第十一話 破壊
「……で。この惨事の原因はどこだ……?」
「ん~? さぁな。 どっかに居んじゃ――――」
――――ゴォォォオオ……ピシシッ…………
西の方角から、重苦しい魔力の波動。
続く、なにやら不穏な低音。
頭上では何かにひびが入るような、小さな高音。
「あ……。俺知らねぇ…………」
上を見上げ言うゼグロ。
奴の言葉にまさかと思いつつ、上を見上げた。
――――パキッ……パキパキ……パリィィン!
私が見たモノは、音を立てて砕け散る、先ほど作ったばかりの。
五十もの陣を重ねた結界だ……。
「……………………」
「え、えっと……。ラン? げ、元気出せって!」
「………………………………」
「ま、また作りゃいいだけじゃねぇか! なっ! そうだろ?!」
慌てたように言い。
手を使い、オーバーリアクションで言い募るゼグロ。
「…………………………………………」
「っ……俺も作るの手伝うからっ! なっ! だからそんなキレんなって!!」
怯えたような顔で、半泣きなゼグロ。
奴は何を恐れているのだろうな……。
私は……いつも通りだというのに。
「…………くっ……くはっ。はっははっは……」
「えーっと、ラン……?」
「ふっ、ふふふ…………。良かろう……私直々に、引導を渡してやろう…………」
音と波動を感じた西の、魔力を探る。
山奥だ。
淀んだ邪悪な呪術の力……。
これは、人を作る娘だな……。
そして。
その娘の居場所よりずっと先に光のような魔力と、重苦しい魔力。
前者は隣国のファラン王国第二王子。
エヴィロバン・アルフレッド・ファラン。
後者は我が国、イルディオ王国。
我がギルド員。
セイニィ・ルフィス。
またの名を――――セフィニエラ・サティ・ローダン
王家の血を引く、黒髪の化け物。
「あぁ。そこか……」
「っ……?! 待てっ、ランっ!!」
私はゼグロの存在を無視し、化け物どものもとへと飛んだ。
* * *
ランが不穏な雰囲気と共に姿を消した。
森中をすべて氷に変えて。
おかげで森が、木の形した緑の氷じゃねぇかよ……。
「……勘弁してくれよ…………」
……誰がコレ直すと思ってんだよ。
たく。
あの化け物たちと、本気でやりあったらしばらく不能になるくせに…………。
「あ~あ。明日、ミフィとデートだったのになぁ……」
はぁ……。
今まで、『『仕事』『仕事』って私はどうでも良いんでしょ?!』って。
何人に振られたことか……。
まぁ。
ミフィならわかってくれっけどさ。
ランの魔力、回復が遅ぇんだよな……。
常人の倍以上かかるもんなぁ。
…………てことは、だ。
一か月近く、ランのお守りかよ……。
やだなぁ……。
アイツ魔力ギリギリのくせに休もうとしねぇもん。
しかも。
魔力無いに等しいってのに、無理しやがるから体壊してぶっ倒れっし。
そのたびに俺が治療するってパターンだしな……。
まぁ。
強制終了して、今回みたく一月寝込まれてもかなわねぇけどさ……。
でもさ。
久しぶりに――
「ミフィに会いてぇなぁ…………」
きっと、笑顔で迎えてくれるだろう。
そして労わってくれる。
嗚呼。
ホント、癒しがたりねぇ……。
……にしても。
ランの目。
ヤベェくれぇ本気だったんだが……。
…………問題、おこさねぇと良いなぁ……。
* * *
明日で終わります。




