第六話 年の差
「いいですか。あなたはすぐに室温を下げる癖を直しなさい。もちろん舌打ちも。それから今後の事も考えて仕事も控えて、毎日三食食べなさい。後、仕事を持ち帰って夜遅くまで仕事をするのもやめなさい。体を壊しますよ。それから――」
唐突に始まった、私の直すべきところの指摘。
若干うんざりしつつ聞きながらマディスタが戻って来るのを待った。
そうしてマディスタはカロンが指摘と言う名の説教を五度ほど繰り返したころ。
両腕に大量に紙袋を下げ、戻ってきた。
「さぁ坊ちゃん! お嫁様――いえ、奥様を見せて下さいませっ!!」
「……だから飛躍しすぎだと言っている」
「? まぁ良いわ! さぁさぁ、出て行った出て行った!」
両手を打って音を立てて急かさせ、私とカロンは部屋を追い出された。
…………一応、私の部屋なのだがな……。
まぁ、良かろうて。
そういう訳でカロンと共に廊下で待っていた際。
眩い光に窓は景色を失った。
――――ドォォオオオオン
光に続き。
突如轟いた爆音。
私は盛大にため息を吐いた。
「……………仕事だ……」
「……えぇ、そのようで…………」
「カロン、夫婦そろってあまり無理するなよ。出来る範囲で良いのだからな」
「わかっておりますとも」
笑顔で頷いたカロン。
私は思わず疑いの眼差しを向けた。
「相変わらず失礼な子だよ。坊ちゃんは」
「……以前無理をして腰をやったのはどこの爺だ…………」
「………………なぁに、ちゃんと無理しない程度にこなしておりますよ」
「信用ならんな」
「ほっほっほっ。さぁ、仕事でしょう? さっさと行ってさっさと帰っていらっしゃい」
話をそらされたが、今はとやかく言っている場合ではないな。
さっさとあの化け物を止めてこなくては……。
「………………はぁ。行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
―――――――――
―――――――
こうして。
現場に来てみたのだが……。
地面に地表深くまであるであろう巨大な穴がぽっかりと口を開けていた。
もちろん、周囲は消し飛んでいる。
酷い有様だ。
……確かこの辺りは……――
過去の映像を見るための術を目の前に展開し、発動。
見えた映像に民家と言ったものは無い。
どうやら死亡者はいないようで安心した。
「あらら……。今回も酷い…………」
背後から聞こえた、呆れたようなゼグロの声がした。
「前回のように負傷者が出なかっただけ良いだろう」
「そりゃ、そうだけどさ……コレ、直すの俺達だろ?」
「他に誰が居る……」
あの化け物の破壊の修復の出来る奴がほかに居れば、私は過労で倒れることは無かろうて……。
「だよなぁ……。やっぱ、告げ口してやろう」
「……あまり関わらん方が、身のためだと思うぞ」
「大丈夫。俺、ミフィに超愛されてっから!」
「………………」
片手に拳を握って親指を立て、笑って見せたゼグロ。
死亡フラグにしか見えんな……。
……まぁ。
言わぬがよかろう。
いや、言っても聞かんか……。
「ミフィとデート。しかもデザート中、『あ~ん』ってやってたってに、あのクソ女ぁ……!」
……お前のそれはロリコンではないのか?
以前問うたことがある。
が、『四歳しか差がない』だそうだ。
『二つ上の私を敬うことをしないからな』と。
変に納得してしまった。
「それより貴様。あの手紙はなんだ」
「ん? あぁ、アレ? 陛下からの命令。なんでもあの人形、意識を持たずに消えた方が圧倒的に多いらしい。で、調べた結果が毎日恋人や妻のように接し、声を掛けてた奴ってことが判明したんだ。ちなみにそれやったの、女もいるぞ」
「……また、気まぐれか…………」
「まぁな。気まぐれついでの気まぐれってことだろ。絶対死なすなよ。お前の嫁なんだからな」
「…………はぁ……。とりあえず、これを片づけるぞ」
「了解」
こうして、あの化け物の行った破壊を完全に修復したころには日も暮れ、夜も更けたころだった……。
ゼグロが去り際。
『ミフィとのイチャラブな時間が……』
と、魔力を大量に消費し、疲弊した状態で嘆く声が聞こえ。
内心で笑い家に帰った。
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