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十四話 アマネ、作戦開始

暴走したドラゴンに連れ去られ、ドラゴンを暴走させているのが反竜教であると知ったいろは。彼女は、反竜教の存在を鎮圧隊のメンバーに打ち明ける決心をした。

そして、いろは達が出払っている頃のアマネの行動で、いろは達にピンチが迫り来る。いろはに訪れる、衝撃の事実とは?

 いろはがしばらく周囲を警戒していると、エリカと篭波がやって来た。

「いろはちゃん!大丈夫?」

「何があったんだ?」

2人の顔を見て安心したいろはは、一息ついてから話し始めた。

「どうやら私は、ここに連れてこられたみたいで……。目が覚めたら、男の人が半分解除されている暴走竜の暴走状態を、戻そうとしていたんです。それを阻止しようとしたら、どうやら逃げられてしまったみたいです。」

その話を聞いた篭波は、驚いて聞き返す。

「暴走させてるやつを見たのか?」

「いや、現行犯ではないですけど、暴走状態に戻すって言ってました。」

すると今度は、エリカが聞いてきた。

「その男の特徴、覚えてる?」

「と、特徴は……その……。」

反竜教の事を伝えてもいいものか判断できず、言葉に詰まるいろは。エリカに様子を伺われ、打ち明ける決心をしたが、黒滝やリョウもいた方がいいと思い、竜種園に戻ってから話すことにした。エリカと篭波について行くと、竜車が止まっている近くで愛竜を撫でている黒滝の姿があった。いろは達に気付いた黒滝は、こちらに歩み寄って声をかけた。

「おう、竹野。大丈夫だったか?連れ去られたように見えたが?」

いろはが起きた事を説明すると、いろはが逃した空竜は、自分が解放したと教えてくれた。

 竜種園に戻り、鎮圧隊のメンバーと園長のリョウを集めたいろはは、竜神から聞いたということは伏せた上で、反竜教について話した。

「今日、私が攫われてから目にした男は、反竜教のメンバーです。」

「反竜教?聞いたことないわね。」

リョウが初耳であることを言うと、皆それに同意した。

「前に聞いた事があるんですけど、ドラゴンの地位を上げる事が目的の教団?らしいです。」

「地位向上か……抽象的だな。」

黒滝に促されて、先を進める。

「なんでも、ドラゴンは賢い生き物だから、人間がもっと崇めるべきっていう主張らしいです。」

あまり具体的な話ではないが、エリカが信じてくれた事で、他のメンバーも信じてくれた。

「で、いろはちゃんは、その教団のメンバーが暴走に絡んでいるって言いたいのね?」

「はい。」

「その根拠はあるのか?」

篭波に根拠を尋ねられ、理由を答える。

「服装です。黒い服の上から羽織った黒いマントに、赤で特徴的な紋章が入っているんです。今日見た男も、その服装でした。」

いろはの話を聞いた一同は、更に質問を続ける。

「それは、どんな紋章なんだ?」

いろはがホワイトボードにざっくりしたデザインを書く。本物は隅々までデザインが細かいので多少異なるが、だいぶ似せることができた。

「なるほど。そのドラゴンは、三冠竜ということでいいのか?」

いろはの絵を見た黒滝が聞く。

「そうですね。クスタの特長とも似てるので、そう考えていいと思います。」

いろはが答えると、ある可能性が頭に浮かんだエリカが言った。

「……相手も三冠竜を狙っているとしたら厄介ね。」

場が静まり、皆がその可能性の先を想像する。

「……まあ、現時点では三冠竜の所在は知られていないだろう。しばらくは隠す方向で行った方がいいな。」

黒滝の意見に皆が賛同し、解散になった。

 いろは達が出払っている頃。アマネは、海竜の子竜達の部屋を掃除しながら、三冠竜の様子を観察していた。

「あれが三冠竜……。子竜の時でも、一眼でわかるのね。」

その時。どこからか自分を見つめる視線を感じた。その主は、三冠竜に寄り添っている一匹の海竜だった。

「あの海竜、なんで三冠とあんなに親しそうなのかしら?」

引き続き見つめていると、海竜の視線が少し鋭くなったような気がした。危ない予感を察知したアマネは、視線を逸らして掃除している風に振る舞う。するとその時、部屋の入り口が開いて卵堂が顔をのぞかせた。

「アマネ嬢、少し休憩しよう。事務所へおいで。」

「……はい。」

もう少し観察したかったが、声をかけられては仕方がない。休憩後にまた来ようと、部屋を後にした。そのアマネの姿を、リーヴァが怪しげに見つめていた。

 休憩後。アマネは短刀をツナギの袖に隠し、海竜の部屋に戻ってきた。やや緊張したような雰囲気のアマネに、少し身構えるリーヴァ。クスタを背中に乗せると、プールに入って様子を伺う。するとアマネは、少し暗い表情で部屋を出て行った。リーヴァは、プールに近い場所で警戒を続けた。

「あの海竜。邪魔ね。」

そう呟いたアマネは、ある事を閃いて海竜の部屋に戻った。中に入ると、こちらを警戒しているリーヴァに近づいて囁いた。但し、短刀の刃先をのぞかせながら。

「その子を渡して?そうすれば、あなたの命は取らないわ。」

言葉は伝わっていないようだが、雰囲気から悪意を感じ取り、唸りながら威嚇をするリーヴァ。クスタは、そんな様子のリーヴァを心配するように見つめる。

「ま、そうよね。それじゃあ、あなたが代わりに来てくれる?でないと、2匹とも刻むわよ?」

アマネの言葉が理解できるクスタは、訳は分からないが自分が狙われ、リーヴァが守ってくれているという事を理解した。そして、リーヴァを心配する様に寄り添っている。あくまでアマネに敵対する姿勢のリーヴァは、アマネを睨みつけて唸っている。

「なーんてね。」

しかし、そう言ったアマネが、背中に隠した左手を出し、もっている瓶のふたを親指で飛ばし、中身の粉をあたりに振り撒いた。途端に意識を奪われ、その場に倒れ込むリーヴァ。クスタは、咄嗟にプールに飛び込んで無事だった。アマネはリーヴァを抱きかかえて部屋を後にした。

「フッ。次はコイツね……。」

 いろはが卵孵舎に戻り、クスタの元へ向かうと、しょんぼりしているクスタを目にした。

「ただいまクスタ。どうしたの?」

いろはに気付いて顔を上げたクスタの目には、大粒の涙が浮かんでいた。

「ちょ!どうしたの?」

急な涙目に慌てるいろは。クスタの頭を撫でると、涙ながらに訴えてきた。

「リーヴァが……リーヴァが……。」

確かに近くにリーヴァが見当たらないとは思っていたいろはは、クスタに優しく言った。

「クスタ、落ち着いて。リーヴァがどうしたの?」

すると、クスタの口から衝撃の言葉が出てきた。

「連れてかれちゃったぁぁぁ!」

その言葉に、一気に緊張が走る。

「クスタ。連れてかれたってどういう事?連れて行った人は見た?」

泣き出してしまったクスタを撫でながら、いろはは優しく問いかけた。クスタは、涙ながらにリーヴァが連れて行かれた時の事を話した。そして、アマネが犯人であるということも話したのだった。

「そっか。アマネちゃんがね……。」

クスタは、おそらく自分が狙われていて、リーヴァが自分を守ってくれたのが原因だと言った。

「クスタ。今日はお家に帰ろうか?一緒にいた方がいいかもね。」

いろははクスタを連れて事務所へ行き、卵堂にリーヴァがいなくなった件を報告し、クスタを連れ帰る許しを得た。

 その頃。アマネは、眠ったまま連れてきたリーヴァに、暴走強化を施そうとしていた。リーヴァを連れてきたのは、廃寺の一角にある彼女のパーソナルエリアである。起きて動かない様に檻に入れ、材料を調達するために、教団長のいる本堂跡へやって来た。

「少しいい?頼みがあるのだけど。」

引き戸を開けて中に入ると、教団長が言った。

「ほう?三冠竜を仕留めた報告の前にか?」

痛いところをつかれたアマネは、それを隠す様に言った。

「暴走させるのにちょうどいい個体を見つけたから、材料が欲しいのだけど。」

アマネの言葉で彼女の考えを察した教団長は、不敵な笑みを浮かべて言った。

「いいだろう。竜石はあの箱の中だ。」

アマネは、指示された箱から竜石を4つ取り、持って来た袋に入れる。そして去り際に言った。

「1ついいかしら?まだ子供のドラゴンを暴走させるとどうなるの?」

「なかなか面白い事を聞く。子供は成長しきっていない。未完成な体に無理をかければ、その結果はドラゴンといえど、長くは持つまい。」

「そう。ありがとう。」

そのまま部屋を出て、リーヴァの元へ向かった。そして前後の足についているヒレに竜石を1つずつねじ込んだ。

「これで、色彩剣士(カラフルセイバー)と三冠がおびき出せる。そこで2人とも始末するわ。」

竜石が、透明感のある紫色の瘴気を漂わせながら、リーヴァの幼い体を蝕み始めていた。

 翌日。いろはがクスタを連れて出勤すると、朝からエリカに声をかけられた。

「あっ、おはよういろはちゃん!……大丈夫?」

あまり元気のない顔をしていたのか、心配そうに声をかけられる。

「あ、おはようございます。だ、大丈夫ですよ?」

本当は大丈夫ではない気持ちが隠しきれず、反応が鈍くなってしまう。すると、エリカがやってきてこう言った。

「嘘。表情暗いし、元気ないよ?事情は聞いたから、今日は休んで探しに行きな?心配なんでしょ?」

その時、入り口から卵堂の声が聞こえてきた。

「おう、いろは嬢!頼もしい助っ人を連れてきたぞ!」

いろはが外に出ると、チャオを連れた蓮が立っていた。

「チャオ!」

いろはが駆け寄ると、嬉しそうに顔を擦り寄せてきた。

「エリカ嬢から聞いたかい?今日は休みにしとくから、クスタも連れて探してきな。」

いろはは、深く頭を下げてお礼を言った。

「ありがとうございます!」

いろははチャオの鞍に跨ると、前にクスタを座らせ、手綱で合図をした。

「チャオ、お願い。」

「ギャア!」

チャオの元気の良い返事と共に、いろはは出発した。チャオの外出は、卵堂が許可を取ってくれた様だ。竜種園で管理されているドラゴン達は、職員による申請の許可が降りると外出が可能になる。正門で、卵堂に渡された許可証を見せると、門が開いて外に出ることができた。外に出ると、腰に巻いたソードベルトから、心音が話しかけてきた。

「まずはどこにいくの?」

「竜神池。竜神様の力を借りようと思う。」

いろははそういうと、チャオに前進の合図を出した。

お読みいただきありがとうございます。

久しぶりの更新となりましたが、今後も更新予定ですので、よろしければお付き合いください。よろしくお願いします。

また現在、本作との同時連載として、「隣のテーブルの料理男子」を小説家になろうにて公開中です。よろしければ、そちらの方も読んでみてください。よろしく願いします。

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