蠅ミタイナ汚ラワシイ生物ナンカト一緒ニスルナ!
ヒストリア邸に到着して、主人のモルト=ヒストリアから別室で待つように言われた、オビト、アスカ、ヒロミ、そしてナーニャの4人。
ところがその別室に入ったところ、外側から鍵をかけられ、4人は閉じ込められてしまった。
オビトは、携帯する陰陽劍の能力で、周囲の霊気を感得することができる。
ヒストリア邸に来る前にヒロヨを襲った、あの妖精守護霊と同じ感覚がある。
オビトは、陰劍と陽劍を2本のアンテナのように操作して、霊気の所在を探索する。
アスカ
「どこにいるか、分かる?」
オビト
「シッ! 静かにして!」
どこだ?
どこにいる?
この部屋の中を、あちこち移動している。
移動しながら、僕たちのスキをうかがっているのかもしれない。
布地の破れる音がした。
音の方を向くと、そこにナーニャが居た。
ナーニャ?
そこに居るのは3歳児のナーニャの姿ではなかった。すでに10歳ぐらいの少女になろうとしている。
ナーニャの身体はさらに成長し、15歳ぐらいの姿になって衣服が破壊。裸体になったその腹のあたりに妖精守護霊が吸い付いているのが見えた。
アスカ
「紅蓮の戦士『不動の解脱者』!」
アスカが守護霊を召喚し、妖精守護霊に攻撃をしかける。
ヒロミ
「ダメ! アスカ! それだとナーニャが怪我をする!」
『不動の解脱者』の張り手が寸止めとなる。
妖精守護霊が、ぷーんと飛び立った。
妖精
「見ツカッチマッタカ! コノヤロウ!」
アスカ
「待ちなさい! 今すぐ叩き落としてやるわ!」
パチンパチンと、『不動の解脱者』が妖精守護霊を追って手を叩く。
妖精
「オウオウ、オウオウ! ソンナスピードデハ俺ヲ落トスコトハデキナイヨ!」
アスカ
「くぅー! 蠅みたいにちょこまかと!」
妖精
「蠅ダッテェ? 俺ニハ『蚊人』トイウ呼ビ名ガアルンダ! 蠅ミタイナ汚ラワシイ生物ナンカト一緒ニスルナ!」
アスカ
「私から見たら、蠅も蚊も同じよ!」
蚊人
「ダカラ蠅ナンカト一緒ニスルンジャナイ!」
以下、妖精守護霊のことを蚊人と呼ぼう。蚊人はそう言って、部屋の中をあちこち飛び回る。
アスカ、蚊人の行方を見失う。
ヒロミのシャツの第1ボタンが弾け飛ぶ。
ヒロミが成長して谷間ができる。
ヒロミは「あっ」と言って胸を押さえる。
アスカ
「ダメ! ヒロミ! シャツを脱いで!」
アスカは、蚊人がヒロミの素肌に取り付いているものと直感した。だが、その着衣が邪魔で蚊人がどこにいるか分からない。ヒロミの身体のどこに蚊人が取り付いているか探すには、ヒロミにハダカになってもらうほかはない。
ヒロミの腿に、蚊人が取り付いていた。
アスカ
「このスケベ虫ケラァ!」
『不動の解脱者』がヒロミの腿を平手打ち。
しかし蚊人を仕留められず。
ヒロミ
「痛ーい! アスカ! しっかり仕留めてよ!」
蚊人
「遅イ! 遅イ! 遅イィィィ! オマエノ守護霊ノ速サデハ、俺ヲ捕エルコトハ不可能ゥ!」
アスカ、再び蚊人の行方を見失う。
次いで、自分の着衣が窮屈になっていくことに気が付いた。
どこ? と自分の身体を見回すけれども分からない。ヒロミと同じように裸になると、背中に蚊人がいた。
ヒロミ
「白銅の獣聖『迷い犬』!」
今度はヒロミが守護霊を召喚して、アスカの背中を平手打ち。
だが、やはり蚊人を仕留められず。
蚊人
「オット、今度ハ危ナカッタ! サァ次ハ、誰カラ生気ヲ奪オウカ!」
そして、アスカもヒロミも、室内を激しく飛び回る蚊人の行方を見失った。
アスカ
「こんな素早い奴、どうするのよ!」
ヒロミ
「嫌よ。 このまま奴に生気を吸われ、お婆ちゃんにさせられるなんて!」
ナーニャ
「……」
アスカとヒロミ、オビトを見る。
この中で、一人着衣の少年である。
これまで蚊人は、スキを見て衣類の中にもぐりこみ、本人が気づかないうちに生気を吸い取っていた。服を着ていると、蚊人から生気を吸われた時に発見が遅れる。
アスカ
「オビト! あんたも服を脱ぎなさい!」
オビト
「え?」
戸惑うオビト。
ヒロミ
「問答無用!」
『不動の解脱者』と『迷い犬』がオビトを取り押さえ、一瞬のうちにオビトをハダカにしてしまった。