17話 水都の戦い
これまでのあらすじ
名が無い虫人族の少年、獣人族のヒデリ、ウォーターシティ第3王子のアクアはこの国を脱出するための計画を実行しようとしていた。
17話 水都の戦い
タッタッタッタッ…!
僕、ヒデリ、アクアの3人は走っていた。
第3王子から伝えられた計画はこうだ。
①…第3王子が一際信頼を置いている兵士に時間稼ぎをしてもらう。これは現在進行形で行われている。
②…王族しか知らない秘密の抜け道を使い、潜水艇ターミナルへと向かう。
③…ターミナルのスタッフを1人捕まえて逃げる。
「本当にうまくいくんでしょうね!?」
ヒデリがアクアにそう言うと
「ハッハッハ、ほぼ確実に失敗するだろうな」
とアクアは笑った。
「お主らは捕まったら処刑は免れないだろう、さぁ走った走った!」
「ヒデリ、ここは走るしかないよ」
僕たちは抜け道に向かって走り続けた。
途中何人かの兵士に気づかれたが、アクアがいとも簡単に倒していった。
兵士を倒しながら3人が走り続けていると、
「あったぞ!!」
アクアが叫んだ。
「何もないじゃない!」
ヒデリが驚きの声をあげる。
「隠蔽魔法で見えなくしてあるのだ、さぁ行くぞ!」
僕たちは走る足をさらに早めた。
しかし、僕たちが抜け道に辿り着くに人影が現れた。
「王子…困りますぜ」
先ほどアクアを守っていた低い声の大男が、1人の男を捉えて立っていた。
「しくじっちゃいました、王子」
「リヴァ!!」
アクアの様子を見ると、捕まっているのは王子の協力者だと考えられた。
「さぁ王子、帰りましょう。そこの2匹の処理は俺がします」
大男は武器を構えた。
「すまない、少年にヒデリ。どうやらここまでのようだ」
アクアは俯きそう話した。
「相手はこの国でも屈指の武人。頼りにしていたマーリンも捕らえられた」
「そんな、じゃあ僕たちは…」
僕とヒデリは地面に座り込んでしまった。
自らが死から免れないと分かってしまったからだ。
アクアはそんな僕たちを見て、小さく笑った。
「安心しろ。ここまで面倒をかけて、そう簡単に見捨てるものか」
アクアは背中に掛けていた細長い袋から1本の槍を取り出した。そして大男に槍を向け問うた。
「この2人の処罰を無くす、又は軽くすることは出来るか?」
大男は驚いた様子を見せたが
「いくら王子でも、その命令は聞けません」
首を横に振った。
「そうか…ならば…」
アクアはギュッと槍を握った。
「力尽くで押し通す!!」
アクアは大男に突進した。
槍を簡単に弾き返す大男。
それでもアクアは一心不乱に槍を奮った。
「やめてください。敵うはずがないと王子も分かっているでしょう」
槍を払いながら、大男は話した。
「お主が2人の処罰を止めるなら!今すぐにでも…槍を収める!」
アクアの渾身の振り下ろしも
「はぁ…」
大男に軽くあしらわれた。
「分かりました。王子がそこまで言うのなら」
大男は武器を収めた。
「おぉ!分かってくれたか!」
「王子の心を惑わす邪魔な2匹を片付けてから話しましょう」
大男は僕とヒデリを目掛けて走り始めた。
「や、やめろ…!彼等は俺がそそのかしただけなんだ…!」
「後で話しましょう、王子」
アクアの顔が青ざめていき、大男の巨体が間近に迫ってくる。
「ヒデリ…」
ヒデリは下を見て泣いていた。
「ごめん…ごめんね…。私が巻き込んだから…」
「ううん、大丈夫だよ」
僕はヒデリを撫でた。
立ち上がりヒデリを庇うため、両手を広げた。
「どうか、ヒデリだけでも助かりますように」
「そんな体で、俺の突進が防げる訳ねぇだろお!」
「くら…あ?」
大男の足に何かが飛んでいき、大男は転げて止まった。
「なんだこれ。短剣…だとぉ!?」
大男は憤慨した。
「誰だ!誰が投げやがった!出てこい!今すぐに殺してやる!」
「見てるだけのつもりだったんだがな…」
短剣を投げたのは、僕たちに情報をくれた強面の情報屋だった。
「少年、ヒデリ後そこの王子、よく頑張ったな」
「後は…」
情報屋は短剣をもう1本投げた。
それは大男では無い、もう1人の兵士リヴァへと。
短剣はマーリンを縛っていた縄だけを切り裂いた。
「大人達に任せな」
情報屋が短剣を構えてそう言った。
縄を解かれたリヴァは立ち上がり
「感謝します」
一瞬で情報屋の元に移動し礼を言った。
「そんな事より仕事しろ」
情報屋は、礼などどうでもいいといった様子だった。
「えぇ、もちろんです」
リヴァは詠唱を開始した。
「水よ来たれ、この者の力を増幅させよ」
情報屋は短剣を握り、構えた。
「アクアビート!!」
「はぁああああ!!!」
大男と情報屋の剣技の応酬が始まった。
「さぁ、今のうちに」
リヴァが3人を抜け道に誘導した。
「あ、ありがとう」
僕が礼を述べると、リヴァはニッコリと笑い
「ご武運を。アクア王子を頼みましたよ」
と言って戦場へと戻った。
3人はターミナルを目指してもう一度走り出した。




