12. 厳格な処置をお願いしますね
「大方の事情は分かった」
宰相を見る皇帝の視線は、ゴミを見るように冷たいもの。
「沙汰は、帝都に帰ったら下す。
楽しみにしておくんだな」
「ご、誤解です!
聖女様は、我々を誤解しておられるのです」
「婚約者だったではありませんか。
アルシャ、どうかご慈悲を――」
先ほどまでの人を見下す態度は、どこに行ったのでしょうか。
保身のためなら庶民相手でも媚びへつらう。
プライドすら投げ捨て権力のみに忠実な姿は、いっそ称賛したいぐらい。
「最後の最後まで、往生際が悪いですね」
誤解、ですか?
ええ、婚約者でしたね。
今では赤の他人ですよ!
「皇帝陛下?」
「此度のことは帝国が全面的に悪い。
穏便に済ますため、出来る限りの希望を聞こう」
私は、こちらに縋るような眼差しを向ける元婚約者に視線を送ると、
「この方たちには、何の思い入れもありませんから。
是非とも、厳格な処置をお願いしますね」
ニッコリと微笑みかけました。
◇◆◇◆◇
『皇帝に任せちゃうの?』
『つまらないの~ やっちゃうの!』
私を慕ってくれる妖精さんたちは、今回の話のまとまり方には納得がいかないようで。
そんな不満を零していましたが、
「こんな国のことは、もう忘れたいんです」
ここで宰相親子に私怨をぶつけても、失われた5年間は戻ってきません。
いらぬ恨みを増やすだけ。
私の望みはただ1つ。
故郷に帰って、平和な生活を送ることだけです。
「元々は、宰相に全てを任せた私の責任だ。
我が国が迷惑をかけた、改めて謝罪させて欲しい」
「……その謝罪を受け入れましょう」
皇帝に対しても、思うところは色々とあります。
全てを忘れることなんて、決して出来ませんから。
「今回の大事件、国ではどのように扱うつもりなのかしら~?」
そう尋ねたのはお母さん。
「今回の事件は、聖女に対する非道な扱いが原因と言えるだろう」
「そのまま明かしたら暴動が起きてもおかしくないわよ~?」
人ごとのように笑うお母さんに、
「頭の痛い問題だ……」
皇帝は頭を抱えています。
残念なことに聖女のことを『金喰い虫』だと思っているのは、宰相だけではありません。
帝国の中には、宰相の思想誘導によって魔法研究を過信する者が大勢います。
一方、この地方のように聖女を崇めている地方もあるわけで。
皇帝がどのような対応を取ろうとしても。
どこかに不満が出るのは間違いでしょう。
それこそ、場合によっては暴動に繋がりかねない状態。
――まあ、私には関係ないですね
『聖女』などという職は不要だ!
そう言われて追放された時点で、私の役割は終わっていますから。




