13. 貴様は勘当だ!
頭を抱える皇帝を他人事のように眺めていると
「アルシャ様。今回の件についてだが……」
皇帝が言い出しづらそうに、こちらに声をかけました。
「宰相はクビとしよう。
魔法研究の促進、聖女の権威を下げようと働きかけたものは厳罰に処す」
そうですか。
驚くほどに何の感慨も沸きません。
事実上のクビ宣告に、ギョッとしたのは宰相です。
「な、何故そのような必要が!?」
「貴様の聖女に対する振る舞いのおかげで。
この国がどれほどの損害を被ったか、まだ分からんというのか!」
今後、帝都で働けると思うな、と皇帝は宰相をひと睨み。
物分かりの悪い宰相に、怒りを隠そうともしません。
「そうです。父上が、これまでどれだけこの国に貢献してきたことか!
そこの詐欺師のために失墜するなど、あり得ませんよ!」
宰相の息子も何やら騒ぎ立てています。
父親の正しさをすっかり信じ込んでいるのか、元・婚約者である私を憎々しげに睨み付けてきます。
しかし、皇帝にギロリと睨み付けられると消え入るように言葉を止めてしまいました。
「そんな無茶苦茶な話、聞いたことがありません。
聖女といっても所詮は平民、文句を言われる筋合いなんて無いでしょう!
邪竜の復活などという非常事態にこそ、宰相のような国を引っ張っていってくれる方が必要なのです!
父上、ここで宰相を降格しようものなら更に国が乱れますよ」
熱弁する第三皇子。
焦ると本音が出てきますね。
とことん国を引っ張っていく器には見えません。
「黙れ。今回の件で、貴様の愚かさにも心底嫌気がさした。
こんなのが息子だとは我ながら情けない」
そんな宰相を庇うような発言をする第三皇子を冷たい目で見据え。
「貴様は勘当だ!
離れの塔で、一生を過ごすが良い!」
と言い放ちました。
「な――!?」
驚き口を開いたまま固まる第三皇子。
何を驚いているのでしょうか。
聖女を支持する者が国に多く居る以上、誰かが今回の事件の罪を償わなければならないのは当然でしょう。
それにしても「沙汰は、国に帰ったら下す」と言いながら。
結局は、廃嫡までこの場で告げてみせるとは。
皇帝も怒り心頭だということでしょうか。
「アルシャ様。
このように、帝国では今回の件に誠意を持って対応させてもらう。
だから――もう一度だけ、帝国で聖女として働いてはくれないかね?」
――できる限り便宜は図ろう
皇帝は、私の機嫌を取るようにそう囁きかけたのでした。




