第一話彼女がネットゲームをする理由
注意
題一話はシリアスムードで進行していきます。おふざけなしですので、お気をつけください。
指摘がありましたので改行などをいれてみました。
「おい。お前いい加減に帰れよ」
思わずイライラして彼女に言った。
「……」
「お前聞いてんのかよ。おい!」
彼女の背中に今自分が読んでいた漫画の本をぶつけた。彼女はしかたなくこちらに顔を向けてきた。
「何? 今狩りの最中で忙しいんですけど」
そう言うと彼女はまたパソコンに向かいだした。なんてやつだ。
彼女前田里美は今ネットゲームに夢中だ。彼女は自分の幼なじみなんだが、ある日泣きながら自分のアパートまでやってきた。どうやら彼氏に振られたらしい。自分はまた始まったかと思って、彼女が泣き止むまで話を聞いてやった。ひとしきり泣いた彼女は自分に向かってこう言ってきた。
「私これから何を目標に生きて行ったらいいのかな?」
濡れた目でそんなことを言ってきた。これは彼女のいつものパターンだ。今までならまたいい人見つければいいんじゃない?とか学生なんだから勉学に打ち込めばいいんじゃないかな?とか部活だよ。部活。運動していい汗かけばいいじゃない。もしかしたらプロになれるかもしれないし。などとそのつど変えつつアドバイスしてやった。しかし、もうネタ切れだし、正直もう面倒になってきた。自分は思いつきでそのころはまっていた。ネットゲームを勧めた。丁度一緒にやる相手も欲しかったので丁度よかったからだ。
それで今の状態だ。ネットゲームなんだから自分のアパートまで来ることないんだけど彼女はなぜか自分のアパートでインする。おかげで自分はノートパソコンでインする羽目になっている。
「おい。もう二時だぜ。いいかげん帰った方がいいんじゃね? 親心配するでしょ」
「うちの親知ってるでしょ。仕事、昼夜逆転してるから夜はうちにいないし、居ても私のことな
んて気にしないよ。それに悠一のところにいるって言えば別に問題ないしね」
お前に問題なくても俺に問題あるんだよと思ったけど、言い合いしてもこいつが聞くたまじゃないことは十分知っていたので諦めることにした。
「じゃあ俺寝るからな。適当にして止めろよ? 帰るならシャットダウンして帰れよ」
「……。うん。おっけ。ちゃんとしとくから寝てていいよ。はい。おやすみぃー」
腹は立つがいちいち腹を立てていたらきりがないので寝ることにした。部屋にはカタカタとキーボードの音とマウスのカチカチ音がしたがもうすっかり慣れてしまったので特に気にはならなかった。まさかこんなにはまるとはな。自分にも責任あるかな。どうするかな。なんて考えていたらいつのまにか眠ってしまっていた。
朝、起きたら彼女はいなかった。代わりに自分のパソコンの画面に「帰るから」と短くメッセージが残っていた。彼女は明け方近くまで自分のアパートにいて家に帰ってから寝て、それから学校に来るみたいだった。いったい何時間寝てるんだか。
自分も適当に準備して学校に向かった。学校に来たが彼女はいないようだった。彼女はいつもぎりぎりに学校に登校してくるからだ。
「おはよ」
どうやら彼女が登校してきたみたいだった。彼女は友達と少し話してから自分の席に座った。そこで彼女は自分の方に少し視線を向けてきた。自分は頷き返して返事をした。自分と彼女は基本学校ではほとんど会話することはない。別にわざとそうしている訳ではないがいつの間にか自然とそうなっていた。
授業が始まると彼女はこっくりこっくりとしだして彼女は眠り始めた。一応授業を聞く気はあるらしく。時折起きるのだが、結局授業中はほとんど寝てしまうみたいだった。先生も始めは、注意していたが、いくら注意しても改善しないので今では諦めてしまったようだった。それは彼女の成績がクラスの上位でもあるということも要因であるのかもしれない。
昼休みになると彼女は起きだして何人かの友達と学食に食事しに行った。自分は彼女が行ってしまってから、彼女の席に今日の午前中のノートを置いてやった。自分も友達と教室で食事をした。
ほどなくして彼女が教室から一人で戻ってきた。彼女は視線を自分に向けてきた。自分は頷き返した。彼女は席に座ると自分のノートを写す作業をしだした。始めは彼女が授業中眠ってしまうからノート貸してくれというやり取りがあったのだが、今では洗練されてきて、すっかり今の状態になってしまった。
午後の授業が始まると彼女はまた、眠りだした。先生ももはやスルーしているようだった。いまや授業の一風景として定着してしまったようだ。午後の最後の授業が終わって先生が教室から出て行った。そこで自分は彼女の席に行って午後の分のノートを彼女の席まで持って行った。彼女はほとんど寝ているので自分は起こさないように机の脇の床に置いた。始めの時は机の空いてるスペースに置いていたのだが、彼女が身じろぎするとノートが机から落ちてしまうのでどうせ落ちてしまうならと思って今では床に置くことにした。
帰りのホームルームが始まって先生が入ってくると彼女は後ろの席の友達に起こされていた。さすがにホームルームは先生も聞いてもらわないと困るみたいで寝ていると彼女は起こされた。今では後ろの席の川原さんだったかな?が彼女を起こす役割になっていた。
ホームルームでは簡単な連絡事項が伝えられた。なんだか変質者が出ているとか、風邪がはやっているから気をつけろとかそんなことだった。最後に先生は彼女を見てこういった。
「それと前田。睡眠はちゃんと取るんだぞ」
彼女は起きてはいたがまどろみの中にいたみたいで自分に言葉が向けられていることに気付いていないようだった。後ろの川原さんだったかが彼女に声をかけて気付かせてやっていた。
「あ。はい……」
先生はなんだか煮え切らない顔をしていたが、まあ言うことは言ったからいいかみたいな顔をしてホームルームを閉じて教室から出て行った。前は毎日のように言っていたが、今では何日かおきに思い出したようにこのやり取りが行われるようになった。
ホームルームが終わると彼女は午後の分のノートを取り出した。彼女は友達に挨拶しながらノートを取っていた。もうすっかりこのパターンになったので友達も特に気にしていないようだった。思い思い帰りだしたり、部活に行った。自分は特に部活とかに入っていないので友達の内藤君と帰りにゲームセンターに行く約束をしていたので帰ることにした。彼女を見ると彼女は一心にノートを写していた。今度は視線が合うことはなかった。
内藤君とゲームセンターに寄って、それからゲーム屋に行って新作ゲームをチェックして自分のアパートに帰った。
帰ると彼女はパソコンに向かってゲームをしていた。前は部屋の前で自分の帰りを待っていたのだが、ずっと待っていられるのも困るので彼女に部屋の隠し場所を教えて、自分が帰って来てないのなら勝手に入ってるようにと言ってやった。彼女は最初、断ったが部屋の前で待たれる方が困るよと言うと彼女はそれもそうねと言って自分の申し出を素直に受け入れた。ちなみに鍵の隠し場所はポストの中だ。中にもう使わないダイレクトメールを入れて置いてその下に置いた。
「ただいま」
自分は一応挨拶をした。
「ああ。おかえりー」
彼女はうつろな表情でこちらに表情でこちらに顔を向けてきて言った。そういえば最近彼女の笑った顔を見てないかもなとちらっと思った。
「どしたの?」
自分が彼女を見ながら黙っていたので彼女が聞いてきた。
「いや。なんでもないよ」
「そう。まあ別にいいけど」
彼女はどうでもよかったらしく特に追求はして来なかった。またパソコンの画面に戻っていった。今日はどうやらギャルゲーをしていた。
自分はとりあえずノートパソコンの電源を付けて、テレビを付けて、パソコンが立ち上がるまでテレビを見ていた。アニメの再放送をやっていた。自分は特に見たいとは思わなかったが他の番組も特に見たいものがあるわけではないのでそのアニメを見ていた。
彼女は彼女でペットボトルのジュースを飲みながら文字を追っていた。 自分たちは基本、特別会話はしなかった。ゲームのことで聞かれたら答えるとかその程度のことだった。彼女も自分にも会話を望んでいる訳ではないので、自分も特別お喋りではないので会話はあまりしなかった。
見ると彼女はギャルゲーには飽きたようでネットゲームを始めていた。彼女は友達がインしていたようでチャットしていた。最近のこいつを見てるとなんだが不安になってくる。なんだか彼女が友達と話をしているところをみていると普通なんだが、俺といるときは感情に乏しくて、口数も少ない、まあゲームやってる時なんてそんなもんだろうけど、ちょっとこれからのこいつのことが心配になってきた。
「おい。里美。ちょっといいか?」
「ん。なに?」
彼女はこちらを見ずに返事してきた。まあチャット中だから仕方ないだろうからそのまま自分は話を続けることにした。
「あのさあ。俺が言うことじゃないかもしれないけどさあ。お前最近大丈夫か。あんまり寝てないみたいだしさ。ゲームちょっと控えた方がいいんじゃないか?」
「うん。あんたが言うことじゃないね」
彼女は即答してきた。確かに俺が言うことじゃない。俺はゲームしかやらないからだ。睡眠時間を削ってやるなんて日常茶飯事だし。
「まあ。言いたいことはわかるよ。確かにちょっとやりすぎかなって気もするけど。でもね。
ゲームやってると他のこと考えなくて済むからさ。いいんだよ。別にゲームじゃなくてもいいだよね。なんだってさ。なんかやっていたいのよ」
彼女はこんなことを言い出した。確かに頷けることは多い、自分もそうだし、わかるけど彼女は元々、こっち側の人間ではないのだ。ちょっと気がまぎれるかなと思って軽い気持ちで勧めてみたけど、このような状態になったのは予想外だったので、ちょっと罪悪感がよぎった。
「なんかさ。俺が勧めたからさ。返って悪いことしたかなと思うのよ。最近、お前ゲーム始めてからほとんど他の友達と付き合わなくなったじゃん」
彼女はキーボードで文字を打ちながら唸っていた。なにやら考えているようだった。
「あんたに私がどういう風に見えてるのか知らないけど、別に他の友達とはちゃんと付き合ってるよ。朝は会話するし、お昼は一緒するし、メールはしてるし、電話もしてるよ。それに私はこれ好きでやってるんだからあんたが罪悪感感じることなんてないよ」
「まあ。そうなんだけどよお……」
彼女はその間もキーボードを打ち続けていた。画面の中では会話が交わされていた。よくリアルとゲームとで同時進行できるな。いいアイテムが落ちる狩場の話とかをしているようだ。
「まあ。確かにやりすぎかもね。わかった。じゃあ今日は帰って寝るからそれでいいでしょ」
彼女はがばっと勢いよく立ち上がると荷物を掴んで出て行こうとした。
「私はね。あんたに感謝してるんだから、勝手に悪いなんて思わないでよ。でも心配してくれてるのはうれしいよ。ありがとう。ちょっとここ来るのこれから控えるから、あんたに心配されるくらいだからよっぽどおかしく見えるんだろうからね。じゃあおやすみ」
彼女は一気にそう行ってアパートから出て行った。彼女は次の日予告通り自分の部屋に来なかった。
ネットゲームと女の子について書いて見たかったので書いて見ました。