マンサクー王子帰還
…その影は中央に降りてきた。黒い正体であろう、マントを双方外側になびかせ開き、水樹の剣とは違う青い剣と赤い剣を携え、白髪の男2人がお互い背を向けて仁王立ちに立っていた。
ーTRICK or SOUL…悪戯か、魂か。
そう揃った声のあと、見上げた顔はまさしく行方をくらませた…
「…ルビじゃないか!」
「え?カランじゃ無くてか?」
Kがはっとそう言ったが、横からすぐさまパウロスが口を挟んだ。
そこには完全に癒やさなかった故に残ってしまった目の傷を背負ったルビ王子と…もう一人そっくりのルビ王子が赤い装飾なのに対して、彼は青い装飾が同じ場所に施されているモノが居た。
ルビと相対するように、彼は優しい青い瞳を下に向けている。
「その事に関しては後で自分から話すとしよう。さて…貴様だ。」
横を向いていた真紅の彼は水樹の方を向いた。真蒼の彼は沈黙を保ったまま此方を見ている。
不思議なことに、水樹は弱点だと思われていた胸飾りを破壊された今でもその場に存在している。青い薔薇の装飾が施された剣を構え、『王子であったモノ』と対峙している。すぐお互いに剣を交えるかと思われたが…。
「少し聞きたいことがある。」
ルビはそう言って剣を降ろしたがすぐ出せるように構えているようだった。首を突っ込んで攻撃した所で、また避けられそうな位置関係だった。
「ー何故この謀反を起こした。」
「ッ!」
「…は?」
ルビは敵の執事にそう問う。水樹はその言葉に反応したが、K達はキョトンと頭にクエスチョンマークを浮かべている。特にルナは元の姿に戻って開いた口が塞がらないらしい。
「少し待って頂きたい、ルビ王子よ…謀反を起こしたのはその者の主たる者では無いのか。」
「よくご覧なさい異世界の帝王様。この方の胸飾りを破壊されたにもかかわらず消えぬその者を。」
「…あ、言われてみれば。消えるはずじゃ…」
そうそう話している間にも2人は変わらず睨み合っている。
「……」
「…そうか、心苦しいが…」
いつの間にか結論ついたように、ルビはすっと手を上げた。
その直後に、少し血に濡れた水樹の剣が音を立てて床に着いた。
元々宝石の薔薇が咲いていた近くに、赤い花が大きく咲いた。…中央に芽生えた赤い剣は、悲しげに赤い涙を流していた。
ズリュッ…ドサッ。
花が咲いた胸を抑えて倒れ込んだ水樹の奥には、冷たい目で真っ赤に染まった真っ青な剣を持った片割れの姿があった。マントの内側は宇宙のようにキラキラと瞬いている。
白い草原に咲いた花の主は、中心に青い薔薇を咲かせて眠りについてしまった…。
【Night王国城ー王間前廊下】
「それでだ。」
大広間を抜け、長い赤い絨毯が敷かれた広めな廊下を全員で歩いていた。剣を鞘に収めたルビ王子が歩いたまま口を開いた。
「カランと名乗ったのは…あれはただの仮名だ。本当の名をルビ・ヴァンパイヤという。」
「僕はその弟のサファ・ヴァンパイヤと申します。兄がお世話になりました。」
先程のパウロスの質問にしっかりと答えた。
Kの歩く速度が少し遅い、フィヨはその片方の銃を持ってあげた。Aがパウロスと一方的に手を繋ぎながら兄の方を心配そうに見ていた。
「しかしまぁ、姿が違ったとは言え彼処まで来るとは流石の体力だな。」
「そう言えばこの姿で会うのは何年ぶりだろうか。プリンs…失礼、姉はどうしたのだ。」
Kがそう褒めたような言葉を発すると、ルビは少し緩んだ表情で答えようとしたが途中で声を詰まらせた。サファと名乗った弟も目を見開いて自分の兄の表情を見ていた。
初めてではない。そんな会話が聞き取れた。その言いかけた言葉は誰かを呼ぼうとしていた気がして、それはSakumiを指していることを察するのは容易だった。
「実は姉ともう一人を追いかけて此処に来たんだ、宝石のような翼を持った奴を見なかったか?」
「…城の構造がすっかり狂っていて迷いに迷ったが見なかったな。」
「僕はずっと地下牢に居たので全く…。」
「この廊下は何処につながっているのだ。」
フィヨルドが不意にそう尋ねた。ルナはずっと赤い炎を見ながらついてきている。
「王間だと思うんだが…もしかしたらそこに二人共居るのかもしれない。」
そう話している内に大きな扉が…少し開かれている。
「…居るのか?」
パウロスは見えている耳を扉につけて、中の様子を探ろうとした。聞こえるのはパチパチと何かが燃える音と、何かがうごめいているような気配である。
ー
「人の物音はしない。だけど…燃えてる音とか…気配とか…。」
パウロスが耳を離したと同時に、双子の王子によって扉は開かれた。2人は先程まで無かった赤色と青色の骨組が宝石のように透き通った悪魔の翼を持ち合わせていた。
【王間】
「…!」
その光景は見るからに悲惨だった。この世のものとは思えぬ惨状で魔界の帝王であるフィヨでさえも後ずさりするほど、その光景はなんとも言葉にし難い。
「…これほどまでに凄まじい魔力を一体誰が…」
触れればダメージを受けてしまいそうな足元に残った攻撃の跡は、フィヨによれば魔法の一種であるらしい。しかしこれほどの量を同時に出せるのは見たことがないとのこと。
階段を上がった先にある大きな窓を背負っている玉座は未だ健在していて、その手前には小さな一輪の赤い薔薇が咲いていた。階段の1段目を、まるで上から滑り落ちてきたように横たわるチョーカーの残骸は、宝石の部分が激しく損傷していた。コツンと靴に球状のネックレスだったものが当たる音がする。
立ち込める魔法の残骸を剣で、銃で薙ぎ払った先に…
「…あ、姉貴っ!」
Kがふらつきながらも走っていった先にはうつ伏せに丸まったSの姿があった。少し震えていて、生命だけは無事なようだ。その近くにはディフとあの眼鏡の姿があった。
Kが駆けて行った跡をルビとサファ、ルナも追っていった。フィヨとパウロスは足元に怯えるAを連れてディフの方へ向かった。
「…寝てるだけのようだな。」
途中で眼鏡を拾い、その顔を覗き込んだ。すぅすぅと静かにこの惨状の中で寝息を立てている彼の顔が見えた。少々切り傷やら火傷はあるものの、大きな怪我は無さそうだった。
「な、なーんだよ全く…敵も居ないから相討ちしたのかと思ってヒヤヒヤしたぜ…。」
パウロスが安心のため息をついていると、先程までギュッと袖を掴んでいたAがいつの間にか一人でKの方にいっている事に気がついた。
「姉貴、姉貴…しっかりしてくれ…!」
Kは心配そうにSに駆け寄ってしゃがみこんだ。
Sの先程までのあの長い指は手袋をボロボロにしたままもとに戻っていて、銀色の機械がはっきりと見受けられる。毛先は焦げ、息が荒く、身体も熱い。ヘッドホンはヒビが入っている。
追いついた王子たちもその様子を見るが…すぐ弟である彼に質問をし始めた。彼女がそうなのかと、本当にあの子なのかと。『まるで疑うかのように。』
その後すぐにAが此方の様子を見にやってきた。ディフが無事だったことを伝えると、姉の前髪をあげて顔を見た。じっと見て、前髪を降ろして
「…帰ろぉ。姉さんはいつも通りしくじっちゃっただけだねぇ。」
そうにこやかに笑って兄に伝えた。その瞬間に強張っていた彼の顔は少し緩んだような気がした。
【早く帰っておいで。何処からかそんな声がした気がした】
おはこんばんにちは、CODE393です。
やっと第1ステージ、Night王国編終了しましたー!此処まで読んで頂いた方、有難うございましたまだ続きます(白目)
さて次回は皆に休んでいただきましょうかね。(予告
ではまたこの世界でお会い致しましょう。




