09.人化とお使いと
アメリアがついに人化した!
うん、今朝起きたら《ユーリ、見てみて~》って言われてね。
何が始まるのかと思ったらいつか見たみたいにアメリアの全身が輝きだして。
それで輝きが収まったと思ったらそこにケモミミ、尻尾の全裸な美少女がいた。
私より背が高い! それに何がとは言わないけど私より大きい。何故・・・。喋り方からして私より絶対子供だと思ってたのに私よりって何故!!
とりあえずシンシア師匠のところにいって適当な服を見繕ってもらってアメリアに着せた。
アメリアは村娘っぽくなった。それでなんか納得出来ないから例のタブレットもどきをシンシア師匠に借りてアメリアのステータスを見てみることにした。
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名前:アメリア
年齢:14歳
種族:フェンリル
体力値:フェンリル成人雌平均8000 アメリア6000 人化5500
魔力量:フェンリル成人雌平均20000 アメリア12000
職業:
適正職業:剣士、格闘家
スキル:水魔法・雷魔法・風魔法・光魔法・闇魔法
バッシブスキル:身体強化・物理攻撃力増加・物理防御力増加・魔法耐性
称号:
神殺し、地を揺らす者の末裔
世界樹の加護
ユーリの眷属
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見るんじゃなかった・・・。後悔先に立たずとはこのことだ。
称号怖いよ!! フェンリルって聞いたときに若干そうかなって思ったよ。
でも違うって信じてた。信じてたのにアメリアってばまごうことなきあのフェンリルの関係者じゃん。うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん。
「ユーリ、どうしたの?」
「・・・あ、人化したら普通に喋れるんだ?」
「うん!!」
主人の心配、不安など何処吹く風。
背後から私の首に手を回して抱き着いてくるアメリア。
すごく・・・やわらかいです・・・。
「ユーリ、ユーリー」
頬擦り始めた。
なんか悩んでるのがバカらしくなってくる。
まぁそうだよね。アメリアはアメリアだ。気にすることないか。
「ユーリ、あそぼ」
「いいけど、何して?」
今日は予定ないからね。遊べるよ。
「シンシアがお使い頼むって言ってた。近くのマウリの町で食材買ってきて欲しいって」
そう言えば言ってたような気がする。
町か。行くなら何気に私、これが初めての遠出になるな。
シンシア師匠の家の周りしか知らない。
うんうん、お出かけか。わくわくしてきた。
「よ~し! じゃあいこっか」
「うん!!」
気合を入れて歩き出そうとすると体が浮く感触。
何が起こった? 理解する前に景色がどんどん後ろに流れていく。
「へ?」
「わーーーーい」
何? えっ? えっ?
なんだこれ。焦るな焦るな。冷静になるよう努める。
ふと気付くとアメリアの顔が近い。
私はどうやらお姫様抱っこされているーーーーーー!!?
「アメリア、降ろしてーーー」
「やだーーーー」
懇願空しくお姫魔抱っこされたままどんどんシンシア師匠の家から遠ざかる。
一定の距離までくると感じる。変な感覚。これは世界樹の結界を抜けた合図だ。
シンシア師匠に聞いたけど、この森は近代日本でいうところの屋久島程度の広さがあって中心に世界樹があり、それを守るため世界樹を覆うように中心付近に結界が張られているらしい。
誰が結界を張っているのかは教えてくれなかった。
結界を張った何者かとシンシア師匠、世界樹が認めた者以外は立ち入る事の出来ない聖域。
認められていない者はそこを訪れてもただ森の続きがあるだけのように見えるし、歩いてみてもやはり普通の森になるんだそう。実は世界樹はこの世界にあるようで無くてこの世界から見える月にあるとかなんとかシンシア師匠が言っていた。冗談だとも言っていたけど。でもどうも本当なんじゃないかなって気がする。口ぶりがかなり怪しかったんだよ。
ちなみに私が前にオークに襲われたのは勿論結界の外だ。
結界内は魔物は存在しないのだけど、外に出るとそこかしこに魔物達が闊歩している姿が見受けられるようになる。
この森は大層危険な森らしい。
この世界に来て最初に出会ったのがアメリア達で良かった。
もしいきなりあの時のオークだったりしたら私の人生は来て早々詰んでいた。
怖いことを考えてしまったせいで身震いがする。
それを感じてかそれまでより"ぎゅ"っと強く抱き締めてくれるアメリア。
参ったなぁ。どっちが主人か分からないよ。
やや情けなく思いながらもアメリアの優しさに甘えさせてもらう。
しっかり抱き着くとアメリアは嬉しそう?
魔物達をすいすい避けながら森を進んでいく。
暫くすると森を抜けて町の門らしきものが見えてきた。
このまま町に入るのはちょっと。
「アメリア、ここまでありがとう。降ろして?」
だから頼む。
が、アメリアは不服そうな顔。
いやいや、そんな顔されても・・・ねぇ?
「アメリア、恥ずかしいから」
「ユーリはボクのものって見せつけたい!」
そんな言葉何処で覚えた!!
それに私はいつアメリアのものになった?
「だってボク達<魔力的に>交わりあったし」
「待って! 言い方! 聞く人によってはあれな方に取られるから!」
「えへへ」
えへへじゃないよ! その顔 可愛いけどさ。
っというかアメリアは私でいいの?
じゃなくてぇぇぇぇぇ。
「手、手を繋いで行こ? それで許して」
「え~」
「え~、じゃなくて妥協大事だよ!」
「もう、ユーリは我が儘だなぁ」
「私か! 私が悪いのか」
えー、納得出来ない。
けど渋々ながらアメリアは私を降ろしてくれる。
やれやれ。焦ったよ。
約束なので手を繋ごうとするとアメリアは指に指を絡めるようにして私の手を握り込んできた。
これは俗に言う恋人繋ぎというやつでは?
何処で覚えたの? 後、アメリアさん、人化してから妙に人臭くなってない?
人化ってそういうものなの?
「アメリア?」
「ボクも妥協したからユーリも妥協するべき!」
そう言われると何も言えない。
多少恥ずかしいけど、お姫様抱っこよりはましと自分に言い聞かせて門へと歩く。
入町するため沢山の人が並んでいる。
なんだろう? 視線が痛い気もするけど。
「・・・・・」
気になるけど、気にせず順番を待つ。
一刻程して私達の順番がやってくる。
あ! 一刻は地球でいう1時間ね。
鞄の中に入ってたスマホ、電源無事に入ったので検証してみた結果一刻は60分。一日は24時間。地球と同じだった。
<週と月と年はまだ知らない。今度アメリアかシンシア師匠に聞いてみる>
そして朝6時から三刻置きに鐘が鳴る。
一の鐘が6時。二の鐘が9時。以降は18時まで続く。
数分ずれがあるときもあるけど大体正確。
今は二の鐘が終わって二刻経過したから11時。
ポケットに忍ばせてるスマホで確認済。
充電切れたらおしまいだからあまり電源入れられないんだけどね。
なんとか出来ないかなぁ、これ。
ネットには繋がらなくてもオフラインで使えるアプリあるから、ね?
時計とか、写真とか、女の子の日予測のとか・・・。
「お嬢ちゃん達は貴族のお忍びか何かか?」
門番さんの問いに目が点になる。
私は紛うことなき平民だ。
なんで貴族だって思ってたんだろう?
「その服・・・」
ああ、そうか。
制服。こっちの世界だと材質とかデザインとか逸品に見えるか。
どうしたものか。悩んだけど間違いは訂正しておくことにする。
「私達は平民ですよ!」
「そうか。お忍びだとそうとしか言えんわな。すまない、失礼なことを聞いた」
あれ? 誤解が解けてないよ?
勝手に決めつけて勝手に納得した門番さんはシンシア師匠宅にあるのと同じ魔道具の石板を私達に差し出す。
「一応決まりなんでな。これに手を置いてくれ」
素直に乗せると青い光。
これで犯罪者とそうでないものを見分けているらしい。
一般人は青の光。犯罪者は赤の光となるそうだ。
「問題ないみたいだな。それじゃあ身分証明書はあるかい?」
問われて持っていないため「ない」と応える。
「じゃあ入町料を払ってもらうことになるな。銀貨1枚だ」
ちなみに銀貨1枚は近代日本の貨幣価値に換算すると凡そ1,000円。
他に小銅貨、銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、金剛貨とありそれぞれ小銅貨が10円、銅貨が100円、銀貨が1,000円、大銀貨が10,000円、金貨が100,000円、大金貨が1,000,000円、金剛貨が10,000,000円となる。
それぞれ10枚単位で価値が変わる。
金剛貨なんてものを使うのは王族か大貴族大商人くらいのものらしいので実質大金貨が通貨の最大と考えて良いと思う。
「はい」
シンシア師匠からもらった銀貨を手渡す。
これで入町審査は終了。
私達は晴れてマウリの町へ。
しかしシンシア師匠の家にいる間は考えなかったけど、私って一文無しなんだよね・・・。
日本のお金なら財布の中に多少あるけど硬貨はこっちの世界だと偽物扱いになるだうし、紙幣はただの紙切れ。
「これはダメだ」
私は自分の姿を見下ろした後、こっちの世界のお金を入手することを決意した。
お金大事!
お待たせました。アメリアが人化したので百合成分向上し始めます!