ナーニャ
【登場人物紹介】
年齢は物語独自の設定です。必ずしも史実と一致するものではありません。
オビト皇子
少年時代の聖武天皇。12歳。今年のアニメで気になったのはゴールデンカムイ。意外と北方グルメに興味津々。
アスカ=ウィスタプラン
少女時代の光明皇后。12歳。今年のアニメで気になったのはリコリス・リコイル。やっぱり女の子が活躍する物語は素敵。
ヒロミ=ドグブリード
少女時代の県犬養広刀自。12歳。今年のアニメで気になっているのは機動戦士ガンダム水星の魔女。推しのキャラが焼トウモロコシになってしまったというので、憤慨している。
コウセイ皇子
高円広成がモデル。15歳。今年は、アニメよりも鎌倉殿の13人の方が気になる。
ヒロヨ皇女
高円広世がモデル。12歳。実は未だにプリキュアを見ているのだが、そのことは絶対内緒と兄のコウセイ皇子に口止めしている。
高円広成と広世は別人説を採用し、広世は少女にTSしています。これは物語独自の設定ですのでご容赦ください。
時は天平――処は異世界――
ここはキヨミハラ学院――皇族貴族の子女が通う都の名門校だ。
シキ皇子に王子が生まれたというので、コウセイ皇子とヒロヨ皇女がお祝いに行く道中のことだ。
供に行くは、オビト皇子とアスカ=ウィスタプラン、そしてヒロミ=ドグブリードの3人。
幼児の泣き声がした。
何事かと目をやると、見ため3歳ぐらいの幼女が地面に伏して泣いている。
アスカ
「どうしたの?」
声をかけると、幼女は「ママー! ママー!」と言うのみだ。
その下に、1個の髑髏があった。
コウセイ
「君の、ママなのかい?」
幼女は、ひたすらに地面に伏して髑髏を抱えながら「ママー!」と泣き叫ぶのだから、間違いないようだ。
髑髏はだいぶ古いもののように見え、地面から生えた筍に眼孔を貫かれている。
コウセイ
「これは、痛ましい」
そう言って、コウセイは、地面の髑髏に手をかけようとした。
オビト
「待って、兄さん。 その髑髏からは強い霊気を感じます。 僕の陰陽劍が反応しています」
オビトの持つ陰陽劍は、彼がメスリ丘古墳を探索したときに習得した霊剣である。これがあると多少の妖怪であれば斬り伏せることができる。また、霊気を感得することもできる。このため、オビトは、旅に出るときは、いつもこの2本の劍を携帯することにしている。
ヒロミ
「まさか妖怪?」
オビト
「分からない。 でも、その髑髏から怨気は感じない。 霊気が強いだけかもしれない」
コウセイ
「そういうことなら心配ないかな。 そして、これがこの幼女の母親ならば、このまま野ざらしにしていくわけにはいかないね」
そう言って、再び髑髏に手をかけようとするコウセイを、今度は妹のヒロヨが止めた。
ヒロヨ
「いけません、お兄様。 皇子たるもの、そのような不浄な物にお手を触れては。 そのようなことは、オビトにでもやらせれば良いのです」
この物言いにアスカとヒロミが激高した。
アスカ・ヒロミ
「「オビトも皇子よ!」」
ヒロヨ
「あら、伝統あるストンリベル家の下で生まれたお兄様と、どこの誰とも知らない下女から生まれたオビトちゃまとを、一緒にしないでいただけないこと?」
コウセイ
「ヒロヨ! 止さないか!」
ヒロヨ
「だって、お兄様――」
コウセイ
「『だって』じゃないよ。 僕とオビトは、同じカール帝から生まれた兄弟なんだ。 いくらヒロヨでも、オビトを馬鹿にするような物言いは許さないよ」
兄に叱られるヒロヨを見て、アスカは勝ち誇ったように、露骨に嘲笑う。ヒロミは、プイと横を向く。
このような女同士の喧嘩を横目に、オビトは髑髏の眼から筍を抜いてやり、道中の間食にと持参していた干飯を供えてやった。
これで幼女が泣き止んだ。というより、幼心なりにここで泣き止まねばならぬと観念し、悔しさを堪えているようだ。
オビト
「お姉ちゃん、これでいいかな?」
幼女
「……」
答えない(答えられない?)――
ただ、じっと髑髏とにらめっこをするのみだ。
ここは人通りも少ない林道の中、これほど幼い少女を一人にしておくわけにもいかない。
アスカ
「お姉ちゃん、名前は言えるかな?」
幼女は、「ナーニャ」とだけ答えた。
それ以外は、何を聞いても、「どこから来たの?」と聞いても、じっと黙って答えない。
コウセイ
「やむを得ないな。 ヒストリアさんの邸宅まで連れて行って、その後のことはヒストリアさんと一緒に考えようか」
ヒストリア家というのが、シキ皇子の王子を預かっていて、コウセイらが目的地としているところである。
シキ皇子の王子の母親がヒストリア家の者なので、王子もそこで養育されているのである。
ヒロヨ
「ナーニャちゃん。 お姉ちゃんたちと一緒に来れる?」
これに対しては、「ママ」と呼ぶ髑髏と一緒に居ると言い出すかもしれないと思ったが、ナーニャはコクリとうなずいて、素直についてきた。
皇子と王子
皇帝の子は、皇子または皇女。皇子の子または皇子の子は、王子または王女と表記しています。
シキ皇子は、オーム帝の第7皇子です。コウセイやオビトから見て、祖母の兄弟にあたります。