こういうときは周りをよく観察することだ
シキ皇子に王子が生まれたというので、王子の養育先であるヒストリア家の屋敷に向かうコウセイ皇子、ヒロヨ皇女、オビト皇子、アスカ、ヒロミの5人であった。
その途中、ナーニャと名乗る3歳ぐらいの幼女を拾ったので、今は6人のパーティだ。
ヒロヨのシャツの第一ボタンがはじけ飛んだ。その胸元が覗く。その様子を見て、アスカが大嗤いする。
ヒロヨ
「仕方ないじゃない! 胸が窮屈なのよ!」
アスカ
「でもそうやって、胸の谷間を見せてしまうなんて、同じ女性として恥ずかしいですわぁww」
ヒロヨ
「アンタみたいに、谷間を作れない女に言われたくはないわ!(怒)」
アスカ
「何ですって!」
ヒロヨ
「何よ!」
オビト
「ちょっと喧嘩はやめてよ」
また不穏な空気になってきた。喧嘩を止めようとオビトが口論の間に入ろうとしたときである。
ヒロヨは、キヨミハラ学院の制服を着用していた。女子はスカートではなく、ひざ丈のキュロットパンツだ。そのキュロットパンツの尻の部分が破裂するように破け、その下から真白い下着の色が見えた。
これにはヒロヨも赤面した。また、アスカがますます大嗤いした。ヒロミは青ざめた。
ヒロミ
「ヒロヨさん――その姿――」
ヒロヨは、オビトたちと同じ12歳である。しかし、今のヒロヨはとても12歳の少女の姿に見えない。身長が伸び、20歳過ぎのやや豊満体形な女性の姿に変貌していた。
それが、12歳そこそこが着るようなサイズの服を着ているのである。ボタンが弾け飛ぶこともあろう。各所が破けることもあろう。
気持ち、ヒロヨの肌にシミが生まれてないか。
ヒロヨは悲鳴をあげる。自分の身体が急速に老化していることに気付き、恐怖したからだ。
コウセイ
「これは――攻撃だ」
オビト
「攻撃だって? 誰が? どこから?」
オビトは、腰に佩いた2本のショートソード、陰劍と陽劍を抜いて構えた。
コウセイ
「落ち着くんだ、オビト君。 こういうときは周りをよく観察することだ。 君の陰陽劍は、何か教えてはくれないのかい?」
オビト
「はい。 強い霊気を感じて震えています。 さっきの洒落頭から感じたようなピリリとした霊気なんてものではないです。 もっと重く、どす黒いものです。 これほどの霊気、久しぶりに感じました」
コウセイ
「それではその霊気の強さ、君がこれまで体感した古墳の主と比べて、どうだい?」
オビト
「古墳の主ほどではありません。 しかし、その辺の小妖怪とは比べ物になりません」
コウセイ
「そうかい。 ならば分かった。 これは、守護霊による攻撃だ。 守護霊は、古墳の主ほどではないものの、その辺の小妖怪よりもはるかに大きな霊力をもっているからね」
こうしている間にも、ヒロヨの老化が進んでいる。その見ためは、40歳から50歳ぐらいに変化。中年太りが進み、尻が少女の下着におさまりきらなくなって、半分見えている。
ヒロヨ
「早く……何とかして……」
恐怖と羞恥で、泣きそうな声だ。
オビト
「はい! 強い霊気が、ヒロヨさんの背中から、強く感じます!」
コウセイ
「ふむ。 だとすれば守護霊は! 僕は召喚する! 蒼き竜騎士『空飛ぶイルカ』!」
そしてコウセイは、パツンパツンになったヒロヨのシャツに手をかけて、その背中から、一気に破り捨てた。
露わになるヒロヨの背中。
その真ん中に、テントウムシのようなものがとまっていた。
よく見ると、それは人型。そして、羽根が生えている。
顔をヒロヨの肌に押し付けて、背中にしがみついていた。