。それがこの世界では炎無効スキルへと変化していたのだ。
「爺ちゃん!」
「任せとけ!」
爺さんはリュックサックからロープを取り出した。
「縛り付ける…」
爺さんはタイガーフレイムを飛び越える。
飛び越えた後、タイガーフレイムは地面に縛られていた。
「ちょうせん結び…!」
「うおおおおおおお!」
ワニーノとその子分達が、タイガーフレイムを操る男を抑え込み、この事件は幕を閉じたのだった。