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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
【true end】のその先 2
99/104

城にて

 * * *

 

『さてさて。

 ミラクル迷子なリスティナ。

 彼女は果たしてお家に帰れるのでしょうか?!』


 とまぁ。

 ふざけた音声が頭の中にこだました気がするが、気のせいだ。

 

 

「ラン? どうした?」



 そう問うのはゼグロ。

 私はたまたま通った廊下で、たまたま窓の外に目を向け。

 思わず立ち止まっていた。

 

 

「……デカい餓鬼が迷子?」

「は? 寝言?」

「お前は、私がこの状況で寝ているとでも言いたいのか?」

「いや。言ってみただけ」

「………………」

「そんなゴミを見るような目で見んなって! 冗談だろ」

「……はぁ…………」



 この馬鹿は時折本気で言う時があるから、実に厄介だ。



「…………なぁ。俺、あの魔力と髪の色、見たことあるんだが……」

「……私以上にかかわりのある貴様であれば、当然であろう」

「いや、まぁ……そうだけど……何であんなとこで泣いてるの?」

「知らん」

「ですよねぇ~! ちょっと俺、行ってくるわ」

「あぁ」


 こうして、厄介ごとをゼグロに押し付け。

 私はギルドに戻った。


 ……机上の書類は、狸に呼ばれ出て行ったとき以上に増えていた…………。 

 

 理由は簡単。

 ギルドの書類整理をしていた者がとうとう倒れたそうだ。

 最後の二人同時に、な……。

 よって。

 その仕事が私に回ってきた、ということだ。



 …………私に死ねと……?


 

 * * *



 ……どうしましょう。

 これから……。

 私、実はどこをどうしてここに来たか。

 なんてこと分からないわ……。

 だって。

 今までこの国のお城になんて、魔術で強制的に、あっという間に召喚されていたんだもの……。

 だから当然。

 道なんて知るわけないじゃない!

 どうやって帰ればいいの……?

 …………あ。

 ゲートがあった……。

 そうよ!

 ゲートで帰ればいいのよ!!

 もう、そうと決めたらさっさと人形に戻って――。



「こんな所でどうしたの?」



 聞きなれた声がしました。

 誰かしら?

 そう思って顔を上げました。

 すると。

 何故か。

 目の前にしゃがみこんで私を見つめるゼグロさんが居ました。



『ゼグロさん……』

「あ~あ。目が真っ赤。じっとしててね」

『はい……』

 

 

 そう言ってゼグロさんは片手で私の頭を軽く固定するようにして、もう片方の手の人差し指に白と黒の混ざった小さな陣を作り。

 私の額のあたりに向けた。

 ……なんだか目がむずむずします。

 


「ちょっと気持ち悪いかもだけど、我慢ね」

『はい……』



 私が返事をした少しあと。

 ゼグロさんが「多分これで良し」と。

 そう言って私の頭から手をどけた。

 ……なんだかまだむずむず…………。

 …………よし。

 擦っちゃえ!

 と、まぁ。

 そんな考えでごしごししたら、ゼグロさんからやんわり叱られました……。

 ……なぜ……?

 


「擦っちゃダメだって。また赤くなるよ」

『ぅ……。でも、むずむずして…………』

「う~ん……。良くわからないけど、しばらくしたらなくなると思うよ」

『そうなのですか……?』

「まぁ、多分」

『……多分、ですか…………』

「まぁね」


 

 にっこりとゼグロさん。

 そんなゼグロさんに、私は不安を感じました……。

 ……本当に、このむずむずは無くなるのかしら?

 と言うより。

 私の体は治癒は効かないと……。


「コレ、ただのおまじないだから」

『おまじない……?』

「そう。まぁ【おまじない】とかいて【呪い】って呼んだりするけどね」

『……え…………?』


 それって、本当に大丈夫なのかしら……?

 と言うより。

 なんて物騒なものをかけて下さったのかしら?

 もしものことが起こったらどうするの?

 なんて。

 ゼグロさんに限ってないわよね!

 お姉様じゃないのだもの。

 よかったわ!

 ホッとしました。


 

「で。どうして泣いてたの?」


 

 …………まぁ。

 そうなりますよね……。

 ……別に。

 私だって、好きで泣いてなんていません!

 ちゃんと理由はあるの……。

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