表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ

プロローグ



からから……と木製の引き戸を動かす音が、まだ冬の寒さを残した廊下に響く。

職員室と書かれたプレートの扉から、一人の少女が出てきて、中に向かって深々と頭を下げた。


「失礼しました……」


そういって、扉を閉めると、彼女は困ったようにため息をひとつ。いつもは日溜りのような明るさを湛えているのだが、

今の彼女には、温厚に笑っていれるほどの精神的余裕は、それほどなかったのである。


「ひな、どうだったんだ?」


と、そんな彼女に向かって声がかかった。ひな、と呼ばれた少女が振り向くと、そちらには彼女の幼馴染が二人。

見知った顔を見て安心したのか、それとも緊張の糸が切れたのか、ひな、という名の少女の涙腺が決壊したのは次の瞬間である。

だば~、と、漫画のような目の幅サイズの涙を流し始めた少女は、二人の幼馴染に駆け寄りながら泣き出し始めたのである。


「ちえちゃん~、鷹くん~、どうしよう~」

「ひ、ひな!? おのれ、あのくそ教師、ひなを泣かせやがって、許せん!」

「おちつけ馬鹿ひろ。ま、その様子だと、おおむね予想通りといったところだったようだな。よしよし、泣くんじゃないぞー、ひな」


幼馴染の一人が、職員室に拳をふるって殴りこもうとする、もう一人の襟首を掴んで止めながら、泣きじゃくる、ひな、という女の子の頭をなでる。

片方は、襟首がしまったショックでおとなしくなり、もう一人の泣きじゃくっていた方も、落ち着いたのか、大泣きするのはやめたようである。

とはいえ、それで事態が好転したわけでは、これっぽっちもなかったのであるが。

涙は止まり始めたとはいえ、まだぐずった様子のひなという女の子は、幼馴染に頭をなでられながら、涙目で相手を見上げる。


「ねえ、どうしよう、ちえちゃん……このままじゃ」

「まあ、今はどうしようもないだろ。今から動いたところで、効果があるとは思えないしな」


その目は、廊下の窓の外に向けられていた。薄曇、雪でも降りそうな空模様は、冬の景色の一部を切り取ったもの。

暦の上では、2月にあたる昨今は、まだまだ春の足音は遠く、肌寒さが勝っていたのであった。


「動くのは、来年の春からだろ。それまでに、少し調べておかなきゃいけないやつもいるしな」

「?」

「ああ、ひなは気にしなくていいことだぞ」


何のことだろう、と首をかしげる、ひなという少女の頭を、幼馴染は優しくなでる、と、


「せ、せめて一太刀……」


まだ、気絶していなかったのか、襟首を引っ付かれたまま大人しくなっていたもう一人が、再び動き出したのであった。


「だから、止めろと言っただろう馬鹿ひろ。暴力沙汰にするつもりか」

「ぐえ」


もっとも、止めとばかりに再度襟首を引っ張られ、窒息したように沈黙したのであったが。

そんなことがあったのが、昨年の冬のことである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ