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モーモー太郎伝説  作者: おいし
第二章
46/122

【第46話】同盟軍

「……439号。」


 それが、解放軍リーダー・ヨサクのかつての識別番号だった。

 その言葉の重みが、静まり返った空間に深く響いた。


「私は――王宮から逃げ出した桃人です。

 人間への憎しみを植え付けられ、戦うためだけに作られた存在でした。

 でも……ある時、疑問を抱いたんです。

 “本当に人間は憎むべき敵なのか?”と」


 ヨサクの目が細められる。どこか、遠い記憶を思い出すように。


「命からがら王都を抜け出し、私はこの“解放軍”を立ち上げました。

 もう誰にも、私と同じ思いをさせたくない。そのために……」


「そうだったのか……」


 サブロウが目を伏せ、呟くように言った。


 そして、核心に迫る問いを投げかける。


「……それで、解放軍は――あの桃人たちを、どうやって仲間にしてきたんだ?」


 ヨサクは少しだけ表情を引き締め、静かに答える。


「ホレスの洗脳は、非常に強力です。

 最初はどうしても……力で抑えるしかありません。

 けれど、その後は対話です。真実を語り、心に訴えかける。

 それで、少しずつ仲間を増やしてきました」


「……あんな野蛮な連中、説得なんて通じるのか?」


 サブロウの声には、かつての戦いで命を落とした仲間たちの影があった。


 だがヨサクは、迷いなく首を横に振る。


「実証済みです。今ここには、すでに100名以上の桃人たちが加わっています。

 ――どうですか、サブロウさん。共に手を取り合えませんか?」


「……」


 サブロウは沈黙した。目を伏せ、言葉を選びかねていた。


 そんな彼の肩を、ぽん、と叩く者がいた。


「おい、サブロウ。もういいんじゃねぇか?」


 桃十郎が笑いながら言う。


「なっ、お前……軽すぎるぞ」


「軽くなんかねぇさ。俺もずっと思ってた。

 このまま殺し合ってたら、終わらねぇ。

 それに……解放軍の戦力が加われば、王政を倒せる可能性は一気に広がる。

 やってみようぜ。」


 サブロウはしばし黙った後、深く息を吐き、うなずいた。


「……分かった。

 お前がそこまで言うなら――乗ってみよう。同盟の話」


 ヨサクの目がわずかに和らいだ。


「ありがとうございます。

 あなた方と手を取り合うことができれば、私たちは平和に一歩近づけます」


 サブロウとヨサクは、互いに右手を差し出し――固く、力強く握り合った。


 こうして、レジスタンスと解放軍の同盟軍が、ここに誕生した。



「では――すぐにでも行動を開始しましょう」


 ヨサクの声が、空気を引き締める。


「まず狙うのは、“西の町”。現在、桃人約100名に占拠され、最も被害が拡大している地域です。

 被害の拡大を防ぐためにも、最優先で叩きます」


「……数が多いな。

 確かに、同盟を組まなきゃ厳しそうだ」


「その通りです。西の町は、王政が掌握している中でも最大規模の拠点。

 ここを解放できれば、流れは一気に変わります。

 民を救い出し、占領を終わらせましょう」


 そう言うとヨサクはアジトの大広間へと歩を進めた。

 そこに立ち、深く息を吸い込む。


「――解放軍諸君!! 戦闘準備だ!!」


 次の瞬間――


「おおおおおおおお!!」


 空間を揺らすような咆哮がアジトに響き渡る。

 整然と並ぶ戦士たちの瞳は、燃えるようにまっすぐだった。


「すげぇ団結力だ……」


 桃十郎が思わず呟く。


「……ああ。俺たちレジスタンスも、負けていられないな」


 サブロウもまた、拳を強く握りしめた。



その日のうちに、サブロウはレジスタンスの全戦力――100名を招集。

ヨサク率いる解放軍200名と合わせ、総勢300名が揃った。


 ――その矛先は、西の町。

 悲しみに沈む最大の占領地を、希望の旗で塗り替えるために。


 いま、反撃の狼煙が――上がる。


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