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名門貴族の変嬢 作者:双葉小鳥

ギルド長の閑話 

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第五話 手紙

 ――親愛なるランへ。

 君が最後まで話を聞かずに居なくなったので、手紙にしたよ。
 陛下と話して、命は陛下預かり、体は君預かりになったよ。
 死なせちゃダメだよ。
 怒ってもダメだよ。
 もう、決定したことなんだよ。


 ―――――――――――

 ――――――――


 そこまで読んで思わずため息をついた。

 …………あのバカは手紙もまともに書けないのか……。

 ……まぁ、魔術の腕さえあれば良いのだろうな…………。


 ―――――――――――

 ――――――――


 それでね。
 人形の事だよ。
 持っている人にドゥヴィラスが聞いた話だと、耳元で『愛してる』とか、『好きだよ』とか、『君は美しいね』とか、『君の瞳が見たいんだ』とか。
 まぁ。
 毎日心を籠めて囁いたり、手や顔に触れあったりを続ければいいんだってっさ。
 単純に言えば。
 意識ないだけで人と変わらないってことだね。
 でも、めんどくさがって言わなかったり。
 触れ合わなくしたら、どんどん小さくなって消えちゃうってさ。
 だから。

 『毎日欠かさず歯の浮くセリフを心と愛をこめて囁け』ってことだね!

 上手くいけば意思を持つんだって。
 毎日欠かさず続ければ、早ければ一年。
 遅くても三年ぐらいで意思持つんだって!
 くくっ。
 精神異常者みてぇな絵図らがっ……。
 ぶっはっ!
 あ、ヤベェ。
 文字になった。
 ま、いいか。
 そう言う訳で頼むな。
 陛下の命令だから、拒否は出来ねぇから安心しろや。
 まぁ、意識持ったらソレ。
 お前の嫁だから。
 大事にしてやれよ。
 じゃあな。
 あ。
 ちゃんと仕事しろよ。
 あの化け物、俺なんかじゃ停まんねぇからな。
 頼んだぜ。

  お前の心の友・ゼグロより~。


 ―――――――――


 ――――――



 よし。
 アイツ、固めるだけでなく、沈めてやろうではないか。


「ぼ、坊ちゃん。落ち着いて、寒い……」


 言葉を封じていたはずのカロンからの苦情。 
 それが意味することは、【未熟者】と言うこと……。


「……すまない」
「さては、ルフィス候の事でも書いてあったのですかな?」
「………………いや。別件だ」


 私はそう言って手紙をカロンに手渡すと、彼はそれを受け取り。
 サッと目を通し、笑った……。  


「ふ、ふ…………。オッホン! ふむ、困ったものだ。若い娘っ子用のネグリジェがないんだよ」


 …………そうきたか……。
 この爺めが……。


「買ってくれば良かろう」
「はい。ではそうしましょう。マディスタ、マディスタや」


 笑みを浮かべて頷いた彼は、懐から取り出した通話機能付き懐中時計を開き、最愛の妻の名を呼んだ。

『なぁに? あなた』


 聞きなれた女性の声。
 それにカロンは慈しむような笑み浮かべた。


「おぉ、マディスタ。突然で悪いが、若い娘っ子用のネグリジェを買うて来てくれんか?」
『あら、どうして?』
「坊ちゃんの嫁御が出来たんだよ」
『まぁ! なんですって?!』
「だからな。坊ちゃんに嫁が出来たんだ。犯罪臭いが、とびっきり可愛らしい嫁がな」



 おい。
 『犯罪臭い』とはなんだ。
 『犯罪臭い』とは。
 そして、嫁ではない。
 預かり物だ……。



『まぁ……まぁまぁまぁまぁ! 一大事じゃない!! ……あら? でも、『犯罪臭い』ってどういうことなの?』
「うむ。後で説明するから、とりあえずネグリジェを買うて来てくれ」
『分かったわ。とびっきり可愛いのを選んでくるわ! 何着いるの?』
「マディスタに任せるよ。お前が可愛いと思った物を数着買ってきておくれ」
『直ぐに出るわ! もぅ、すぐなんですからね!』

「あぁ。頼んだよ」


 カロンはそう言って懐中時計を閉め。
 懐に戻した。


「マディスタがよろこんでおりましたよ」
「あぁ」


 知っている。
 聞こえていた……。


「いやぁ……安心しましたよ。坊ちゃんがやっと身を固める気になってくれて」
「…………なぜそこまで話が飛躍する?」
「陛下のご命令とあらば、拒否はできないでしょうて」
「………………チッ」
「ほら、舌打ち。嫁御に嫌われるからやめるように」
「………………」


 お前は本当にお袋のようだな……。

マディスタ
 カロンの嫁。
 ランの侍女兼料理人。
 年は48。
 赤髪碧眼。
 明るい人。
 カロンと通話時はランの昼飯を作り終えたので、茶を飲んで一息入れていた。
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