131/132 (6/7)
坑道を進み地下へ降りると、広い空間に出た。壁に埋まる石が紫の光でその空間を照らしていて、僕は懐から装置を取り出し奥へと向かう。
「よお、アラン」
目の前にルークの姿があって、彼はいつもと同じ口調で僕に声をかけてきた。
「ルーク……何をしてるの?」
「なんだよ、せっかくの再開だぜ?嬉しくねえのか?」
「今は忙しいんだ。再開なら後で祝おう」
「その装置か?それをどうするんだ?」
「……鉱脈に打ち込むんだ」
「で、どうなる?」
「石が力を失って、じきに土地が枯れる。人々は住む場所を失うかもしれない」
「なるほど、だから王はあんなに必死なわけか。ここに俺を置いて正解だったな」
「君は戦いたいだけだろ?あとでやろう。これを打つまで待っていてくれたらいい」
「行くなら俺を倒して行けよ。一応ここを守るよう言われてんだ」
「本気で言ってるの?」
「ああ、仕事はしねえと」
「はぁ……悪いけど、付き合ってられない」
僕がルークの隣を通り過ぎようとすると、彼は僕の顔を鷲掴みにして頭部を地面に叩きつけた。
「連れねえこと言うなよ。さっさと力を開放しろ。また殺されたくなかったらな」
「くっ……離してよ……」
「力づくで振りほどけ。そんで俺を突破して見せろ。できねえなら死ぬぞ?おい!アラン!」
僕は躊躇いながらも四つの力を開放し、彼の手を払って立ち上がった。僕が手元に召喚された黒い剣を一度振るうと、ルークは少し距離を取り、彼も気力を開放した。
僕は剣を上段に構え、ルークを睨みつける。
「君に、僕の何が分かる……」
「他人のことなんか知らねえよ。知る必要もねえ」
「人類の未来を背負ってるんだよ……。沢山の人がつないだ想いを、僕が託されたんだ……」
「そうか……同情はするぜ。ここで俺に負けて、全部台無しになるんだからな」
「僕が負ける?君なんかに?笑わせないでよ」
「あ……?なんだと?」
「特に理由もなく戦ってきた奴なんかに、僕が負けるわけないだろ。ただ強い人と戦いたい?そんな幼い考えで、僕の前に立つなよ」
「確かに理由なんてねえよ。理由がねえと強くもなれねえ、お前とは次元が違うからな。背負ってるもの?考え?そんな下らねえこと比べてるような奴に、俺が負けるわけねえだろ!」
ルークに人の言葉なんか通じない。突破して見せろというのなら、分かったよ。君が今ここで言ったこと全部、後悔させてやる。
体から流れた血が足元に溜まっていく。それらが剣の瘴気を吸って黒く淀み、僕の思考に合わせて蠢く。やがて線形に固まった無数のどす黒い血が四方へ飛び交い、それに合わせて気力を放出すると、空間にできた歪が血の線と交差して、交わった点を目印に対象までの軌道が丁寧に計算されていく。僕が上段に構えた剣を前方へ突き出すと、放たれた気力が空間を打ち砕き、大気に刻まれた歪さえ切り裂いたとき、僕の瞳には確かにルークの姿が映っていた。彼の表情を見て色々な考えが脳裏を巡り、急激に押し寄せてきた悲しみに、この一振りが友人を屠るものであることを自覚する。彼ならどうせ耐えるだろうという推測に根拠はなく、今度こそ本当に絶命するであろう理由だけがいくつも浮かんでくる。
これが本当に最後になるだろう。悲しみを振り切り、僕はその技を放った。一列に並べられた混沌がルークの放つ気力の波動に飲まれ四方へ反射すると、その先で今度は僕の生み出した歪に飲まれ反射していく。反射を繰り返した線は目印にされた交点へ集まり、目標へ向かう無数の線が複雑に重なり合い、螺旋を描く起動が道しるべとなったとき、その中心を貫く本命の線が一列に並べられた。二重螺旋混沌一列。これが僕の最後に到達した、彼を倒すための牙だ。




