10.町散歩と交渉と
「アメリアあのね?」
シンシア師匠のお使いの前にアメリアに事情を話してやってきたのは衣料店。
平民御用達の古着屋店と貴族と多少裕福な平民、例えば商人などが使うそこそこ高級な衣料店と貴族しか使わない完全高級志向な衣料店。衣料店は全部で3店舗あったけど今回はそこそこ高級な衣料店を利用することにした。
そこで制服が売れないかと聞いて売れると了承を得たら代わりの服を見繕ってもらう。
シンシア師匠の真似をして白のブラウス、黒のジャケット、黒のミニスカート。
シンシア師匠はミニではないけど。
黒の外套、黒のソックス、黒の三角帽子を購入。
制服は金貨3枚で売れた! びっくり。
これは魔導師もどきセットを購入しても全然余裕でお釣りがくる。
そこでアメリアにも服を購入。白の清楚なワンピースを着せたらケモミミ天使が出来上がってこれには店員さんと2人で悶えた。
後、下着が欲しかったけど私が思うようなのはなかった。
いくら洗浄魔法でいつも清潔とは言ってもずっと同じのを穿き続けるのは流石にね?
だから買おうと思ったのにあるのはドロワーズことかぼちゃパンツだけ。
ブラはない。どうもこの世界の女性はサラシとか古い布を胸に巻くことでそれをブラとしているらしい。
う~ん。馴染めそうにない。ブラ欲しい。かぼちゃパンツもすーすーしそうで嫌だ。
仕方ない。ないのならばと作ってもらうことにした。
店員さんを呼んで試着室へ。
制服を畳んで脱いで下着を見せる。
「こういうの作れますか?」
聞くと店員さんは何故か動作を停止し、その後私の肩を掴んで揺すり始めた。
「ちょっ。なんですか! これは! この乳袋はなんて素晴らしい。もっと見せてください。これどうやって取るんですか!!」
鼻息荒い店員さん、怖い。
勢いに負けてブラのホックを外して手から肩紐を左右それぞれ抜いてブラを取る。
店員さんに渡すとショーツも脱ぐように言われたので足から抜いてそれも渡す。
代わりにかぼちゃパンツを履いて胸は手で隠す。
うん、買った服まだもらってないんだ。
仕方ないから畳んで置いてある制服着ようと思ったらアメリアに阻止された。
なんでアメリアもいるの? というかいつからいたの?
恥ずかしいからあまり見ないで! こら! 胸の手を退けさせようとするな!
アメリアとの私の胸を巡る激しい攻防は10分にも及んだ。
店員さん、いつまで私はこんな格好を!?
ブラとショーツを手に持って恍惚とした表情、変態さんに見えますよ?
「あのぉ」
声をかけると我に返ったようで漸く交渉を始めてくれた。
「この謎のパーツ部分は金属か何かで再現するとして、伸縮性はスライムの吐き出す物を使うとなんとかなりますね。布地はどうしてもこれより劣ってしまいますが似たようなものを作るのは充分に可能です。どうでしょう? お客様。これら二点をわたしくしめに預けては下さいませんか? 販売にこぎ着けた暁にはアイデア使用量として毎月お客様に売り上げの2割をお支払い致します。勿論、今ここでアイデアレシピの代金も。そうですねぇ。金貨3枚、いえ、5枚でどうでしょう?」
「そ、そんなに?」
びっくりだ。制服より高い!
私、文無しから一気にお金持ち。
交渉成立。下着類は店員さんに預けて制服は予定通り売却。魔導師セットとワンピースを着用して私達は意気揚々と店を後にした。
「まさかそんな高値が提示されるなんてねー」
「ねー」
アメリアと話しながら町を歩く。
途中スライムの生態についても気になったのでアメリアに聞いてみた。
「あのお店でさ、スライムがどうとかいってたじゃない? あれってどういうこと? シンシア師匠の家にいるスライムは店員さんが言うようなことないよね?」
「えっとね」
それによるとこの世界には俗に言うスライムと呼ばれる魔物は3種存在しているらしい。
わかりやすく体の色が赤、黄、青の3種類。
このうち黄色のスライムが吐き出したものを乾燥させるとゴムみたいな素材になるのだそうだ。
ちなみに乾燥前は99%水なので使い物にならない。
すなわちゴムっぽいものになるのはそのうちの僅か1%。
使い物になるようにするにはそれなりの数が必要となる。
だから冒険者ギルドでは常時依頼に分類されていつでもこの依頼を受けるのが可能らしい。
その分報酬は左程良くないみたいだけど。
ちなみに青のスライムは各家庭や冒険者のお供に重宝されている。
排泄物とかゴミとかを溶かして処分してくれるから。
シンシア師匠の家にもいる。
トイレが住処。今はもう慣れたけど、初めてのときは悲鳴をあげてしまった。
最後に赤のスライム。これは完全な魔物らしい。
強力な酸を吐いて肌に触れると大火傷になるので注意するように言われた。
なるほどね。感心していると三の鐘が鳴る。
同時にアメリアのお腹から聞こえてくる音。
"ぐうううぅ"
「お腹空いちゃった」
少し照れた顔が可愛い。
アメリアに微笑み、「お昼にしよっか」と声をかける。
実はこの町は至るところに屋台が出てるのだけど、いい匂いがして気になっていたのだ。
なのでお昼は屋台ご飯。オークの串焼きとホットドッグもどきみたいなパンを購入して噴水広場へ。
町の中央に噴水広場があってそこは貴族、平民問わず憩いの場となっている。
飲食店、屋台もこの周りに沢山。
ここから北にいけば貴族街。南にいけば平民街。その先に町門。
平民達の住む家は基本石造りで屋根は全建物オレンジ。
飲食店は色とりどりの屋根。
貴族の家はさすが洋風のお屋敷という感じの立派なものが立ち並んでいる。
噴水広場でベンチを見つけて座る。これは木造。
座ると早速食べ始めるアメリア。
「モグモグモグ」
美味しそうに食べるの可愛い。
なんかいちいち可愛いって思ってしまうな。
けど可愛いんだから仕方ない。
見ているとアメリアが私の視線に気付く。
「食べないの?」
ちょっと心配そうな顔。
私は食が細いから。
過去をあんまり振り返りたくないけど、食事をろくに与えられなかったから胃が小さくなってるんだ。体が小さいのもそのせいかもしれない。
それはそれ。あまり心配させたくないので自分の分を口に入れる。
アメリアもそれを見て食事を再開。
それも見て何処か"ほっ"とするけど、しかし思ったよりあんまり美味しくない。
香辛料が足りない。素材の味そのものの味しかしない。
分かるよ。多分コショウ1粒は金貨1枚な感じなんでしょ、ここは。
それで贅沢してるのは貴族だけなんでしょ。
平民は香辛料なんて滅多に口に入らない。使っても少量だけ。
逆に貴族は見栄を張って料理を香辛料まみれにして料理を殺す。
・・・美味しい物が食べたい。
少量しか食べれないなら余計にそう思う。
シンシア師匠の家で食べられるのも保存食みたいなのばかりだし。
シンシア師匠は料理が得意な方じゃないんだろう。
それなら私が作るしかないよね!
食事を終えて立ち上がる。
アメリアに顔を向けて告げる。
「魔法と錬金術を使って食物を育てて料理作ろうと思ってるんだけどどうかな?」
「それってユーリの手料理が食べられるってこと?」
「うん、まぁそうだけど。あまり期待はしないで?」
「ユーリの手料理!」
あ! ダメだ。聞いてない。
何か想像してて上の空。尻尾が激しくぶんぶん揺れてる。
そんなに激しく揺らすとワンピースが撒かれてあれだよ?
「食べたい!」
「わっ!!」
人目を憚らずに抱きついてくる。
頬ずりしてきて耳元で恥ずかしいセリフを吐きまくる。
「ユーリ好き。大好き。ユーリの食べたい」
「だから言い方!!?」
もう。人化したら感情爆発しすぎだし、正直すぎ。
ハァ、アメリアに振り回されっぱなしです…。
でも一番厄介だなぁって思うのがそれが嫌じゃないって思っちゃってることなんだよね。
むしろアメリアのこんな可愛い顔が見れるなら。
って私も自重だ。自重。




