故郷
「『ワイド』は人の名前さ。
前のリーダーでな。お前に似た、愚直な男だったよ」
グレンが言うと、ハワードも言った。
「懐かしいな。
トリフェイン。故郷にいる間は怒鳴らないでいてやるよ」
トリフェインは、パーティの仲間と一緒に故郷への旅に出た。
故郷は、旅立つ前と同じだった。
貧しく、そして、魔物を恐れていた。
町の人口は千人程度の小さなものだった。
町にトリフェインが現れたとき、町の者は驚いていた。
鎧をまとった者たちが現れたことで、戦争でも始まったのかと思ったのだ。
町は、これ以上の面倒ごとを避けたかったのだ。
トリフェインが、自分がこの町の出身であることと、魔物退治のためにパーティを連れて来たことを説得して、初めて町に歓迎された。
トリフェインが知っている者も多くいたが、
「背が高く痩せた男というイメージだったからな、分からなかったよ」
という言葉が返ってきた。
自分ではそれほど変わっていないつもりであったが、ハワードたちに鍛えられ、自分の体つきが変わっていたのだと自覚した。
ただ、トリフェインの母は「なぜ、帰ってきた」と泣いてしまった。
「なんで、怪物退治に帰ってくるの。貴方の父も同じことを言っていた。
そして、魔物に殺されてしまった……」
トリフェインの母は、トリフェインの兄の家族と一緒に住んでいた。
トリフェインは言った。
「私は魔物退治のために、この鎧と盾をいただいて都市へ行ったのです」
母は言った。
「どうして、そこで鎧や盾を売ってしまわなかったの。それなりの金額になったはずです。
せっかく、町から出られたのに」
母は、まだ泣いたままであった。
母に向かって、グレンが声をかけた。
「トリフェインは死にません。彼は仲間を得たのです」




