表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/11

君は強くならない方が良かった

挿絵(By みてみん)


 床に、妖精守護霊(トーテム)蚊人(モスキート)』が転がっている。その羽根の1枚が、もがれている。


 蚊人(モスキート)は、その1枚だけとなった羽根を羽ばたかせるが、飛び立てない。


 蚊人(モスキート)の敏捷性は、その飛行能力にある。

 羽根をもがれた妖精守護霊(トーテム)は、もはやどこにも逃げることができない。


蚊人

「ヂ、ヂグジョウゥゥゥ! ゴンナァァ、ゴンナ小便野郎ニ羽根ヲ斬ラレヂバッタァァ!」

オビト

「君は、間違った真名(まな)を唱えられて、強くなったんだ。 でも、君は強くならない方が良かったんだ。 強くなって、身体を大きくしたものだから、飛んでいる君を剣で斬り落とすことは容易だったよ」

蚊人

「ヂ、ヂグジョウゥゥゥ!」


 蚊人(モスキート)が、床を這いながら逃げ出そうとする。


アスカ

「逃がさないわよ! 紅蓮の戦士『不動の解脱者(ストロングフリーダム)』!」


 『不動の解脱者(ストロングフリーダム)』が蚊人(モスキート)を踏みつけて押さえつける。

 もともと戦闘力の低い蚊人(モスキート)だ。その素早さを封じてしまえば、容易に捕まえることができる。



 そこへ――。


 その部屋のドアが開き、この屋敷の主人のモルト=ヒストリアが、ボディガードとともに入って来た。


モルト

「や、オビト(、、、)! そこで何をしている!」

オビト

「はい。 お通しされた部屋で待っていたところ、閉じ込められて、謎の守護霊(トーテム)に襲われました。 何とか部屋を脱出してここまで逃げて来たのですが、また守護霊(トーテム)に襲われて、いま、ようやく撃退したところです」

モルト

「な、何? そ、そうか。 それは災難だったな」

アスカ

「その守護霊(トーテム)というのが、こいつです。 ペラペラと喋る守護霊(トーテム)だったわ」


 すると、ボディガードが「どれどれ」と言って蚊人(モスキート)の様子を見る。


ボディガード

「なるほど。 こいつが『蚊人(モスキート)』という奴か。 よし、後はこちらに任せてくれ。 その守護霊(トーテム)は、こちらで処分しよう」


 アスカは、蚊人(モスキート)をボディガードに引き渡そうとした。


 ナーニャが、このボディカードを指さして「ママ、マンマ」などと言っている。


ヒロミ

「待って、アスカ。 少し気になることがあるの」


ボディガード

「どうしたんだい? そうだ、オビト君たちは裸じゃないか。 早く何か着たいだろう。 だから、早く、『蚊人(モスキート)』を渡してくれないか」


 そう言われて自分が裸であることを思い出し、羞恥したアスカは、早く蚊人(モスキート)を引き渡して服を借りようとした。


ナーニャ

「ママ、マンマ、ダメ、マンマ」

ヒロミ

「ナーニャ、どうしたの? そうか―― ダメ! アスカ! ソイツが術者(マスター)よ!」


 さきほどまで笑顔を作っていたボディガードが、顔を強ばらせる。


ボディガード

「何を言う! 根拠もなしにデタラメを!」

モルト

「その通りだ、ヒロミ君! そうやって簡単に人を疑うのは無礼だぞ!」

ヒロミ

「いいえ、間違いなく、あなたが術者(マスター)よ。 ならば聞くけれども、ヒストリア将軍、どうしてあなたは、私がヒロミだと分かったの?」

モルト

「それは――君たちとはさっき会っている。 見ればひと目で分かるだろう」

ヒロミ

「そうかしら。 アスカもそう思う? 今の(、、)私たちの姿を見ても、そう思う?」


挿絵(By みてみん)


 ヒロミは、髪をかき上げてポーズをとった。


 オビトは現在20歳、アスカとヒロミは30歳を過ぎた熟年の姿だ。この屋敷に来た、少年少女の姿は、面影程度にしか残っていない。


ヒロミ

「私たちが守護霊(トーテム)に襲われる前、ヒストリア将軍に挨拶したときは、間違いなく12歳の姿でした。 それが、ここまで身長体重が変化しているのに、将軍はひと目で私たちが私たちだと分かったわ。 どうしてかしら?」

モルト

「……」

ヒロミ

「それに、ボディガードさん。 あなたはこの妖精守護霊(トーテム)の名が『蚊人(モスキート)』であると知っていました。 それは、どうしてかしら?」

ボディガード

「それは――そうだ、アスカ君がそう言ったんだ。 それを聞いて自分は、その守護霊(トーテム)の名が『蚊人(モスキート)』であると――」

ヒロミ

「本当に? それは嘘よ。 だって、アスカは、この蚊人(モスキート)のことを、ここでは『守護霊(トーテム)』としか呼んでなかったわ。 それなのに、あなたは、その名が『蚊人(モスキート)』であると知っていたわ。 それで私は、どうしてか気になっていた(、、、、、、、)のだけれども、謎はすべて解けたわ。 あなたが守護霊(トーテム)の名を知っていたのは、あなたがその術者(マスター)だからよ!」

モルト・ボディガード

「「……」」

 アスカとヒロミが、それぞれの守護霊(トーテム)を召喚した。

モルト・ボディガード

「「ひっ!」」


挿絵(By みてみん)


 モルトとそのボディガード、2人とも戦闘不能(リタイア)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ