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プロローグだけで満足  作者: 大地D


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10/10

アイドルのみかた



私はアイドル


ファンの熱い眼差しを一身に受ける職業


凄まじい熱量に負けないよう頑張る日々


ステージ上で踊っていても

必ずファン一人ひとりと目を合わせる


皆は私を見つめ続ける

私も皆を見つめ続ける


何百何千という瞳が私の虜になっている

なんとも言えぬ満足感に包まれる



ステージから降り舞台袖に捌け

クールダウンを兼ねて少しゆっくり歩く

身体を包む熱気が冷めやらぬ内に楽屋に到着する


背筋に寒気を感じる……

心の熱気は覚めずとも汗で身体は冷えてしまったのだろうか?

アイドル衣装を脱ぎ、汗を拭う


汗が引き鼓動も呼吸も日常を取り戻す

アイドルからただの女の子に戻ったのだ


スタッフの皆さんに挨拶をし家路に就く

帰路の途中、街灯の明かりが瞬く


街灯もチカチカと瞬きをしているみたいだ

その時、不意に違和感に気付く

自分の瞬きと街灯の瞬きとは

タイミングの違う視界の暗転


まるで強制的に瞼を閉じられてるよう

ゴミや虫でも付いたのだろうか?

思わず目を触る

自分の瞼以外なにも指に触れない


ライブで興奮し血圧云々で少し視界揺らいだのだろう

街灯の元で立ち止まり深呼吸をする

ジジジと電灯が鳴る

街灯が瞬く

勝手に視界が暗転する


明らかにおかしい

意図せぬタイミングで瞬きをさせられる

親指人差し指2本の指で瞼を上下に開く

目が乾こうが瞬きを拒否する


私は決して瞼を閉じてない

街灯が瞬こうとも家々の光は消えない

しかし私は視界は暗転する


もう一度確認する

私は決して瞬きをしていない


目が乾く、瞼を強く締め、涙が溜まる

視界は暗く、俯く、不意に景色が見える



私を見つめるナニかの視界



私が私を見ている?誰かに見られてる?

ドッキリ?監視カメラ?サプライズ?


いや……

閉じた瞼の内側に映像を写す技術なんて知らない

何が起こっているのだろう


乾いた瞳が潤い、目を開ける

目を閉じる前と同じ光景が広がる


暫く佇んでいたが視界はもう勝手にしてない



その後何も起こらずマンションに到着した


!?


アイツがエントランスのドア前でウロウロしている



数ヶ月前に路上で背後から突然肩を掴まれ

ファンです!

の言葉と興奮した鼻息と唾が顔面に飛んできた


とても不愉快になりしかめっ面をしたら

人の表情なぞ気にしてない様子で

私のどこが好きかどの時期からのファンだとか

とにかく口を挟む隙無く捲し立ててきた


堪らずに踵を返し全力で走って数十秒の交番に駆け込む


息を切らして交番に駆け込んだ私を見たお巡りさんが

慌てて外を睨み付ける


アイツはバツが悪そうにそそくさと退散していった

お巡りさんに状況を説明して被害届を出そうとしたが

事情聴取とか受けて大事になるのも面倒くさくなってきたので諦めた


パトロールは強化してくれるらしいので

あの時は風貌だけ伝えて終わった



暫く姿を見せないものだから忘れてたが

間違いなくアイツだ

見られたら私だとバレるだろう

バッグに入れてた帽子を目深に被ってみた


なにもしないよりマシだろう

目さえ合わせなきゃ

今のジャージ姿とスッピンじゃ分からないだろう

ライブ終わりで会場のシャワーを浴びてきたからな


とにかく地面を見つめよう


目さえ合わせなきゃ…目さえ…目が…合う……


何で?なんで目が合うの?


見たくないアイツの顔が目の前いっぱいに広がる


近い


目が離せない


興奮してる気持ち悪い顔だ


まだ目が離せない


足早に通りすぎるしかない


目が離せない


首が真横に曲がる


目が離せない


目と目が合い続ける


通りすぎてようとしたら首の軋む音が脳に響いた

捻りに限界がきて痛みがはしり咄嗟に後ろ歩きになる


この歩き方なら交番まで1分ほどか

アイツはナニか興奮して喋り続けてる

こっちはそれどころじゃない


目が離せないのだ


視界がまた一瞬だけ暗転する


この1分で数回暗転した


なぜ暗くなる


何度か転びそうになりながら

交番に辿り着いた


お巡りさんは目を丸くして驚いてたが

あの時のお巡りさんだったのが幸いした


アイツと私の間に入り視界を遮ってくれた


目が自由になる


街灯の時と違い今度は明らかに作為的なナニかの介入を感じた



視界を、目の制御を、奪われたのか?



何故醜いアイツの顔を見続けなければならないのか


何故私が選ばれたのか


どんな技術で私の視界を奪うのか


分からない事しか分からない

理解が及ばないなら考えなきゃいい


対処法だけ考えよう


短い帰路の時間で考え実行する


1、目を常に閉じ続ける

目を強制的に開けられてしまう


2、瞬きを高速でする

見にくくなるだけで強制力は変わらず


3、見ることを意識しない(虚空を見る)

一定の成果あり

意識しない事で制御を取り戻す



これからの行動方針が決まった

死んだ魚の目の様な

目を開けているのに何も見ていない

どこを見ているか分からない様にする


それから私のアイドル人生が変わった

虚空を見つめる空虚なアイドルとして生きなければならない


表情を表にも心にも出さず

視線は中空を見つめ

ダンスは一流

アイドル口上も完璧


暫くの間、精神がぐちゃぐちゃになったが

慣れた頃には世間でギャップアイドルとして

案外受け始めた


感情を殺し

表情を消し

心まで死なせる



何故このような手記を書いているのか

文字や文章でも感情を殺す訓練をしているからだ


これを読んだ人はアイドルらしからぬと思うだろう


これが私のアイドル道


こうやって生きて


アイドルという夢を叶え続けるのだ




原生……への視界…ジ……ク実……始

同…完了 目の…御を…得

対……制……喪失

対……変更……験を継続

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