第1章 : レグラ王国とジェポンネ帝国との同盟の樹立。
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毎日は毎日……何も変わらない……
しかし私はすべてを変えなければならない……
新女王……メグミ女王はそう考えていた……
国王であれば玉座に着くまでに三時間かけて支度をするのが常だったが……女王にはそれがただ予算を無駄遣いするだけの愚かな儀式にしか思えなかった……だから起床時間を遅らせ、支度といえば体を清めて衣服と化粧を整えるだけにした。
誰が三時間も準備するものか……そう言いながら貴族たちの前で国王の法令を引き裂いた……
先代のヘンリー国王が国民に「王は神の代理人であり崇めるべき存在だ」と信じ込ませてきたようだったが……
彼女が即位してからは自ら民のそばに寄り添うようにした……だからこそ民にこれほど慕われているのも無理はなかった……
「今日の予定は? ユイスカ……」
「はい……今日は書類の準備をしつつ、ジェポンネのシラヌイ皇帝陛下との国交回復のために船で向かう準備を整えます……」
「わかった……では船乗りと日程の調整は私が手配する……執事とメイド全員を呼んでちょうだい、自分で取り仕切るから……」
「かしこまりました、女王陛下……」
彼女は美しかった……女神のようだと誰かが言っていた……
彼女は目の前のことに対して毅然として真剣で、常に先を見据えていた。
権力に奢らず、何か事が起きれば自ら名乗り出るため貴族たちが止める暇もないほどだった……
「どのくらい行ってらっしゃるの?」
女王の寝室の中で、夫の……グラハム公配が自ら衣服を整えながら言った……
クーデターから三年が経った今……グラハムは刑期を終えて出所し、女王の夫として本格的に役割を果たしていた。
「普通の航海なら三か月かかるところだけど……魔法で改造したエンジンを積んだ船を造ったから……一か月、いえ、三週間もあれば着けるでしょう……」
女王は布を結んでいた……グラハム公配が見たことのないものだった……
それは帯だった。女王が着ていたのは着物だった……
しかもそれを自分で着ているのだから驚きだった……
「ジェポンネには五か月いるわ……その間は城のことをお前に任せるわね……」
「行ってほしくないわけではないけれど……五か月も離れているのは……寂しくなってしまいそうだ……」
公配が妻の元へ近づいて抱きしめた……
「じゃあ、五か月待てたら……特別なご褒美を差し上げますよ……」
それを聞いたグラハムはすぐに甘い笑みを浮かべた……女王は軽くその頬を叩いた……
「そんなこと考えるなよ、バカ…」
「すまない……」
「女王陛下……そろそろお時間です……」
二人は手を離して小さく笑い合った……出発前にそっとキスをして……
港で……
ジェポンネへの使節の旅には当然、随行の一団が必要だった……今回旅を共にするのは、クロエ、ルイス、ルイスの私兵たち、そして宮廷魔法使いが三人だった……
第二位宮廷魔法使い、永冬のリオ。
そして第四位と第五位、奈落の双子、ドロシーとダリア。
「エンジンは連れていかないんですか?」
リオが聞いた。しかし女王はそっけなく返した……
「あいつを連れて行くくらいなら、今すぐ海に飛び込んだほうがましよ……」
リオはよくエンジンにちょっかいを出していたが……女王にそこまで言われるとさすがに言葉もなかった……
船乗りたちと兵士たちは船の上でもう準備を整えていた……
「お姉様!」
「やあ!」
姉妹の……メグミ女王と第六位宮廷魔法使い(まだ二つ名なし)のクロエは互いに抱き合った……
「一年以上ぶりよ……本当に会いたかった……」
女王はクロエをぬいぐるみのように抱きしめた……クロエも同じように抱き返した……
「ところで……お姉様の着物……」
クロエはすぐにそれが訪問用の着物……訪問着だとわかった。でも一応聞いてみることにした。この世界では日本とどう違うのか気になって……
「ああ……これは本当の母のものよ……殺される前に、大きくなったら着なさいって残してくれたの……」
「そうなんですか……」
半ば忘れかけていたことではあったが……女王が忘れることは決してないだろう……
「まあいいわ……あなたの服も可愛いわよ……」
「ありがとうございます……私もお姉様みたいな服を着てみたくて……」
「似合いそうよ……じゃあ今すぐ着替えに連れていってあげる……」
一面では強い意志と素早い決断力を持つ毅然とした女性でありながら……それでも彼女が多くの人に愛される理由は、こういった優しさにあるのかもしれなかった……
「道中お気をつけて!!」
「女王陛下メグミ!!! 女王陛下メグミ!!!」
見送りに集まった民が心から叫んだ……
女王は港に集まった民と顔見知りに向かって小さく手を振った。そして……
冬の昼下がり……レギュラー王国初の鉄の船、その名をエアトリス号が港を出発した……
目指す先は……ジェポンネ帝国……




