11月9日:願いを支えに
「お前の幼なじみは助けられるかもしれねぇ」
トークルのその言葉に、動揺する
ミリアにまた……会えるのか……?
「あいつを……助けられるかもしれない……」
「ああそうだ、もちろん情報が足りんから憶測も混じってる。だが、可能性はある」
「ミリアを……」
ダンテは机に視点が固定されたように俯き、ボソボソとうわ言のように口を動かす
「……あいつと最後に話したのは、軍学校に行く前だった」
俺の生まれ育った土地、イテルは首都から見て東南東に位置している
そこから南に4つ程の村を超えた先は……戦争の最後方だった
子供心に村を……家族を戦火から守りたいと思って……軍学校に行くことにしたんだ
「なのに帰ってきたら……俺が命を賭してまで守ったものは……関係の無いことで話すことすら出来ずに無くなってて……」
「……」
「父さん……母さん……ッア」
ダンテは勢いよく空を向き、大声を……
「水覆」
「ガボボボボボ!!!」
……上げる前にトークルの水魔法が口を覆う
しかし抑えきれず、部屋に反響するほどの慟哭が響く
トークルは立ち上がって、ダンテの横に立つ
「ガボッガボ」
「……水魔法はまだ解かん、勝手に解ける前に冷静になれ。あとなぁ……」
トークルはダンテの襟を掴んで顔を向かせる
「お前にはまだ、救える奴がいるだろうが!!!」
「……!」
水覆が時間経過で消える
「確かにお前は両親を失った!だがな、ここにそれをやったやつがいて!しかもそいつはお前の幼なじみ……ミリアを殺してない可能性が高い!ならなぁ……!」
トークルはダンテを投げるように襟から手を離し、勢いに押されたダンテはその勢いのまま椅子に落ちる
「そんなことは元凶をぶん殴ってから考えやがれ!絶望すんのはその後でいい!」
トークルの言葉を聞いて
何か自分を絞め続けていた記憶が、少し軽くなったような
なにか別の重圧が背に乗った気がした
「……スゥー」
息を吸う
目を閉じ昔を思い浮かべる
父さん……母さん……ミリア……
今はもう戻らない、戻れない記憶
でも……あいつだけなら帰らせてやれるかもしれない……!
「フゥー……」
目を開ける
右手で頭を少し叩き、痛みで頭を冷やさせる
ダンテの目に少しではあるが、光が灯る
「……トークル、その資料を開けてくれ」
「休憩は、無しで大丈夫か?」
「ああ、問題ない。だって……」
強く拳を握りしめて胸を叩く
「とっととあいつを助けてやらないと行けないからな」
………………
…………
……
そこからは案外早かった
資料からは実際にその場所に子供が集まっていた事が確定
すぐさまクフェル中将に報告すると、明日の朝には俺たちを含めた少人数で突撃することまで決まった
「この場所に集めてただけなら人数からして即分かるじゃろ?その周辺を警備していた衛兵にも話を聞いておくが……恐らく別の出口、例えば地下水道を通る道でも作られとるじゃろうな」
「面倒ですね……」
「ひとまず今から明日までワシの権限で街の出入口全てに検問所を用意しよう、列車も休業させておく」
「……そんな権限まであるんですか?」
「なぁに、ちょっとしたお話をするだけじゃよ」
「そんな怖い顔しないでくださいよクフェル中将」
……
…………
………………
「さて……明日の装備の準備しとくか、今日使った短剣の入れ替えと補充もやっとかねぇと」
「俺も銃借りたからなぁ……後で調整しとかないと……」
「ん?あの銃お前の鉄魔法じゃなかったのか?」
「最初に鹵獲された六丁の中の一つがここにあったんだよ、まぁそら実践したのが俺ってだけで戦場以外でも調査するのは当然だしな」
「へぇ……まぁ縁ってやつかね」
二人で装備の点検、補充を行う
「あ、そういえば。明日クルスにどう説明する?」
「あ〜……一応黙っておきてぇな、多分フレクシ兄弟のどっちかはクルスの里襲ったやつだろうし」
「とはいえ俺たち2人が離れたら理由を聞かれるんじゃないか?特に今日お前は負傷したし……」
「頬に関してはもう痛みはねぇよ。あと一応、誤魔化すだけならいけるぞ?ちょっと待ってろ」
トークルはそういいながら部屋を出て……荷物を抱えて戻ってきた
「……その箱なんだ?」
「セネアに頼んでた贈り物」
「……あ、そういや言ってたな。何頼んだんだ?」
「んー……まぁ、明日渡す時にってことでな!」




