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翌日早朝、カオスの城の一室にて大きな揺れを感じ目を覚ました。
僕を含む城に滞在していたカオスの主力はすぐに女王の元に集められ、彼女の指示を待つ。
その場には蒼炎、白狼、ブラッドのベルク、アイカ、皇国からは僕、アキト、第四席、そして第一席の姿まである。
女王は全員の前に立ち口を開いた。
「昨日、アランの生存が確認され我々の勢力に加わった。彼は間違いなく、今この世界で最大の戦力だ。これで作戦を加速できる」
彼女の言葉にその場の全員の視線が僕に向いた。僕はただ前を向いて、女王の言葉に耳を傾ける。
「ただ、加速せざるを得ない状況になったのもまた事実。これから主力を三つの部隊に分け、まずはカオス、ブラッド、皇国の三勢力を統一する。アランにはカオスでの防衛を任せるが、それ以外は各自が行きたい場所を選んでもらって構わない」
カオスでの防衛、これが意味するのは恐らく先ほど上陸したことが予想されるアポピスとの戦闘。僕一人では勝てないし、万が一勝てたとしても討伐してしまっては再び魔物の進化を促す。
女王は口元に笑みを浮かべた。
「さて諸君、世界を獲るよ」
彼女の言葉に全員が応え、それぞれが自分の向かう場所を決めた。結果、ブラッドへはアキト、蒼炎、白狼の三名。皇国へは第一席とベルク、アイカ、そして女王自身が向かうことになった。カオスに残るのは僕と第四席。僕の役目は彼女と共にアポピスを無力化すること。対魔物、僕には最適の役目だ。
皇国騎士第四席、リサと二人で昨日訪れた街まで来ると、アポピスの襲撃により街は更に荒れていた。
地面の揺れと共に、地中に潜っていたアポピスが僕たちの目の前に飛び出すと、リサはその巨体を見上げ唖然としている。
「これと、戦うのですか……?」
「僕が引き付けるので、リサさんは……」
後方で隙を伺うように言おうとしたが、剣を抜き構えた彼女の表情を見て、一度言葉を飲み込んだ。
「やるしかありませんね……。この剣が効けばいいのですが……」
「剣……」
アポピスは口から紫色の液体を吐きながらこちらへ向かってきているが、リサは教団の力を開放し剣に雷を纏わせるだけでその場から動こうとしない。
迎え撃つ気か……?それとも、あまりの巨体に回避しきれないだけかもしれない。以前のアキトと同じように、彼女を抱えて魔人化した脚力で逃げることもできるが……考えている猶予はない。彼女に何か策があるとして、捨て身であることは目に見えている。
僕は魔人化の能力を開放し彼女の腕を掴むと、同時に足に力を込めた。リサは一瞬僕を睨みつけたが、構わず彼女の腕を引く。僕たちはアポピスの攻撃をぎりぎりで回避したが、腕に少しだけ紫色の液体がかかっている。その部分が激しく痛み、肉が溶けだしているのを見て、僕は第一期イコル教団の力で血の剣を生成すると一度腕ごと斬り落とした。こうしておけば後は魔人の力で再生できる。
「な、何をしてるんですか……」
「いや、少し毒を浴びたみたいで……。貴女こそ、どうする気だったんですか?正面から受け流せるような攻撃じゃない」
「口の中なら剣が通るかと……」
「その前に毒で全身溶かされて終わりですよ。それに、そんな剣で斬ったところでたいしたダメージは与えられません」
「いえ、この剣は女王から受け取ったもので、魔物の力を抑える効果があるようで……」
「そういうことは事前に……次が来ますよ。手を」
「あっ、はい!」
僕がまたリサの手を引いて魔物の攻撃をかわし、その手を握ったまま四つ全ての能力を開放した。斬り落とした腕も既に再生し、その腕で黒い剣を持った。
「僕があの体を貫くので、リサさんは傷口を狙ってください」
「わ、分かりました」
「行きますよ!」
僕は彼女の手を引いたまま大きく跳躍し、アポピスとの距離を詰めると、黒い剣をその硬い甲殻に突き立てる。同時に気力と血を放出し、零距離から混沌一列を放った。一列に並べられた混沌はアポピスの巨体を貫き、その傷口にリサが赤い剣を突き刺す。同時に目の前では赤い雷撃が迸り、魔物の力を抑制する効力が雷となって魔物の体内を駆け巡った。
アポピスは大きく怯む様子を見せ、僕たちは同じ工程を何度も繰り返していく。次第に魔物は動きを鈍らせ、遂にはその巨体が地に伏した。
僕とリサは顔を見合わせ、それから健闘を称えあった。




