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ブラッドファング  作者: ことりピヨネ
20/72

18.待機席のアマンダ

「……うお!! やべえ、もう八時じゃねえか!」


 FBCUとの合同演習の当日、俺は寝坊した。


 セットしておいた時計のアラームは、何の役に立たなかった。

 あわてて着替えて部屋を飛び出し、洗面所に飛び込む。


「んぁ、おぁよぅ、ふぁぐおぁん」


 歯ブラシくわえたまま、たぶん朝の挨拶をしていたジョンジーを押しのけ、顔を洗って髪を整える。最速で身支度を終えた俺は、上着と銃をホルスターごと持って、ガレージに向かった。


 バイクに飛び乗り、マーガレットの住むアパートまでぶっ飛ばす。


「んぇ。おはようごじゃまふぁ……ふぁ、え? もう演習の日? 今日?」


 寝ぼけまなこのマーガレットは、ジョンジーとそっくりの口調で挨拶してきた。カレンダーを見もしないそのだらしない生活態度は、いいかげん改善してくれなものだろうか。

 

 俺は大急ぎでマーガレットに仕度をさせて、GMCのユーコンデナリのハンドルを握らせた。


 以前、ジョンジーの事務所で使っていた車は、のれん分けの際にマーガレットが所有することになっていた。目を閉じながらでも運転できるのはいいのだが、一緒に乗ってるこっちは生きた心地がしない。守ろう、安全運転。


 それでも俺たちは、どうにか設定された時間ギリギリに、本日の演習場として指定された廃工場までたどりついた。


 だだっぴろい駐車スペースに車を止めるなり、マーガレットはトイレに行ってしまった。せめて俺だけでもと思って先に行くと、警察用の指揮車両が並んだ横にFBCUの隊員がぞろぞろいやがった。即座にハンターの証明書と、今日の参加証を見せて身元を確認してもらった。


 んでもって俺は、来客席―――安っぽいパイプ椅子と、顔なじみのハンターが顔を並べている場所まで案内された。


「やあ。ファング」


 俺は声をかけてきたアマンダの隣に座り、ようやくひと息入れることができた。


「ずいぶん遅い登場じゃないか。アペロからデセールまで、朝からたっぷり楽しんできたってわけかい?」

「ただの寝坊だよ。運転手もねぼすけでな。おかげで胃袋がすっからかんだ」

「それはそれは」


 アマンダは足元のバッグから、工具箱みたいなサイズのどでかいサンドイッチケースを取り出した。


「うちの母親が持たせてくれたんだ。まだ時間があるから、今のうちによかったら食べるといい」

「そりゃありがたいが、いいのかよ」

「かまわないさ。うちの母親は私の月収も知らないくせに、いまだに娘に遠足用の弁当箱を持たせたがるんだ」


 親ってのは、どこの家庭も変わらないものらしい。


「金持ちの母親でも、弁当なんか作るもんなのか」

「そりゃあ作るさ。ヒマだからレストランのシェフを呼んで、料理を習ってる。学生時代には、よく失敗作の処分を手伝わされたもんさ」


 アマンダが、スッと立ち上がった。二メートル超えの巨体で日影ができた。


「飲み物をとってくるから、先にやってるといい」

「んじゃ、ありがたく」


 俺はケースを開けて、中身をいただくことにした。


 ずらりと並んだサンドイッチは、すべて異なる具材がはさまっていた。なんとまあ、贅沢なことか。


「うめえ。うめえ」


 特に美味いのは、ターキーサンドだった。

 七面鳥の肉の薄切りに、クランベリーソースをかけてパンではさんであるやつだ。感謝祭では定番料理のひとつだが、長年愛されているメニューのひとつだけあって、これがまたすこぶるうまい。


 しっかりとした肉質で味の濃い七面鳥の肉に、フルーツ特有の甘酸っぱさが加わると、ボリューム感にさわやかな味わいが加わって最強だ。

 ソースは果実をジャムにする際にアップルジュースで煮ているらしく、元のクランベリーらしさを損なっていないところもポイントが高い。パン生地の中にう埋もれているナッツの歯応えも、これがまたいいアクセントになっていて、ひと噛みするごとに滋味が口の中に広がっていく。まさに大自然の恵みといった満足感で、俺の胃袋からは文句のひとつの出てこなかった。


 具材に金がかかっていると、やはり味が違う。

 賞味期限の近づいた食材を処分してやろうと客の隙をうかがう、道端の飲食店で出てくる料理なんぞとは比べ物にならない。まったく金持ち様々だ。


 貧乏臭くサンドイッチを噛みしめていたら、警察の設置したコーヒーサーバーのほうから両手にカップを持ったアマンダが戻ってきた。


「ほら。コーヒーでよかったかい」

「ああ、そっちは?」

「白湯だよ」

「そいつは体に良さそうだ」


 意識たけぇ。

 俺の太腿ぐらい二の腕が太いだけあって、飲み食いしてるものが健康的だ。


「ところで、誰かと一緒に来たんじゃなかったのか」

「ああ。ペギーが来てるぜ」


 どこ行ってんだ、あいつ。


 トイレに行くとか言ってたけど、マーガレットはそれっきり行方不明だ。

 もうすぐ開会時間が迫っているというのに、どこをほっつき歩いてるやら。まあ、そこらじゅうにFBCUの連中がいるから、いつでも捜索願いは出せそうだけど。


「来てはいるんだが、どっかそのへんでも時間潰しでもしてるんじゃねえかな」

「オセロットは? 来ていないのかい」

「うちのボスならお留守番だぜ。あんなの連れてきたら、開会の合図と同時にビール開けちまうだろ」


 アマンダは、くつくつと笑いをこらえきれない様子だった。


「たしかに。あいつならやりかねない」

「だろ」


 そんな話をしていると、防護ベストを身に着けた警官がやってきた。


 警官はアマンダの証明書を確認すると、軽く敬礼した。


「お噂はかねがね伺っております。本日は、狙撃班との同行をお願いしたいのですが」

「構いませんよ」


 アマンダは空になったサンドイッチケースをバッグに押し込むと、ひょいと指にひっかけて持ち上げた。


「そういうことなら、自分用のライフルを車に積んであるんだ。取りに行っても、さしつかえはないかな」

「ええ。でしたら、準備をどうぞ。誰かに運ばせましょうか?」

「ご心配なく。執事に運ばせます」


 笑みひとつ浮かべない警官は去り際に、俺をちらと見た。


 俺はアマンダの顔を見上げた。


「あいつ、俺のことをおまえの執事だと思ってるんじゃねえかな」

「いいね。月収はいくらがお望みかな」

「あいにく、そういう仕事は向いてねえんだ。けどまあ、サンドイッチの分ぐらいは働いてもいいな」

「一人で大丈夫だよ。ただし、雇用契約に興味があったら、いつでも」


 アマンダはグローブみたいにデカい手でバッグをお手玉する。


「そういうわけだから、今日は貴賓席から下々の活躍を拝ませてもらうよ」

「間違えて撃ったりしないでくれよ」

「歩くときには少し背伸びしてくれると助かるよ。そのほうが狙いやすい」

「毎日あのサンドイッチを食わせてくれたら、俺の背も伸びるかもしれないぜ」

「テイクアウトの注文は、うちの母親のキッチンまでどうぞ。それじゃあ、またあとで」


 駐車スペースに向かうアマンダを見送って、俺は時刻を確認した。


 あと数分ほどで、十時になるだろうか。

 予定では、そろそろ演習が始まる時間のはずだ


「あいつ、どこ行ってんだよ」


 俺は周囲を見回したが、マーガレットの姿はどこにもない。


 いまだに影も形も見えないって、どういうことだよ。

 車を止めたところから、目と鼻の先だぞ、ここ。


 探しに行こうとしたが、時すでに遅し。

 俺もう、知らねえからな。


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 一人称の練習で書いています。

 読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。

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・校正をなさってくださる方へ

 お手数ですが、ご指摘等をなさっていただく際には、下記の例文にならって記載をお願いいたします。


(例文)

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>~(←ココに修正箇所を引用する)

この部分は、(あきらかな誤用orきわめてわかりにくい表現or前後の文脈にそぐわない内容、等)であるため、「~(←ココに修正の内容を記入する)」と変更してみてはいかがでしょうか。

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 以上の形式で送っていただければ、こちらで妥当と判断した場合にのみ、本文に修正を加えます。

 みだりに修正を試みることなく、校閲作業者としての節度を保ってお読みいただけると幸いです。

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