話の終わりと、ある話が始まった日
「ふわっはー………長すぎます!」
そこは薄暗い場所であった。
そこにあるのは、大きな一人掛けのソファーと、大型スクリーンのみ。明かりはない。
先ほどまでその場所を照らしていた、ソファーの前の大型スクリーンに灯っていた明かりも消え、ソファーに背を預けていた彼女は眉間を揉みほぐしながら、ゆっくりと息をはいた。
「御父様も、さいってーです………女性泣かせっぱなしじゃないですかぁー」
彼女は、先ほどまで両親の馴れ初めとやらの記録を延々と見ていたのだ。
非常に長く、長すぎたその馴れ初めとやらは、その記録を流す、異なる世界から来たスクリーンの付喪神でさえ「いつまで流したらいいのー?」とあくびを噛み殺すくらいに長かった。
彼女も次第に意固地になって、途中から……魔神によるプレゼンツの両親の縁組みようやく始まった辺りから、ついに突っ込みはじめたものだった……長すぎて、しびれをきらして。
「この縁組みこそ、御母様と劇的に出会って運命を感じたお話だっていうから見たのに、前振りが長すぎるんですよ!」
彼女の父は魔族。
彼女の母は妖。
父の尻を蹴飛ばしつつ叱咤もしつつ、それを悦ぶ父。そんな夫婦の馴れ初めとやらを見てみたい、彼女は母の国へ遊びにいったときにできた友人にぼやいてみたのだ。
彼女の友人は、遥か年上の、魔神に仕える巫女であった。友人は、上司(魔神)に話をしたら(脅したら)記録も見せてくれるだろうといった。そしてそれは現実になり、彼女は長すぎる馴れ初めとやらを見たのだ――観客として。
結果、得た感想は「御父様酷い。おばあ様格好いい。魔神最低」であった。
――ちょっと、魔神のお目付け役のおばあ様に頼んで、冥府へ遊びにいかせてもらって、ちょっとかるーく魔神を叩こう、あまりに酷いから。
両親の馴れ初めとやらを見た彼女は、このあと魔神さまを叩きに冥府へ遊びに行くのだが――まさか自分が、両親の馴れ初めより長い、魔神の独神時代を終わらせてしまう道を辿ることになるとは、このときは思っていなかったのは………また、別のお話。




