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名門貴族の変嬢 作者:双葉小鳥

ギルド長の閑話 

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第十二話 人災

 等身大の藍色の陣を五つ。
 自身の前に上下左右に展開し微笑む女。

 ソレの目線の先。

 少し距離を置いた場には、足元に光輝く陣を展開させ。
 腕を組み、余裕の笑みを浮かべた男。
 二人の雰囲気は免疫のない者であれば即刻逃げさっている程、険悪であり、邪悪だ。


「今度はお得意の光ですの? おほほほ! 私わたくしに効果があるとでもお思いなのかしら?」


 右手を緩く丸め、甲で口元を隠し笑う。
 藍のドレスを身にまとった、ふくよかと言えば聞こえの良い体系。
 まるで絵に書いたような中年の女。
 セイニィ・ルフィス。
 本名セフィニエラ・サティ・ローダン。


「そうだね。知ってるよ? でも、いくら君でも、これから逃げることはできないよ」


 微笑む金髪碧眼の男。
 黙っていれば、見た目も地位も文句のつけようのない、王子。
 しかし。
 口を開けば文句をつけたくなる程。

 否。
 これの親であれば、頭を抱えて寝込んでしまう程に強烈な男だ。

 現実に、この男の父親と兄は頭痛薬と胃薬、栄養剤を常備し。
 母親はと言うと精神的なもので、寝込んでいる。

 一年ほど前だが、この三名すべてが起き上がれない状況に陥った……。
 原因はこの男の実験と言う名で、植物を化け物化させ。
 国中に蔓延させたというもの。

 真っ先に王妃が顔色を無くし、精神的なもので倒れ。
 王が魔力の使い過ぎて強制睡眠。
 残された第一王子は魔力が王族としては低く、魔力以外のことで動いていたが倒れた。
 発見されたときは過労死寸前の虫の息だったとのこと。
 第一王子が死なずに済んだのは、たまたま王妃の診察にゼグロが出向いていたためだ。
 あれがゼグロでなければ死んでいた。

 例えば今。

 私の目の前で如何に強固な魔獣ですら瞬殺する陣を展開し、発動させたこの女であれば。
 第一王子は確実にあの世に旅立っていた……。

 などと。
 そんなくだらないことを考え、目を逸らしていた現実に目を向けた。
 と。
 同時に。
 セフィニエラが王子目がけ放ったはずの、まがまがしい闇色にどす黒い青が混ざる球体が私の目前に…………。

 おいおい。
 クソ王子、何故。
 当たらずに弾いた?

 それも私のいる方に……。
 まぁ、良い。

 私は迫りくる術を回避するべく、己の魔力を右手、指先に灯し、陣を展開。
 魔力を練り上げ、発動。
 『術を術者に返す』だけの、単純な術。
 今のところ半分ほどの術が返る。
 コレにより、迫っていた術は弾いた王子のもとに戻り、爆音を轟かせ。
 王子を吹き飛ばし。

 その後も止まることなくセフィニエラのもとへと向かい。

 接触。

 その後爆炎を上げた。 


 二人が居た場は少々凹んではいるが、双方肉片にはなって居ない。
 見たところ、息もある。



「……威力は半々といったところか…………」


 セフィニエラの放ったものを一とすると、私が回避したことで半減。
 その半減したモノが王子に当たり、術者であるセフィニエラへと帰った。
 つまり、四分の一程の威力。

 いくら化け物が放とうとも、その程度の威力では人災どもを殺せるはずはない、か……。



「…………改良する必要が出て来たな……」


 顎に手を当て、どこを改良するべきかを考えようとしたが、後に回すこととしよう。
 ではまず一つ。
 陣を形成しようではないか。  

 …………貴様らを抹殺するためになぁ……。

 頭の中でイメージした陣をそのまま体の外に出し。
 それを人災どもの上に広げた。

 陣の色は紅。
 模様は複雑に絡み合った図形と、古の言語。
 初歩的な術だ。
 誰にでも展開及び発動可能。
 それ故。
 威力もある。



「ではな。安らかに眠るが良い……」


 言葉を手向け、発動。  

 陣はたちまちに火を噴き。
 溶かす……。

 嗚呼。
 痛み、熱は感じらぬ故。
 安心するが良い。
 せめてもの、情けだ……。



「ちょっと。どの辺が『情け』? これじゃただの『鬼』、『鬼畜』の間違い……」


 背後から聞こえた、呆れたような女の声音。

 それと共に私の術、風、音。
 世界の全てが・・・止まった。

 念のために振り返る。

 声の主はというと、少し離れた場の木の根に腰かけ、立てた膝に肘を置き。
 両手で顔を支え、簡素な服を身に纏い。
 緩く波打つ金髪を赤いバンダナで一つにまとめた、紫の瞳の少女。



「来たか……二重人格起爆装置……」
「むっ……。あんたさ。『使い分けているだけ』って何度言えば分かる?」


 腕を組み。
 秀麗な顔を歪め、刺々しい口調の娘。
 ミフェイア・ロージー。
 ゼグロがべた惚れで、セフィニエラが国や他者、己が命より優先する妹。



「居たのであれば何故、今。止めた……?」


 あのままであれば人災は滅することが出来たというのに……。


「今来たからに決まってる」
「………………」
「ふんっ! だからあんた。姉さんに劣るんでしょ?」


 刺々しく。
 嘲るよう。
 感情を逆なでするような口調の少女。
 それに苛立ちが募るのは、仕方のないことだ。

 何より。

 あのセフィニエラ・サティ・ローダンの妹で。
 この国のクソ狸の姪だ。

 狸の家系は狸でしかない……。

 …………嗚呼。
 狸が国外逃亡を企てるよう、私も本気で国外逃亡を企ててやろうか……。
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