表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は追放だ!」と近衛を解雇された男爵令嬢、生まれ故郷の辺境都市にて最強衛兵となって活躍する 〜赤虎姫と呼ばれた最強の人形使いはTS転生貴族令嬢!?〜   作者: 自転車和尚
第二章 帝国戦勝式典襲撃

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/110

第六一話 戦勝式典警護 〇一

 ——数日後、衛兵隊駐屯地にある会議室に集められた私達を前に、シルヴァン・デュポスト隊長は手に持った書簡を見ながら口を開いた。


「さて、人形騎士(ナイトドール)も戻ってきたことなので、本格的に再始動と行きたいところではあるのだが……」

 そこまで話すとデュポスト隊長は言葉を濁すと、書簡の中身をもう一度見てから、はあっ……と軽いため息をついた。

 よほど言いにくいのかチラチラと私達の顔と書簡を行き来する彼を見て、私とパトリシアは思わず顔を見合わせる。

 あの出来事から私も少し落ち着いたので今はパトリシアと行動を共にしているが、彼女の応対はほんの少しだけ事務的なものに変化してしまった。

 まあ、私が避けていたのが悪いんだけど……と思いつつ、私は彼女に微笑んでから肩をすくめると、パトリシアも同じようにほんの少し苦笑してくれた。

「で? 言いにくそうだってのはわかったが、任務なんだろう?」


「うん……タラス子爵、すまないね……今回の任務は帝国戦勝式典の警護だ」


「あー……もうそんな時期か忘れてたな」


「そういえばそうですね……」

 帝国は一〇〇〇年という長い時間大陸中の国という国と戦い続け、そして五年前についに最大にして最後の難敵ヴォルカニア王国を降伏させた。

 当たり前だが戦の勝利というのは国威高揚のための重要な要素となり得るため、帝国では終戦と同時に新しい法律を発布している。

 いくつもの法令や布告が発布され、その中のいくつかは実にどうでもいい内容のものなんかもあって、不決めしものだったりするわけだが……中でも特筆するべき法令が一つある。

 その名も『帝国戦勝式典に関する法案』と題されたそれは一年に一回各都市の義務として、戦勝式典を開くことを義務化するものだ。

 まあ言うなれば公式に認められたお祭りのようなものだが式典の内容自体は各都市によって様々で、例えば帝都では大規模な軍事パレードが開かれ、その後皇帝陛下によるありがたいお言葉を拝聴し、そしてお祭り騒ぎが始まるという実に豪華なものである。

 帝国臣民もこの時期は羽目を外して大騒ぎするので、酔っ払い同士の喧嘩とかで捕まる奴が続出するとかで帝都の守備兵は休む暇がなくなる。

 帝国全土がお祭り騒ぎになるその法は、ある意味平和な時代になったんだなーと帝国にすむ人たちが実感できる珍しい法案だと思う。

「帝都だと中央軍のパレードがメインだったと思うけど、ライオトリシアは違うのかい?」


「基本的には守備軍のパレードとカリェーハ女伯爵の演説、そしてお祭りって流れは同じだな」


「ってことはパレードに私らも参加するのか?」


「だったらまだマシなんだけどね」

 デュポスト隊長の返答で私は思わず天を仰ぎ見る……おそらくパレードの最中だけではないが私達人形使い(ドールマスター)は人形騎士に載って突っ立っているだけ、という忍耐力を要する仕事になるのだろう。

 パトリシアはなぜそれが問題なのか、と言わんばかりの顔で私を見上げてきょとんとしているが、近衛軍の時にこの戦勝式典に参加した私はその辛さを思い出していた。

 中央軍のパレードは基本的に歩兵、騎兵、そして人形騎士などの大型兵器などが街の中央を練り歩き、皇帝陛下の住まう城へと終結し、そこで一斉に首を垂れ忠誠を示すという流れだった。

 しかし、近衛隊は貴人を守るという名目からパレードには参加せず、演説が行われる広場に張り付きで立っているだけという命令が下された。

 人形騎士は戦闘兵器であり快適な移動手段ではないため、前世でいうところのいわゆるエアコン……空調用魔道具の類はついていない。

 一部の高級騎には装備されているらしいが、近衛で使ってたグラディウス・ドミヌスにはついていなかったのだ。

 さらにハッチを開けることを禁止されたので風が入って来ず、暑さでグダグダになった私達は朦朧とする意識の中必死に操縦桿を握っていた記憶がある。

「あ、あれはもう体験したくなかった……第一装甲馬車(アルカヴァリス)だって似たようなもんだぞ」


「いえ、衛兵隊仕様の装甲馬車には空調用魔道具がついています」


「ならわたくしとメルタ様は快適に式典を警護できるということですね」


「……差別だろそれ!」

 御者であるメルタがそう告げるのを聞いて、私は思わず叫んでしまう……少なくとも人形騎士ヴィギルスに空調はついていない。

 ジーモンに言わせると『魔力の無駄』だそうだが、だとしたらなぜ装甲馬車にはそういう装備がついているのだ!

 帝国魔道具開発の歴史の中で空調、つまりエアコンに相当する魔道具が開発されたのは四〇〇年ほど前に遡るそうだ。

 基本的には魔道具を惜しみなく使えるのは貴族の特権であるため、一般の帝国臣民はこの空調用魔道具があることをあまり認識していないのではないかと思う。

 ただ性能は素晴らしく、ある程度の空間内温度を一定に保ち、例えば暑い場所でも涼しく、そして寒い日には暖かく過ごすことが可能なのだ。

「そう言えばアーシャさんのお屋敷にも配置されてましたね」


「高かったとは聞いてるけど一生物だからね」


「私軍の装甲馬車に乗ってましたけど、空調なくて辛かったんですよね」

 メルタがなぜか嬉しそうにそう告げるが、私はその笑顔を見てなんとなく殺意が湧きそうになっていた。

 空調は主に屋敷などに配置されるため、大きさとしてはそれなりに大きなものになる。

 ここ一〇〇年ほどの間に急激に小型化が進み、人形騎士の狭い操縦席内にも配置できるものが作られた、と聞いていた。

 まあ軍用の人形騎士なんか全部そんな便利なものは装着されていないので、暑い日はハッチを開けて行軍するという原始的な方法で涼を得るし、寒ければ防寒服を着込んで対応するのが普通だ。

 私は同じ人形使いであるタラスに助けを求めるように視線を送る……北方に私は行ったことがないが、イメージ的に寒そうなので彼なら辛さをわかってくれると思ったからだ。

 だが、あの辛さを知っているのは私だけのようでタラスは何が不満なんだ、とばかりにきょとんとした表情を浮かべていた。

「なんで俺を見る」


「……いやタラスならわかってくれるかなと」


「それはお前の鍛え方が足りないだけだ、俺は気温ではびくともせん」


「……そうですか……」

 この場に神様も、味方もいないことだけがわかった。

 私はガックリと項垂れるが、どうやらデュポスト隊長だけはその辛さを知っているのか本当に申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

 だが彼も仕事だと割り切っているのだろう、すぐに表情を引き締めて咳払いをしたのち、衛兵隊の任務について説明を始める。

 軍事パレードの主役は基本的にライオトリシア守備軍になるということ、歩兵、騎兵、そして人形騎士が大通りを練り歩く。

 街の中央広場でカリェーハ女伯爵による演説が行われるが衛兵隊は演説が行われる広場入り口に人形騎士ヴィギルスを配置させ、演説会場の警護を行う。

 女伯爵の次は貴族会議のお偉方の演説があるので、解散してお祭りが始まるまで大体五時間程度拘束される形となるのだ。

「……五時間……あの、その間に体調が悪くなっちゃったりするとか……」


「交代で休息は取れるように手配するが基本的には張り付きだな」


「やっぱ救いはないじゃねえか……」


「それと私は女伯爵の側についているため、特別に閣下より推薦され本日から配属となった衛兵隊参謀どのが現場の指揮を取ることになる、入ってくれ」

 その言葉と同時に会議室の扉が開かれ一人の女性が真新しい衛兵隊の制服を身に纏って入ってきた。

 桃色の髪に同じ色の瞳……そして年齢不詳な美しい顔立ちは可愛らしいという印象が強いだろうか? 身長は少し小柄ながら、帝国人の女性としては平均的な高さがあり、それと同時にすらっとしたスタイルは人目を引くだろう。

 私はその顔を見て思わず絶句する……何故ならば、その人物は近衛隊で散々に顔を合わせそして同じ女性ということで非常に親身に応対してくれた人だったからだ。

 その女性は非常に美しい所作で、帝国式の胸に拳を当てる敬礼を見せると私たちへと優しく微笑んだ。


「皆さん初めまして……本日より衛兵隊配属となりましたエミリー・エゼルレッド伯爵令嬢です、よろしくお願いします」

_(:3 」∠)_ ようやくエミリーさん合流


「面白かった」

「続きが気になる」

「今後どうなるの?」

と思っていただけたなら

下にある☆☆☆☆☆から作品へのご評価をお願いいたします。

面白かったら星五つ、つまらなかったら星一つで、正直な感想で大丈夫です。

ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。

何卒応援の程よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ