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ネトゲ女  作者: kaji
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第二話彼女がゲームにはまる理由

  前田里美は俺のアパートに来なくなってからも生活のリズムは変わってないようだった。ぎりぎりに登校して、適当に話をして、席に座った。こちらに視線を少し寄越すのはいつも通りだった。俺もいつも通りに返していた。

 

 もちろんノートの貸し出しもいつも通りに行った。全てがいつも通りであったが、変わったこともあった。それは彼女と会話することがほとんど皆無になったということだ。元々彼女とは教室外での付き合いしかなかったので、教室外で会うことがなくなった今彼女と会話することがなくなったのだ。もちろん会話しようと思えばできるわけだが今さらこちらから話しかけて会話するのもなんだか照れくさかった。あちらも俺に対してはそういったことは望んでいないように思えた。 とにかく彼女は今まで通りだった。ただ俺のアパートにはあれ以来訪れることはなかった。

 

 変化があったのは彼女が来なくなってから十日ほど経った頃だった。彼女が風邪で休んだからだ。今までぎりぎりに来ることはあっても彼女は遅刻はもちろん休むこともなかったので俺は少々驚いた。俺はなんだか胸騒ぎがして、学校が終わると内藤君の誘いを断って早めに返ることにした。ごめん内藤君エアホッケーは今度やろう。

 

 アパートに帰ると早速パソコンを起動させた。今日はなんだがいつもより立ち上がりが遅い気がした。もっといいパソコン買ったほうがいいかなと思ったがもちろんそんなお金はどこにもないので思うだけにしておいた。パソコンを立ち上げるとオンラインゲームのアイコンをクリックして起動させた。『ファンタジークエスト』というRPGのオンラインゲームだ。好きなキャラを選んで育てて、レアなアイテムを拾ったり、ギルドというグループみたいなところに参加して他のグループと対戦したりするなどをしたりするゲームだ。今では似たようなゲームがいっぱいあるが俺はこのゲームを友達に誘われてやり始めてはまった口だった。今では自分のギルドなんて持っていたりする。まあそんなことはどうでもいいのだが彼女のたぶん風邪とかなんとか言っていたがたぶんここにいるんだろうと思ってインして見た訳だった。

 

 俺はメニューを開いて友達リストを見てみた。彼女ことも友達の登録をしてあったのでインしていればこれでわかるはずだった。ちなみに俺のキャラの名前は「ケミカルパンク」だ。名前を付けることが苦手な自分はなんとなくネットの検索を見ながら目に付いた適当な文字を繋げて付けたという適当な名前だ。それで彼女のキャラの名前なんだが「ねんねここねこ」という名前だ。なんだか早口言葉みたいな名前だが、彼女はその名前を付けたようだった。


「えーと。ねんねここねこ。ねんねここねこ。ねこねここねこっと」


一人でやっているといつの間にか声が出てしまうことがある。誰もいないからいいのだが、傍から見るとかなり異様に見えるだろう。気をつけないといけない。


「お。いるじゃねえかよ。あの野郎。シカトしてやがんな。あいつめ」


おそらく彼女の方も俺がインしてきてるのはわかっていると思う。まあ最近は自分も特に用がない限りはネット上でも会話しないから仕方ないのだが。


 友達リストから調べてみるとどうやら狩をしているらしかった。基本アイツは一人を好んで狩りをするやつなのでたぶん今日も一人で黙々と狩りをしているのだろう。俺はやつに個人用のチャットのメッセージを送った。



ねんねここねこ様へ   おい。何やってんの?

ねんねここねこ様へ   おい。無視すんなよ。何してんのって聞いてんだけどー

ねんねここねこ様から  何?

ねんねここねこ様へ   何って。まあいいや。今日学校休んだみたいだからどうしたのかなと思ってさ

ねんねここねこ様から  風邪って言ってなかった?

ねんねここねこ様へ   ああ。風邪って言ってたよ。でもお前まず休まないじゃん。珍らしいなと思ってねえ

ねんねここねこ様から  私だってそういう時あるよ。鉄人じゃないんだから

ねんねここねこ様へ   まあなんともないんだったらいいんだけどね。程ほどにしとけよ。

ねんねここねこ様から  お前が言うな。視ね。ばーか



どうやら元気のようだった。余計な心配だったな。俺はチャットを打ち切って適当に何かいいアイテムが売ってないか見て回ってから。「ねんねここねこ」に「ああああ」を千文字送ってやって急いでログアウトとした。ざまあ見やがれ。


 腹が立ったので、俺は里美という名前のキャラを攻略してやることにした。どこで間違ったのか最後は刺されて殺されてしまった。


『これであなたは一生私のものね』

「……。寝るか」


 俺は寝ることにした。いい夢が見れますように。


 次の日も彼女は学校には来なかった。担任の話では風邪らしかった。


「まさか。あいつ本当に引きこもったんじゃねえだろうな」


放課後彼女の家に行くことにした。ノートも溜まって来るから一回行ってみるか。俺は昨日と今日の分をコピーして彼女の家に向かった。内藤君ごめん。今日もエアホッケーできそうにない。


 彼女の家は俺のアパートからはそんなに離れてはいなかった。俺は久しぶりに彼女の家に来たような気がした。いったいいつ振りだろうか。とにかくインターホンを押した。


ピンポーン


少し待って出てきたのは彼女の母親だった。こちらが名乗ろうとしたら彼女の母親の方が先に口を開いた。


「あら。もしかしてゆーくん?ゆーくんだよね。へえー。大きくなったわねえ。最近全然来てく

れないからおばさん寂しかったわよ。それで、もしかして里見に会いに来たの?そうでしょ」


彼女の母親は全然俺に喋らせてくれなかった。口を開こうとしたらまた遮られた。


「あ。ごめんね。私これから仕事に出なければならないのよ。悪いけど勝手に上がってね。里美なら部屋にいると思うから。じゃあね。また今度ゆっくり来てね」


彼女の母親は急いで出て行った。結局俺は一言も喋れなかった。


「変わらないな。おばさんも変わったのは皺の数だけか」


おばさんが行ってしまって、思わず独り言をもらした。


「あ。そうそう。あのね。里美ね。最近全然部屋から出て来てくれないのよ。ちょっと相談に乗ってくれない?」

「お。おばさん!? もう行ったんじゃなかったんですか」


彼女の母親はなぜか戻って来ていた。


「言い忘れたことがあったことがあったから戻って来たのよ。悪いけどお願いね。私も暇が無くて全然里美の相談に乗ってあげられなくて、ゆーくんに引き受けてもらえれば助かるわ」

「わ。わかりました。とりあえず相談くらいには乗れるとは思うので、話聞いてみます」

「じゃあお願いね」


彼女の母親は再び慌しく出て行った。


「ふう。なんか一気に疲れたな」

「あ。それとね。女性に対して皺が増えたなんて言っちゃだめよ。じゃあね」


どうやらまた戻ってきたらしい。さっさと仕事行けや。


 階段を上って2階まで来た。確か2階に彼女の部屋があったはずだ。昔の記憶を頼りに奥に進んだ。彼女の部屋は見つかった。ドアの前に里美の部屋というプレートが掛かっていたので間違いないと思う。ドアにはホワイトボードが掛かっていて、赤い字で『勝手に部屋に入るべからず。無断で入るもの、滅殺』と書いていた。『滅殺』の字には炎のように赤で囲んでいた。いらん演出しやがって。

とりあえずノックすることにした。


「おい。里美いるか。生きてるなら。返事しろ」

「……」


返事は返って来なかった。いないわけは無いので強行突破して入ることにした。ドアのノブに手をかけて開けることにした。


ガッ


どうやら彼女の部屋には鍵が掛かっているようだった。なめたまねをしやがって。


「おい。里美。開けろ。ありがたくも俺はお前のために授業のノートのコピーを持って来てやっ

たんだぞ。返事くらいしてやってもいいんじゃないのか」


返事は返って来なかった。もう一度呼び掛けようとしたら部屋の中から声が聞こえてきた。よく聞き取れなかった。


「あ!? なんだって聞こえなかったからもう一回言ってくれ」

「今は出たくないって言ったのよ!!」

やたらとでかい声で怒鳴られた。そんな元気があんならさっさと出て来いよ。

「なんで今は出たくないんだよ。理由を言え。理由を」

「だからあ。私今化粧してないし、髪ぼさぼさだから出たくないのよ。そのくらい分かってよ」

「俺は気にしないぞ。大丈夫だから。ここ開けようぜ」

「私が気にするのよ!! いいからノートのコピーだけ置いて帰ってくれない? お茶も出せなくて悪いけど」


彼女はものすごく迷惑そうだった。せっかくノート持って来てやったのによ。


「昨日チャットでいたずらしたことで怒ってるんなら謝るからさ。ここ開けてくれよ。ほらファンタジークエストについて語りあおうぜ」

「そんなことで怒ってるはずないでしょ。代わりにあんたから借りた装備売ってやったからもうどうでもいいし。話があるならチャットで聞くから帰ってくれない?」

「ちょ! ああ……。わかった。今日の所は帰るわ。帰ったら覚えておけよ。PKしてやっからな。くそ。うわあああん」


どうやら彼女は出てくる気がないみたいなのでノートのコピーだけ置いて帰ることにした。怒りが収まらないので。ホワイトボードに『ウェルカム!! お気軽にお部屋にお入りください』と青いペンででかでかと書いてやった。


 アパートに帰ってファンタジークエストにインすると彼女はいなかった。同じギルドの仲間の惨劇のクマさんにねこねここねこさん見なかったかと聞くとどうやらさっきログアウトしたらしい。もしインしたら俺が探していたと伝えて欲しいことを頼んで、俺はログアウトすることにした。


 腹立たしいので、再び里美を攻略することにした。里美がデレてから突き放す選択肢にしてやった。


『あなたが私のものにならないなら私はここから飛び降りるわ』

『早まるな。俺が悪かった。頼むからこっちに来てくれ』

『あなたはいつもそうやって私を乱す、私、もう耐えられない。じゃあね。』

『さ。さとみぃぃー!!』

「……。何だこれ。寝るか」


俺は寝ることにした。いい夢が見れますように。

 彼女は次の日も来なかった。ついにこれは決定的だろうと思って俺はある決心をした。


「アイツを部屋から引きずり出してやる」


俺はホームルームが終わると内藤君の誘いを断って真っ先にアパートに帰った。内藤君ごめん。今度お詫びに欲しがってた初回限定の里美のポスターあげるからさ。俺はもういらないからさ。


 アパートに着くと早速パソコンは付けた休止状態にして置いたのですぐゲームを起動させることできた。あいつはいた。む。今日は猫猫子猫でいるみたいだ。



猫猫子猫様へ   おい。話がある。返事しろ。

猫猫子猫様から  何?まず挨拶くらいしたらいいんじゃない?この世界じゃ常識でしょ

猫猫子猫様へ   こんちゃあー。これでいいだろ

猫猫子猫様から  はいはい。こんにちは。で何? 私忙しいんだけど

猫猫子猫様へ   何が忙しいだ。ゲームばっかりやりやがってこの廃人が。いいから今日は逃げずに聞けよ。

猫猫子猫様から  何ふざけたこと言ってんの。そんなこと言うなら私落ちるわよ。

猫猫子猫様へ   ああ。ごめんなさい。ごめんなさい。ちょっとだけでいいから話聞いて欲しいんだけどー

猫猫子猫様から  わかったわ。で何?早くして欲しいんだけど。

猫猫子猫様へ   まあ何があったか知らないけどさ。学校来いよ。お前さ。

猫猫子猫様へ   おい。聞いてる? 学校来いって言ってるんだけど。

猫猫子猫様から  あんたには関係ないんじゃないの。なんの権利があってそんなこと言ってるのか知んないけどさ。

猫猫子猫様へ   権利とかそんなんじゃなくてさ。ほら俺お前の親からも頼まれてるしさ。とにかく学校来いって。

猫猫子猫様から  は!? なんでここで親が出て来るのよ。関係ないでしょ。親は。何? あんたは親に頼まれたからこんなことしてんの?

猫猫子猫様へ   そんな訳ないじゃねえかよ。まあなんつうか。心配なんだよ。前にも言ったけど俺がこのゲーム紹介したからさ。ちょっと罪悪感あるんだよね。

猫猫子猫様から  あんたね。何回言ったらわかるのよ。分かんないなら何回でも言ってあげるわ。これはあんたの所為では全くないから心配しなくていいし。私のことも放っておいて。

猫猫子猫様へ   お前本気でそれ。言ってんのかよ。

猫猫子猫様から  そうよ。だから放っておいて、私のことは気にしないで。頼むから。

猫猫子猫様へ   じゃあ仕方ないな。俺は奥の手を使わせていただくことにする

猫猫子猫様から  奥の手? 何言っての? ゲームのやりすぎでおかしくなったんじゃないの?

猫猫子猫様へ   お前さ。俺。お前がこのゲームのアナカウント取る時手伝ってやったよな?

猫猫子猫様から  それが。どうしたって言うのよ? 今さら恩着せてもしょうがないじない。

猫猫子猫様へ   別に恩着せようとかそういうことではないよ。ただアナカウントを取る時手伝ったと言うことは俺はお前のIDとパスワードを知ってるんだよね。

猫猫子猫様から  あ。あんたね。どうするつもり。まさか消すつもりなの?

猫猫子猫様へ   そんなもったいないことはしないさ。ただ。身売りでもしたら高く売れるだろうなーて思っただけでさ。町で募集すればすぐだろうなあ。お前最近頑張ってるみたいだからさ。

猫猫子猫様へ   ん。どした? 俺は別に悪いようにはしないよ。ただ提案したいだけだよー。

猫猫子猫様から  だ。ダメ絵ええええええええええええええ絵ええええええ絵ええええええ絵ええええええ絵ええ絵ええええええ絵えええええええええええええええええええええええええええええ。お願いなんでもするからそれだけはやめて。私もうこれしかないのよ。お願いだからそんなことしないでお願い。

猫猫子猫様へ  お。おい。落ち着けってだから悪いようにはしないって言ってるじゃないかよ。そうだ。学校に来るのが嫌だったらうちに来いよ。ほら。よくあるじゃん。保健室登校とかさ。保健室来る代わりにうちに来たら良いって。アパート好きに使っていいからさ。家の中にずっといるのはやっぱりよくないよ。それでさ。落ち着いたら学校行ったらいいじゃん。そうしなよ。俺からもおばさんに頼んで見るからさ。

猫猫子猫様から  わかった。だから私のキャラは消さないでね。あんたの言う通りにするから。お母さんには私から話すからあんたは何も言わないで。

猫猫子猫様へ  そうか。そうか。わかってくれてうれしいよ。大丈夫身売りとかしないから。じゃあ明日から来いよ。待ってるからな。

猫猫子猫様から  うん。わかった。私なんか泣いたら疲れちゃったからもう寝るね。じゃあ明日からお世話になるからよろしくね。じゃあノシ。

猫猫子猫様へ  ああ。明日な。ノシ。

猫猫子猫様はいないようです。



「ふぅー。なんとかなるもんだな。しかしアイツがあんなに必死になるなんてどんだけ大事なんだよ。このゲームがさあ」


俺は彼女の言ったことを思い返していた。このゲームを紹介してくれて感謝しているみたいなことを言っていたような気がした。


「良くの悪くも支えにはなってんのかな? いったいどうしちまったんだよ。あいつは」


なんかあるのかも知れないな。俺はそう思った。なんだかは分からないけど。

俺はとりあえず里美のポスターをあげるのは止めることにした。代わりに内藤君には可奈のポスターをあげることにした。ロリ好きな内藤君はきっと喜んでくれるだろう。


 翌日彼女は俺の家に約束通りに来た。思ったより元気そうだった。目は若干赤かったが。


「パソコン借りるからね」


彼女は早速パソコンの前に座っていた。


「じゃあ俺は行くから。部屋は勝手に好きに使っていいからな」

「わかったからさっさと学校行って」


俺はなんだか充実感でいっぱいだった。この気持ちがなんだか分からないがとにかく爽快感でいっぱいだった。いつもより太陽がまぶしいような気がしたがきっと気のせいでは無いだろう。


 その後結構早い段階で彼女は学校に来るようになった。前のような日常に戻っただけだったが、俺はうれしくて仕方がなかった。彼女は放課後には俺のアパートに来てゲームをして、授業中は寝ていた。俺はノートをせっせと彼女の席に置いた。俺は知らなかったのだ。これが悪夢の始まりだったということを。彼女は時折俺に対して不適な笑みを見せるようになっていたのだ。


次回「彼女の仕組んだ罠」ただ今鋭意構想中。ご拝読ありがとうございました。もしよろしければコメントなどいただけるととても励みになります。ありがとうございました。

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