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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
【true end】のその先 2
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人形のまま

『……実は、道が分からなくなって。気がついたらここに流されてしまって……』



 と。

 まぁ。

 そんなわけで。

 ゼグロさんにここに来た流れを説明。

 ゼグロさんはなるほどとうなずき。




「迷子か」


 

 と。

 私の心を抉った……。

 


『えぇ。まぁ……』

「……でも、変だね。リースが言うような人ごみが城内に押し寄せたことも、城門があっぱらぱーなんて、ありえないことだよ」

『え? じゃぁ、私、どうしてここまで……?』

「さぁ? 不思議なこともあるもんだね」

『えぇ。本当に』

「さてと。泣き止んだことだし、仕事に戻らないと」

『あ……。ご迷惑をおかけしました』

「あぁ、いいって。気にしないで」

『ですが……』

「大丈夫大丈夫。じゃ、またね!」

『あ、はい』



 そう私が返事を返すよりも早く、ゼグロさんはいなくなっていました……。

 転移の術式ですね。

 さて。

 何十人でやっと発動して、転移できるのはたったの一人と言う祖国の王宮魔導師達は、この国ではどれほどの力の持ち主となるのでしょう…………?

 なんて。

 とてもとても失礼な疑問が頭をかすめた。

 だから私はその疑問を早々に忘れ。

 踵を返し、家路につきました。

 ……といっても、まぁ。

 人形になったまま城門を過ぎたところで、『何故人形になっているのか』を思い出したのでゲートを使って屋敷に帰りました。

 …………私ったら、うっかりし過ぎね……。

 でも。

 そんなうっかり屋な私でも、直接屋敷内にゲートを繋げるなんて事。

 出来るわけないでしょう……?

 だから私。

 良くわからないのだけれど、何処かの町の広場に居るの……。

 広場中央には色とりどりの花が植えられた花壇があって、その真ん中には今日の日付と現在の時刻。

 冬の90日の十一時二十三分を示している魔力掲示板があるの。

 私はそれを眺められる位置に置いてあるベンチに腰掛けて……人形のままだということに気がづいた。

 …………今更、人型に戻っても奇妙よね……。

 もう良いわ。

 このまま人形でいましょ……。

 ……あぁ。

 それにしても。

 せっかく市に出かけたというのに、何も買えなかったわ……。

 お姉様のお話だと、面白いものがたくさんあるとのことでしたのに……。

 はぁ……。

 …………あら?

 ちょっと待って。

 以前ミリーに掛けられていた記憶操作の術……。

 あれって、もしかして……たいしたことなかったのかしら…………?

 そして。

 私はそのたいしたことのない術を解除することすら――……やめましょう。

 空しくなるだけだわ……。

 過去の事は忘れましょう。

 それでなければ、この国の人々が異常なのだと。

 認識を改めましょう……。

 ……まぁ、今更なのですがね…………。

 

『うふふ……。空しい…………』


 泣きたくなるわ……。

 私はそこまで考えて、膝を抱えて立てた膝に頭を載せた。 

 

『どうせ……私なんて魔力が盛大に偏っててまともに扱えないし、部屋の明かりすらつかないし、蛇口すら回らないし、コンロも使えない。全面介護状態のダメ人間ですよ。使用人をしてくれている皆が居なければ私なんて、私なんて……』


 嗚呼。

 本当に、私は皆に迷惑をかけているのね……。

 しかも。

 今日も盛大に迷惑をかけたし。

 何より、心配させちゃったよね……。

 ……こんなことになるなら。

 もう少し、ちゃんと考えるべきだったわ…………。

 後。

 ここ。

 どこ、かしら……?


『ふっ……くっ……ぅ~~~~~っ』



 再びあふれ始めた涙に、私は両手で顔を覆った。

 いくらゲートでどこへでも行けるからって、油断し過ぎたのよ……。 

 というより。

 ここはどこ?

 屋敷とどれくらい離れているの?

 そもそもここは屋敷のある国なの?

 このゲートはどこへでも行けるみたいなのよ。

 だから、海を越えていたりしないわよね?

 あぁ、でも魔力掲示板があるということは、大陸から離れてはいないのよね?

 だって。

 魔力掲示板だなんて……。

 って。

 どっちにしても私――


『また、ひっ……まい、ごっ…………!』


 くやしい……。

 なにに悔しいのか、ですって?

 そんなもの。

 自分に対して以外にないでしょう?!



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