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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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EP 5

乙女の涙と、不器用な男の決意

「ひっく……うぇぇぇんっ……優太の、わからずやぁぁ……っ!」

村長宅のリビングに、薄い木のドア越しにキャルルのしゃくり上げる声が響いていた。

普段、オークの群れを前にしても一歩も引かず、トンファーで頭蓋骨を砕く武闘派ウサギの、あまりにもか弱く、悲痛な乙女の涙。

その声を聞くたびに、リビングのソファに座る優太の胃は、ギリギリと締め付けられていた。

「……俺は、最低のクソ野郎だ」

テーブルの上に放置された、オリーブドラブ色の『最新型防刃タクティカルベスト』と『迷彩コンバットシャツ』を見つめ、優太は深く頭を抱えた。

「ええ、そうね。女の子が勇気を出して『私に一番似合う可愛い服を選んで』って言ったのに、生存確率サバイバル全振りの防弾チョッキを渡すなんて。デリカシーがマイナスに振り切れてるわ」

優太の向かい側で、エルフのルナが冷たく言い放った。

その隣では、リーザが呆れたようにため息をついている。

「優太様。あのね、ルナキン(ファミレス)のオープン日は、キャルルにとって『戦場』じゃないの。優太様と一緒に歩く『晴れ舞台でーと』だったのよ。どんなに防御力が高くても、女の子の心が死んじゃったら意味ないじゃない」

「……ああっ、痛いほど分かった! 分かったからこれ以上俺の心をえぐらないでくれ……!」

優太は元特殊部隊(SEALs)の教官として、これまで数え切れないほどの訓練生を怒鳴り散らし、地獄を見せてきた。しかし、キャルルのあの「絶望した瞳」と「涙」は、どんな激戦の記憶よりも優太の胸に深く、鋭く突き刺さっていた。

(あいつは、村長としてじゃなく、一人の女の子として……俺に『可愛い』って思われたかったんだ。それなのに俺は、テロ対策のガチ装備を押し付けて……っ!)

優太はガバッと顔を上げた。

「ルナ、リーザ! どうすればいい!? 今から地球ショッピングでもう一度『可愛い服』を買おうにも、このコンバットギアのフルセットに全ポイント(GP)を突っ込んじまって、残高がゼロなんだ!」

「あらら。見事な自業自得ね」

「うぅ……このままじゃ、明日のオープンは最悪の空気だ……。なんとかして、この世界で最高の『ドレス』を手に入れる方法は……」

優太が頭を抱えて唸っていると、ルナがふわりと微笑み、静かに口を開いた。

「……買えないなら、作るしかないわね。最高の素材を集めて」

「素材?」

「ええ。ポポロ村から北に広がる『迷いの森』のさらに奥。そこには、とても美しく、そして凶暴な幻の魔物が棲んでいると言われているわ。その名は――『虹色孔雀レインボー・ピーコック』」

ルナの言葉に、優太の目の色がスッと変わった。

「その魔物の羽毛は、鋼のように強靭でありながら、シルクよりも軽く滑らか。特に、胸元から採れる『真紅の羽毛』は、光の加減で七色に輝き、魔法の耐性すら備えている……。かつてルナミス帝国の皇女が、その羽で織ったドレスを熱望したけれど、討伐が困難すぎて諦めたという伝説の素材よ」

「……虹色孔雀」

優太は呟き、そしてニヤリと、本来の『ハンター(戦闘狂)』の笑みを浮かべた。

「でも優太、その魔物は極めて警戒心が強くて素早いのよ。下手に魔法で攻撃すれば、せっかくの美しい羽毛が燃えたり傷ついたりして使い物にならなくなるわ」

「つまり、魔法を使わず、物理的なトラップと近接戦闘(CQC)だけで、傷をつけずに仕留めなきゃいけないってことだな?」

優太は立ち上がり、壁に立てかけてあった『ワスプ薙刀』を手に取った。

さらに、腰のベルトにサバイバルナイフ、ワイヤー、そして発煙筒を次々とセットしていく。

地球ショッピングのポイントがなくても、優太の身体には「極限状況での狩り」のノウハウが染み付いている。

「……面白ぇ。上等だ。泣かせちまった女の笑顔を取り戻すためだ、幻の魔物だろうが何だろうが、俺が泥這ってでも狩ってきてやる」

優太の背中から、先ほどの「デリカシー皆無の朴念仁」とは全く違う、圧倒的な強者のオーラ(殺気)が立ち上った。

「ルナ。明日の朝までに、俺がその『虹色孔雀の真紅の羽毛』を無傷で持ち帰ったら……お前のエルフの魔法裁縫で、キャルルにピッタリのドレスに仕立て上げることができるか?」

優太が振り返って問うと、ルナは優雅に立ち上がり、胸に手を当てて深く頷いた。

「ええ、もちろんよ。私、これでも森の精霊に愛されたハイエルフだもの。優太が素材さえ持ち帰れば、明日のオープンに間に合うように、世界で一番可愛い『真紅のワンピース』を仕立ててみせるわ」

「約束だぞ。……リーザ、ルチアナ! キャルルが起きてきても、俺がどこに行ったかは内緒にしとけ。ただの『夜の散歩』って誤魔化せ」

優太は迷彩柄のバンダナを頭に巻き、ワスプ薙刀を肩に担いだ。

時刻は深夜。外は、魔物が跋扈する漆黒の闇である。

しかし、不器用な医学生の瞳には、一切の迷いはなかった。

「待ってろよキャルル。……絶対に、お前を最高に可愛い村長ヒロインにしてやるからな」

バタン、と。

優太は静かにドアを閉め、幻の魔物『虹色孔雀』が棲む危険地帯へと、単身、夜の森へ姿を消したのだった。

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