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赤い絨毯に深紅の染みを落としながら歩く青年。
旅は大変なこともたくさんあったが楽しかった。
色々な経験ができ、思い出ができた。
強敵とも出会えた。
友もできた。
このまま旅人として、フリーの傭兵として、のんびり生きていくのもいいかもしれない……そんな風に思うことさえあった。
豪奢な装飾の施された大きな白い扉が目の前に現れ、足を止める。
だが知ってしまい……そして忘れかけていた怒りと憎悪の火が燻った時には……もう遅かった。
《真》が見せた、不条理な理由で殺されていく人々の姿に父やマイが重なり……
許すことなど……できるはずがなかった。
この向こうに旅の終着点がある。
だがそんな感慨など、微塵も感じさせない無表情のままで青年は再び足を踏み出した。
謁見の間……そこは宗主の許可なく足を踏み入れることの出来ない支配を象徴する間。
白を基調としたシンプルな内装だが、所々に見える装飾は、宗主の持つ権力に見合った豪華な品々ばかりだ。
赤い絨毯の先には玉座。そしてその後ろに彼らが崇める女神の彫像が短剣を胸の前で両手で持ち、空に掲げている。
宗主である彼女は玉座にいた。
いや……待っていた。
今は誰にも入室の許可は下りていない。
当然、扉は固く閉ざされていた。
にもかかわらず、男は唐突に現れた。
裂帛の気合いも、扉を抉じ開けようとする音もしなかった。
ただ剣線が走り、そして扉は崩れ落ちた。
舞い上がる粉塵と共に、濃霧のようにゆっくりとまとわりつくような殺気と憎悪が広がる。
「射てっっ!!!」
近衛の副隊長が声高に叫び、数十の矢がその入り口へと放たれた。
粉塵が晴れる……そこには返り血に濡れた男が立っており、足元に矢の残骸が散らばっていた。
瞬く間に斬り払い、叩き落としたのだ。
まさに神技……
暗く光る双眸がこちらを向く。
精鋭揃いの近衛兵達に悪気が走り、息を飲む音が聞こえた。
だが、ここで怯んでいるわけにはいかない。
敵は幾人もの信徒を殺し、隊長であるカンナをも斬った憎き敵である。
(引くわけにはいかない……)
「弓を置き、剣を抜け!!敵は一人だ!!我らが誇りに賭けて必ず討ち滅ぼす!!かかれぇぇ!!」
扇形に展開していた騎士達が猛然と彼へと襲いかかる!!
朱色の混じった銀光が翻る……
先頭の騎士を袈裟懸けに斬り払い
横から来た突きに一歩引き避け、胴へ横薙ぎの一閃
後方からの袈裟斬りを見もせず半身になり避けながら喉への突きを放つ
これを悪夢と呼ぶべきか……
それとも地獄絵図?
近衛の兵は精強な者達ばかりで、質の良い剣を携え、軽鎧を身に付けている。
そしてそんな兵達が数十人で敵一人と戦っているというのに……
一太刀も浴びせられず……一太刀で骸と成り変わっていく……
血だまりが広がり、血風が部屋に満ちる。
「おのれ、おのれぇええええ!!!」
近衛の副隊長が腕を交差させ振り絞る……2本の剣が対の袈裟斬りとなって降り注ぐ……
その一撃が彼の身体に届く前に、彼は副隊長の横を抜け……居合いによる一撃を放っていた。
「かはっ……くそ……悪魔め……」
数歩、ヨロヨロと足を動かし……そして倒れた。
残るは一人……。




