第1話 プロローグ
気合を入れて書いたので、長めになってしまいました
次回も、こんなに長く書けるかどうか……
俺は陸神也。今年、めでたく高校1年生になるのだ。
俺が通うことになった高校は、生まれ育ったT県から離れたB県。つまり県外。
「気を付けてね。時々電話するのよ。困ったらすぐ言ってね」
俺が家を出る時の、親の言葉だ。
「分かってるよ。じゃ、夏休みぐらいに、帰れたら帰ってくるよ」
これは、俺の言葉。
特に友人の見送りもあったわけでもなく、一人寂しく駅のホームにいるだけだった。
そして、現在。
数時間に一本しかない電車がようやく来てくれた。
「待ってくださーい!!」
俺が乗り込もうとした時、後ろから声を掛けられた。
振り返ると、そこには俺の後輩である桐野萌々香がいた。
走ってきたのだろうか、肩で息をしている。
「萌々香か。どうしたんだ?」
「先輩、県外に行くって本当ですか!?」
「あぁ」
「なんで教えてくれなかったんですか!?」
あれ、言ってなかったか?……言ってなかったな。
「どこ行くんですか!?」
「B県だ」
「B県のなんて学校ですか!?」
なんで、そんな熱心に聞いてくるんだ?
「お、大上高校だけど」
「大上高校ですね、わかりました!!」
何がわかったんだ?
「私も来年、大上高校に入ります!!」
「は?何で?」
「そ、それは……」
何故か顔を赤くし、俯く萌々香。
風邪か?三月といえ、まだ寒いしなー。
「ま、頑張れや。俺はこれで」
いつまでも話してられない。もう電車は出るわけで。
「あ、先輩!!あの、私、先輩の事っ……!!」
ピィィィィィ!!
「あ?なんだ?」
「だから!!私っ!!」
プシューーー!!
「あ」
扉が……。
結局、萌々香が何を言いたかったのか、分からないまま電車は無情にも発車。
ホームが遠ざかっていき、ついに俺は生まれ故郷を離れたのだった。
故郷を離れる寂しさと、新天地への期待を胸に。
電車に乗ること三時間。
ようやく、B県の大上市に着いた。
大上市は、結構栄えており(というか、俺がいた所が田舎だっただけ)人も多い。
そのせいで、俺は電車を降りた瞬間、人の波に揉まれてしまった。
人の波に逆らうこと三十分。
なんとか駅の外の広場に出ることができた。
「ふぅ……」
あらかた荷物は送っておいたから、手荷物は少ない。
そのおかげで、何とか助かった。
広場の時計を見ると、12時をちょっと過ぎていた。
「ちょっと過ぎちまったか」
12時に待ち合わせをしていたのだが……。
誰と待ち合わせをしているのかというと、俺の幼馴染でB県に3年前に引っ越した奴とだ。
ちょっと時間に厳しかったが、今回は許してくれんだろ。
「たしか、広場の時計の下だったか?」
「そうだよ」
「おうぅ、わりぃな。わざわざ教えてもらって」
「いいよ、別に。こんな事だろうと思ってたし」
「って、おおぅ!?」
急いで振り返ると、そこには幼馴染である加賀美凛花が腕を組んで、立っていた。
「り、凛花。い、いつからそこに?」
「『ちょっと過ぎちまったか』って言ってた辺りから」
「ほとんど最初っからじゃねぇか!!」
「で?なんで遅れたの?」
「人の波に揉まれてた」
「あ、あぁ~、なるほどね」
何処か遠い目をし出した凛花。
「私も最初はそうだったよ……」
「そうか……。大変だったんだな」
「ま、慣れなきゃ、これから暮らせていけないよ」
「そ、そうか」
これに慣れるなんて、とてもじゃないが想像がつかん。
「さぁ、早速これから住む家に案内するわ」
「そういやなんで凛花が知ってんだ?」
「だって、私が住んでるアパートと同じだもん」
「は?そうなのか?」
初耳なんだが……。
「ま、行こうよ」
「あ、あぁ」
俺は凛花に手を引かれるまま、その場を離れたのだった。
途中、俺が色んな所に寄ろうとして、凛花に制裁(右ストレート)をされたのは秘密だ。
「さぁ、ここよ」
「へぇー、綺麗なところだな」
想像以上に綺麗なアパートに、俺は嘆息した。
「ここから大上高校までは、徒歩でだいたい10分程度」
「近いんだな」
「まぁね。それで、これが部屋の鍵。アンタは204号室」
「おっけ。凛花は?」
「?」
「部屋番号だよ」
「あぁ、201号室。階段のすぐ隣よ」
俺の部屋が一番端。
つまり、ここは1階が4部屋、2階も4部屋。
基本的な形をしている。
「荷物の方は、中に入れておいたから。荷解きは自分でしてよ?」
「わかってる。……誰が凛花に頼むか」
ゴンッ!!
「イッテェェェ!!」
「……何か言った?」
「いえ、何も……」
凛花は家事が全くできないに等しい。
「凛花、一人暮らし?」
「何でそんなこと聞くのよ?」
「いいから、答えろよ」
「そうよ、一人暮らし。私も1週間程前からここで一人で……」
「何っ!?」
俺は驚きのあまり、凛花の肩を掴んだ。
「お前、1週間って言ったか?」
「い、言ったけど?」
「お前、部屋見せろ」
「ど、どうして?」
「今のお前の部屋の様子が、手に取るように分かる。さ、行くぞ」
「ちょ、ちょぉぉぉぉぉ!?」
俺は半ば引きずるようにして、凛花の部屋に行ったのだった。
結果。凛花の部屋はごみが散乱し、ひどい状況だったとだけ記しておこう。
2時間後、ようやく凛花の部屋の掃除を終え、自分の部屋に入ることができた。
「今日から、ここが我が家か」
なんだか、しっくりこない。
「さ、必要なものだけ荷解きしよう」
それ以外は、明日以降だ。
こうして、俺の新しい日常が始まるのだった。




