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特例措置

累計1000ptに達しました。読んでいただいて有り難うございます。

「待っていたわ、アーロン様!」


 昨日通されたギルドの応接室に入ると同時に声をかけられた。

 部屋の中には二人の獅子獣人、それも苦虫を噛み潰したような顔をしているおっさんとまさに姫騎士と言ったような格好の美しい女が居た。


 声をかけてきたのは姫騎士の方で、どうやら昨日ここでギルドマスターと言い争っていた王女様のようだった。

 おっさんの方は勿論ギルドマスターだ。


「どうした、そこに座れ」


 ギルドマスターは自分の座っている向かいにあるソファーを指差しながらぶっきらぼうに言った。

 逆らう理由も無いのでソファーに腰を下ろすと何故か王女様が俺の隣に移動してきた。

 …この王女様なんて名前だっけ?


『獣王国ライオル第1王女エヴァンジェリンです。どうやらアーロンに気があるようですね』


 …いやいや、昨日貶した相手だぞ。好かれる要素がないだろ。


『高貴な身分の者が気安く接してきた身分の低い者に惹かれるのは物語のお約束(テンプレ)ではありませんか』


 お前…サポートAIのくせにちょっと俗物過ぎないか?


ザルマの聖典(サテライトレーダー)で調べた結果、彼女は王女という身分でありながらそれを鼻に掛けない出来た人物のようですね。頭がお花畑のセリアよりよっぽど優良物件ですよ』


「おい、ヴィータ…()()()()()()の娘を貶すことは許さないぞ…!」


「はい?ヴィータ…?」


「小僧、何をブツブツ言っている?」


「あ、いや!なんでもない!」


 ヴィータと小声で話していたが熱くなってつい声が大きくなってしまったようだ。

 ギルドマスターとエヴァンジェリン王女が怪訝な顔でこちらを窺っている。


「フン、まあいい。お前をここに呼んだのは特例措置について話すためだ。

 お前は冒険者見習いでありながら曲がりなりにもファフニールを1体倒している。どんな手を使ったかは知らんがな。

 それに2体目も木っ端微塵にしたという、到底信じられるようなことじゃないが。

 そもそも調査隊がまだ帰還していないのに―――」


「叔父様!今更グチグチ言うなんて女々しいわね!!」


「グッ、だが俺はお前の事を心配してだな!」


「そんなもの要らないわ!それに心配してるのは私じゃなくて父様にする言い訳のことでしょう!!私知ってるのよ、父様が私と勇者を婚約させようとしてるって!!」


「な!?だ、だがお前は婚約するなら強き者をと、勇者カイルは魔王を打ち倒した最強の英雄だぞ!」


「ええ、強い者と言ったわ!だからここに居るじゃない!獣王国の災厄ファフニールを打ち倒した者が!!それにあんな貴族主義の男は強くても御免だわ!!」


 えぇ!?ちょっ、何だか妙な事に巻き込まれてないか!?


『フフン、言った通りではありませんかアーロン?やはり王女は貴方に気があるのですよ』


 いや、明らかに勇者避けに使われてるだけだろ!


「…兄貴は勇者にファフニールの討伐の依頼をして、その褒美としてお前との婚約を進めようとしている。

 その小僧の言う通りにファフニールが2体倒されているのなら勇者との婚約の話も遅れることになるだろう…」


「本当に!?」


「だからその得体の知れない小僧に関わろうとするのを止めろ!」


「いやよ、これは特例措置として決まったものだもの!それに得体の知れないからこその特例措置、でしょ?」


 やっと特例措置に話が戻ってきたようだ。

 …うん、さっきの婚約云々は聞かなかったことにしておこう。


「それで、特例措置って奴の内容を聞きたいんだが」


 ギルドマスターが俺の事を忌々しそうに見ながら説明を始めた。


「…小僧、お前はファフニールを倒し実力を証明した。それほどの実力を持つ者を冒険者見習いにしておくのは力を尊ぶ獣王国としては看過することが出来ない、よってお前を冒険者としてギルドに登録する。

 だが、冒険者見習い制度は実力だけでなく人柄も見るための物だ。

 お前が冒険者に相応しい心根を持っているか分からん、よってお前には監視を付けることになった」


「それが私よ!」


 隣に座っていた姫騎士装備のエヴァンジェリン王女が立ち上がりながら説明に入り込んでくる。


「ファフニールは王妃であった私の母の仇でもある魔物だった。そんなファフニールを倒した貴方は獣王国(ライオル)の英雄と言えるわ!

 そんな貴方に監視を付けるんだもの、失礼にならないように王女である私が貴方と共に行動し人柄の判断をさせてもらうわ!」


 監視が必要ってのは分かるとしても王女自ら監視役をやるってのは意味が分からないぞ!


「うふふ、心配しなくていいわ。私は力を尊ぶ獣人の姫よ、並みの冒険者より強いわ!それに王家に伝わるこの装備!今の私なら勇者パーティーのメンバーにだって楽々選ばれるでしょうね」


 俺が困惑しているのを心配したと勘違いしたのか的はずれなフォローをしてくる。


「いや、王女様が監視役をする意味が分からないんだが…」


「フン、エヴァが望んだのだ仕方なかろう…っ!」


 ギルドマスターが不貞腐れたような言い捨てる。

 このおっさんがギルドマスターで大丈夫なのか…?


「王女がそんなことしてたら王様が怒ったりするんじゃないか?」


「父様は勇者の結婚式に向かっているから居ないわ、だから今は私が王宮で一番偉いのよ!この特例措置も叔父様と相談(言い争って)して私が決めさせてもらったわ!」


 えぇ…獣王国の王宮とギルドちょっとガバガバすぎでしょ…

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