ココロ
「───柳田くん!!ちょ、ちょっと良いですか…!?」
教科書、ノートを鞄に詰め込んでいる時に突然呼ばれた名前。
声の方に視線を向けると、そこには頬を赤く染めた女の子が立っていた。
「…何?」
俺が声を出すと、その子はビクッと肩を震わせる。
「…あ、あのっ…ちょっとついてきてくれませんか…!?」
言われるがままに、その女の子についていく。
気づけば、屋上に辿り着いていた。
風が強く、視界が髪の毛で塞がれる。
「…あのっ、私、同じ学部の寺岡愛奈って言いますっ!」
寺岡愛奈。そんな子がいたことを初めて知る。
「…どうも。柳田心結です。」
「ぞっ、存じております!!」
その子はペコペコと頭を下げる。
「それでっ…あのっ…私っ…。───好きです!!!!」
強い風が吹き付ける。
俺は、その言葉にただ呆然とするだけだった。
未だに頬を真っ赤にして俯いている女の子。
「───寺岡…さん?」
恐る恐る声をかけると、バッと顔をあげる。
「は、はいっ!!」
「…ごめん。」
俺のその言葉に、寺岡さんは悲しそうに笑った。
「で、ですよね!知らない人にいきなり好きだって言われてもっ…困りますよねっ…?」
寺岡さんの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
俺はぎょっとする。
「…わっ!!ごめんなさいっ!泣くつもりなんてっ…!!」
慌てているその子に、俺はハンカチを手渡す。
「ご、ごめんなさい…。」
ハンカチで目を覆う寺岡さん。
「…ごめん。俺…人を好きになれないんだ。」
その言葉に、目を真っ赤にした寺岡さんはこちらを見る。
「…好きになれない?」
「…うん。だから寺岡さんが嫌いとかそんなんじゃないから…。ごめんね。」
俺はそう言って、その場を去ろうとした。その時───
「───じゃあ、好きにしてみせます!!!」
その言葉に、思わず足を止めた。
「あ!いや、そのっ…好きになって貰えるように頑張るので…友達になってくれませんか!?」
真っ直ぐすぎる言葉。瞳。それが俺のココロを動かした。
人を愛するって…人に愛されるって
そんなに幸せな事なのか?
君に出会えて初めて
それが分かるような気がしたんだ───。




