【true end】~~~
ゼシオがリビングの明かりをつけ、傍に戻ってきてくれました。
そして。
戻って来たゼシオの表情は――無。
…………あぁ。
どうしましょう。
皆、怪我していないと良いのだけれど……。
「心配だわ……」
思わずつぶやいた一言。
それにゼシオはこちらを向いて、またすぐに扉に目を向けた。
その際。
無言で彼が言ったのは、『心配し過ぎ』。
…………あのね、ゼシオ。
体の自由を奪われ、両目を抉られて、爪を一枚一枚剥し。
そして指を一本一本落とされて。
耳に美引くのは楽しげな笑い声。
おまけに『痛い? ふふ。痛いよねぇ』って。
いくら『やめて』と『たすけて』と叫んでも、言葉にならない言葉が響くだけなのよ……?
『心配するな』っていう方が無理だわ。
……ねぇ。
ゼシオ。
私。
【私】ね。こんなことをされて、殺されたのよ……?
しかも。
首を飛ばされない限り、どこを切られても死なない。
死ねないのよ……?
狂ってしまいそうなほどの痛みと、恐怖。
…………でも。
狂う前に正常に戻される……。
死しか、【私】に希望を与えてくれなかった――いいえ、それは違うわね。
狂えない【私】は、死を選ぶことすら恐ろしくて……絶望しか、感じなかった…………。
非力な【私】はただただ絶望し、襲い来るであろう痛みに怯えるしか、できなかったのだから……………。
…………とにかく。
あの男にあの術を使われてしまったら……いくら料理長たちであっても、無事なはずは無いわ……。
いや。
いやよ……!
皆が怪我をするなんて、絶対イヤっ……!
「っ……ぅっ…………」
悔しい……。
悔しいわ。
あの槍が無ければ何もできない、自分自身が………。
守られてばかりで、自分の力だけでは何もできない。
そんな自分が嫌……。
――――ガチャ……。
ドアノブが回る音が、静かなリビングに響いた。
私はそれに弾かれるように顔を上げ、扉を見つめ。
そこに料理長と、テノール、ゼシオ、マリアたちの無事な姿を見て。
心の底からホッとするのと同時に、ぼやけていた皆の姿がさらにぼやけた。
「みん、な……。けが、ない…………?」
「?! ひ、姫さん?! な、なんで泣いて……?」
料理長が激しく動揺を示しています。
でも、それどころではありません。
「ぶ、じ……? 怪我、していない?」
「「「「姫さん……」」」」
「「「「お嬢様……」」」」
「「「姫様……」」」
問うと。
歪んで見えにくい視界の向こうで、皆様々な反応を示し、すぐに笑ってくれました。
だから私は皆に――――
『こんな夜中に騒いでしまってごめんなさい。ゆっくり休んでちょうだい。無理はしないで……』
と伝え。
テノールと料理長、ルシオ、ゼシオを残し。
他の皆はリビングをあとにしました。
もちろん。
当然なのか、私もリビングに居ります。
…………部屋に帰ろうとしたら料理長に呼び止められたのです……。
『話があるんだ』
と……。
何のことか分からなかったのですが、料理長の真剣でいて、どこか強張った表情と声音に素直に頷き。
私は腰を浮かせていたソファに再び腰かけました。
………………。
…………………………。
…………………………………。
長い沈黙。
誰一人として言葉を発することなく、十分ほど経過しました……。
そして、ゼシオ以外。
困惑気で、『何を話せは良いのか分からない』と言った様子です。
…………みんな、どうしてしまったの……?
若干リスティナが変わってしまって居るように感じますが、ストーリーとリアルの時間の経過と思ってくださると嬉しいです……。




