第17話
「これより、入学式を執り行いたいと思います」
その言葉に、ざわついていた会場が一気に静まり返る。
入学式は、新入生、在学生代表、教師、学園長のみで執り行われるイベントだ。
新入生代表の挨拶、在学生代表の挨拶、学園長のありがたいお言葉。その後、そのまま学園設備の説明等に移り変わる予定だ。
新入生代表の挨拶、ゲーム内では次期王のフレドが行なっていたが、今のフレドは当然大人なので、一緒に入学してきた誰かがやるのだろう。
「新入生代表の挨拶」
そうアナウンスがされると共に、ステージに誰かが上がる。
その人物は、ステージ中央でスポットライトに照らされたマイクに近づくと、手に持っていた紙を広げ読み上げる。
「本日は、この様な場を用意していただき、ありがとうございます」
その人物は、先ほどまで隣にいた《マリア・ベアトリーチェ》だった。
どうりで移動している途中から見かけないわけだ。そして、静かなわけだ。と、1人納得をする。
マリアは緊張している様子はなく、むしろ楽しそうに、スラスラと読み上げていく。
「新入生代表、マリア・ベアトリーチェ」
そう言葉を締めくくると、アリアは可愛らしくペコリとお辞儀をする。すると、周りはテンプレよろしく拍手をマリアへ贈る。
マリアはその拍手に嬉しそうな顔をして、ステージを降りていった。
「あの子、魔法局の秘蔵っ子らしいよ」
拍手に紛れて、そんな噂話が聞こえた。
「魔法局って……国家機関の?」
「そそ、国家機関の」
乙女ゲームの主人公の《ミア・エルドラード》は庶民の出のため、そんな所の秘蔵っ子という話は無かった記憶だ。
しかし、魔法局……?
何処かで聞いた記憶があるが、思い出せない。
「在校生代表の挨拶」
アナウンスの声で、ハッと現実に帰る。
噂話もいつのまにか終わっていた様で、マリアの話をしている人は、誰もいなかった。
ステージを見れば、おそらく3年生であろう男子生徒がマイクの前に立っていた。
カンペなどは無い様で、鋭い眼差しを紙ではなく、新入生達へ向けている。
両の手を後ろで組んでまっすぐと立っているその様子は、さながら軍人の様だ。
「諸君、入学おめでとう」
キーーーン……
圧のあるその声は、叫んでいる様子は無いのに思いの外大きく、マイクがハウリングする。
「オアジ、声」
そう声が響く。
見れば、司会をしていた教師からマイクを奪っている男子生徒が居た。
おそらく、他の在校生だろう。
オアジと呼ばれた生徒は「ムッ」と言ったのち、マイクからニ歩下がり、声を先ほどより抑えめで話し始めた。
「すまない。改めて諸君、入学おめでとう」
今度はハウリングをする事は無かったようだ。
チラッと司会側を見れば、男子生徒の姿は無く、マイクも司会をしていた教師に返した様だった。
「以上、在校生代表、オアジ・カヴァリエーレ」
アリアの時と同じように、挨拶が終了するや否や拍手が響く。
オアジは拍手を気にする様子はなく、ステージを降りていった。
そう言えば、在校生代表は現在の生徒会メンバーだった記憶だ。そして、挨拶をするのは、生徒会のトップ、生徒会長。
つまり、あのオアジ・カヴァリエーレは現在の生徒会長なのだろう。
オアジを目で追えば、脇に用意されていた椅子に座った。
その近くには、先ほどの男子生徒、そしてその他に数人の生徒がおり、あそこにいるのが生徒会メンバーだろうと予想できる。
「学園長、祝辞」
アナウンスのその言葉とともに、今度はステージ脇から1人の老人が出てきた。




